アフガニスタンは中東ではなくアジア圏にある国
米軍の撤退に伴って、タリバンがアフガニスタンを短期間で制圧したことが大きな話題になっていますが、実は、アフガニスタン情勢はトルコにも影響を与えています。
まず、私のツイッターでも書きましたが、日本の外務省も含め、日本人のほとんどはアフガニスタンを中東だと思い込んでいますが、アフガニスタンは中東ではありません。
アフガニスタンについてコメントするのはいいけど、アフガニスタンは中東ではありません。それだけ間違わないでほしい。中央アジアです。地理も歴史も全然違いますから。
— Emin Yurumazu (エミンユルマズ) (@yurumazu) August 18, 2021
広く中東といわれている地域は、エジプト、リビア、チュニジアなどの北アフリカ諸国を含む西アジアの国々で、その範囲はイランまでとされています。
アフガニスタンの北部は中央アジア、南部は南アジアに入るし、一部では南中央アジアともいわれます。中東と中央アジアは違う地理と歴史を持っていますので、宗教が同じだから同じ括りにするのは間違っていると思います。
アフガニスタンからイラン経由でトルコへの違法入国が多くなっている
では中東に入るトルコから遠く離れているアフガニスタンは、トルコにどんな影響を与えているのでしょうか?
実は、アフガニスタン難民は近年イランを通ってトルコに違法入国することが多くなりました。まるで民族大移動のようですが、7月から多数のアフガニスタン難民が東部の国境線を超えてトルコに侵入していることがメディアで報道され、トルコ国内のアンチ難民センチメントに火をつけました。
トルコはすでに数百万人のシリア難民を抱えていて、国内のアンチ難民感情は高まっています。
【参考記事】
●シリア内戦がトルコとロシアの代理戦争に発展!? トルコリラ/円は低ボラ相場が続くか(2020年2月5日、エミン・ユルマズ)
7月から毎日1000人以上のアフガニスタン難民がトルコに違法入国していて、タリバンのアフガニスタン制圧に伴って、9月には2000人を超えると予想されています。
エルドアン政権はEU(欧州連合)との合意で難民の受け入れに賛成の立場を維持してきましたが、最近は難民の多さと経済難に痺れを切らした国民の怒りが政権に向かっているので支持率が急速に下がってきています。
エルドアン政権はEUとの合意で難民の受け入れに賛成の立場だったが、国民の怒りが政権に向かっていて、支持率が急速に低下している (C)Anadolu Agency/Getty Images
FRBの金融緩和継続は新興国にとって重要。ジャクソンホール会議は警戒
今週(8月23日~)のトルコリラは、対米ドル・対円で大きく動かず、米ドル/トルコリラは8.40リラ前後、トルコリラ/円は13円を超えた水準で推移しています。
(出所:TradingView)
(出所:TradingView)
市場はFRB(米連邦準備制度理事会)によるテーパリング(※)を懸念していましたが、FRBは今年(2021年)のジャクソンホール会議をオンラインで開催すると発表したことが安心材料になり、テーパリング懸念が後退しました。
(※「テーパリング」とは、量的緩和政策により、進められてきた資産買い取りを徐々に減少し、最終的に購入額をゼロにしていこうとすること)
それは、新型コロナウイルスのデルタ株出現による景気減速を理由にFRBはテーパリングを見送るとの見方が強まったからです。
新興国にとってFRBの金融緩和継続は重要で、テーパリングで米ドル高になると困る国が多いのが実態です。
コモディティ(商品)価格の上昇と、米ドル高が輸入コスト増につながり、これが新興国のインフレ上昇圧力を高めます。
個人的にも株式市場の混乱を望まないFRBが、テーパリングを発表する可能性は低いと思いますが、ジャクソンホール会議は警戒した方が無難だと考えます。
【参考記事】
●ジャクソンホール会議が行われる建物はジャクソンホール? なぜ、ジャクソンホールは世界中のトレーダーの注目を集めるのか?(8月23日公開)
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