自民党・岸田新総裁は「現状維持の男」
みなさん、こんにちは。
今週(9月27日~)は、自民党の岸田文雄前政調会長が新総裁に選ばれたことが、マーケットの最大の注目点。
しかし、岸田新総裁についての海外メディアのイメージは「現状維持の男」というもの。
フィナンシャル・タイムズ(FT)は 9月29日(水)に実施された自民党総裁選の結果を「現状維持の岸田文雄氏が日本のリーダー争いに勝利」と報道しています。
また、英誌エコノミストは「(河野太郎氏を支持する)世論を無視して岸田氏を選んだ」と分析。
各派閥のトップにとって都合の良い人物が選ばれたとしたうえで「(強いビジョンを持たない)岸田氏が記憶に残るリーダーになるとは思えない」と論評していると、日経新聞は伝えています。
これらの報道によれば、岸田新総裁は「安定性」という意味ではいいのでしょうが、「現状維持の男」なので、革命的なものはなにも期待できないという見方もできます。
そして、自民党総裁選の結果を受けて、9月30日(木)の日経平均株価は、「ご祝儀相場」を期待する参加者もいましたが、本稿執筆時点では2万9590円と前日終値とほぼ変わらず。
まさに、現状維持…。
ただ「岸田カラー」が出てくるのかはこれから。
個人的には、岸田新総裁の今後の活躍に期待といったところです。
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9月は米ドルがじわじわ上昇。ユーロ/米ドルは、節目の1.1600ドルを割り込む
視点をマーケットに移すと、9月はじわじわと米ドル高が進行。
まず、米ドル/円。
今年(2021年)の米ドル/円相場は、マーケット参加者の焦点が様変わりしており、日経平均が3500円急騰してもまったく反応せず。
しかし、米金利が上昇基調に乗せてくる時は、ビビット(強烈)に反応します。
【参考記事】
●中国株の下落が米国株の下落を誘引するか。マーケットの懸念が拡大する中国リスクにジョージ・ソロスも警告(9月16日、西原宏一)
その米長期金利が、ようやく1.50%に反発し、本稿執筆時点では1.51%水準で推移。
(出所:TradingView)
唯一、米ドル/円が反応する米金利が上昇したことで、一時112円台に乗せました。高値は112.05円と、年初来高値に到達。
(出所:TradingView)
一方、ユーロ/米ドルも一時、節目の1.1600ドルを割り込み、2020年7月以来の安値である1.1589ドルまで下落。
(出所:TradingView)
当コラムやメルマガ「トレード戦略指令!」などでご紹介させていただいているとおり、筆者は、米ドル/円同様、ユーロ/米ドルに対する米ドル強気のスタンスを変えていません。
【参考記事】
●デルタ株感染で、ニュージーランド全土がロックダウン! NZ中銀の声明は依然タカ派も、ニュージーランドドルは下値余地拡大(8月19日、西原宏一)
欧州各国の財政赤字を「穴埋め」する形で、「量的緩和を終わらせられない欧州」という材料を背景に、中期のユーロ/米ドルの戻しは限定的。
ただ、ユーロ/米ドルは、1.1600ドルレベルという重要なサポートに到達したため、日足ベースではいったん調整局面に入るのではないかと想定しています。
天然ガスの急騰がマーケットの話題に。天然ガス急騰が豪ドル/円を底堅くする要因となっている
一方、このところマーケットで話題になっているのが、天然ガスの急騰。
以下は、天然ガスの月足チャートです。
(出所:TradingView)
昨年(2020年)6月には、1.43ドル水準まで急落していた天然ガスですが、その後、反発に転じると、今年(2021年)9月には一段高に。昨年(2020年)6月の安値と比べて、およそ4倍上昇しています。
液化天然ガス(LNG)は化石燃料ではありますが、二酸化炭素の排出量が石炭に比べて40%と少ないため「クリーンエネルギー」として注目されています。
加えて、世界のLNG輸入量の7割はアジアが占めていますが、日本は世界のLNG輸入量の約2割を占める、世界最大の輸入国です。
(出所:日本ガス協会)
そしてLNGは、主に豪州、カタール、マレーシアが主要輸出国ですから、日本も当然、豪州から輸入しており、天然ガスの価格が豪ドル/円を底堅くする要因となっています。
このため、8月20日(金)に、豪ドル/円が77.90円の安値に到達以来、中国恒大集団のデフォルトの話題などで反落する局面もありましたが、底堅く推移しています。
(出所:TradingView)
ただ、これまで天然ガス価格の影響で値を上げてはいますが、豪ドル/円は急騰していません。
その要因は、鉄鉱石です。
これまで、豪ドル/円を牽引してきた鉄鉱石の価格は、200ドルという大台をずっとサポートしてきましたが、中国恒大集団の懸念が拡大する報道が流れ始めた時期に、200ドルを割り込み、一気に110ドルレベルまで暴落し、価値を半分にまで失っています。
ご承知のとおり、鉄鉱石は豪州の主要輸出品であり、この鉄鉱石の暴落が豪ドル/円の急騰を抑えているわけです。
見方を変えれば、鉄鉱石の暴落にも関わらず、80円台に位置している豪ドル/円の底堅さは異常ともいえます。
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豪ドル/円の動きが、他のプロダクツの動意指標となっている
ここで、筆者が通貨ペアの中で頻繁に豪ドル/円をピックアップする理由をご説明します。
その理由は、昨年(2020年)からリスクアセットの行方を占う時は、他の市場に先行して動意をみせるのが豪ドル/円だからです。
例えば、昨年(2020年)3月19日(木)。
この3月19日(木)は、RBA(オーストラリア準備銀行[豪州の中央銀行])が最後の利下げを決定し、豪ドル/円が59.91円という安値に到達した重要な日でした。
豪ドル/円は、この日の安値をきっかけに一気に反発を始め、大きな押し目もなく急騰。
今年(2021年)5月につけた、85.80円という高値までの暴騰劇のスタートとなっています。
(出所:TradingView)
つまり、昨年(2020年)3月19日(木)前後は、RBAの動きから、豪ドル/円を筆頭としたクロス円(米ドル以外の通貨と円との通貨ペア)のみならず、株も安値をつけて、反発のきっかけとなった日となっています。
例えば、日経平均は昨年(2020年)3月19日(木)安値となる1万6358円から大きく切り替えしていて、豪ドル/円の動きが他のプロダクツの動意指標となっているわけです。
こうした動意指標としての豪ドル/円の動きから、今回の8月20日(金)に豪ドル/円が安値をつけたのと同じ日に、日経平均も安値をつけて反発していることに注目しています。
豪ドル/円の直近の目標は85円。タイムラグを伴って上昇してくると想定
以下のチャートは、日経平均先物と豪ドル/円の日足の相関を示したものです。
(出所:TradingView)
8月20日(金)に同時に反発し始めた日経平均先物と豪ドル/円ですが、今回は菅総理退陣の報道もあり、日経平均先物の上昇が急であるため、豪ドル/円の上昇が遅れています。しかし、天然ガスが底堅い事、米長期金利が1.400%をブレイクして、じり高に推移していることもあり、タイムラグを伴って、豪ドル/円も上昇してくるものと想定しています。
直近のターゲットは、85円でしょうか。
(出所:TradingView)
8月20日(金)に、日経平均先物と歩調を合わせ、反発に転じた豪ドル/円。天然ガスの急騰や、日経平均先物の続伸を背景に、再び85円に向けて上昇を再開した豪ドル/円の動向に注目です。
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