菅首相の突然の退陣表明後から、日経平均は約3500円の急騰
みなさん、こんにちは。
菅首相が、今月(9月)3日(金)に突然の退陣を表明したことにより、反発を開始した日経平均ですが、あっという間に約3500円急騰しました。
(出所:TradingView)
9月14日(火)の東京株式市場では、新政権への期待感に加え、新型コロナウイルスワクチンの2回目接種が進んでいることなどを受け、幅広い銘柄に買い注文が集まりました。日経平均は一時、3万795円という高値をつけています。
一方、中国不動産開発大手の恒大集団を筆頭とする中国懸念が拡大しているにも関わらず、上海総合指数は続伸。
一時、今年(2021年)の高値である、3731(2月18日)ポイントに迫る3723ポイントまで急騰しました。
(出所:TradingView)
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リスクオンのルールは変わったのか?日経平均は急騰もクロス円は反落
こうしたリスクオンの相場環境においては、通常は「株高、債券安、コモディティ(商品)高、コモディティ通貨高、円安、スイスフラン安」となります。
ところが為替相場では、コモディティ通貨の代表格である豪ドルが対円で、82.03円を高値に、上値の重い展開が続いていました。
筆者は、8月20日(金)を起点にして、日経平均や上海総合指数、そして豪ドル/円がゲームチェンジとなって続伸すると判断し、豪ドル/円や日経平均をロング(買い)にしてきました。
【参考記事】
●ニクソンショックから50年後に起こったカブール陥落。米軍のアフガニスタン撤退完了はゲームチェンジとなるのか(9月2日、西原宏一)
そして実際に、豪ドル/円は約4円上昇し、日経平均にいたっては約3500円もの暴騰を演じたわけですが、先週(9月6日~)のRBA(オーストラリア準備銀行[豪州の中央銀行])理事会をきっかけに豪ドル/円の上値が重くなります。
(出所:TradingView)
ところが日経平均は前述のように、一時3万795円まで上昇。上海総合指数も続伸しました。
これは、リスクオンといえる相場環境です。
ところが、豪ドル/円を筆頭とするクロス円(米ドル以外の通貨と円との通貨ペア)は反落。これは、マーケット参加者にとって大きな課題となります。
なぜなら、「日経平均が暴騰しているときにクロス円は上昇する」というルールが変わることを意味するためです。
この「リスクオンのルールは変わったのか?」、もしくは「株と為替の動きがどちらか間違っているのか?」ということですが、9月14日(火)のアジア市場では、上海総合指数が続落し、豪ドル/円も下落するというリスクオフの動きになっています。もう少し見極めが必要になりそうです。
中国に対するマーケットの懸念拡大。著名投資家ジョージ・ソロス氏も警告
繰り返しになりますが、中国に対する懸念はマーケットで拡大しています。たとえば、ジョージ・ソロス氏。
世界でもっとも有名な投資家といえるジョージ・ソロス氏ですが、8月30日(月)のフィナンシャル・タイムズに記事を投稿しています。
この記事は、日経新聞にも掲載されていましたので、日本語での記事をご紹介させていただきます。
[FT]習氏支配の不都合な真実 突然、投資家の前に
過去20年にわたり広範な不動産ブームに沸いてきた中国で、その活況が終わろうとしている。中国の不動産大手、中国恒大集団は過剰債務に陥り、債務不履行(デフォルト)の危機にある。そうなれば中国株急落の原因になりかねない。
出所:日経新聞
現在、中国では、第2の文化大革命といわれるような改革が行われています。
その中心となるのが「共同富裕」というコンセプト。これは、下記の3点を通じて所得の再分配を図るという内容です。
(1)報酬
(2)税金
(3)寄付
これにより、インターネットサービス大手のアリババグループは中国政府に同調するかたちで「共同富裕」に1.7兆円拠出したと報道されています。
そして、こちらもインターネットサービス大手のテンセントホールディングスも共同富裕の促進に向け、今年(2021年)、約8500億円相当を投じる方針を発表。
ただ、この問題は、MSCI ACWI(世界株指数※世界の運用会社がもっとも広く参考にしている指数)に、アリババとテンセントの2社が構成比率トップ10に入っていること。
つまり、一般の投資家も知らない間に、中国株に投資しているという事態に陥っていることになるわけです。
中国恒大集団の利払い履行不能報道で、市場は中国リスクをさらに意識
9月13日(月)に公開した「FX&コモディティ(商品) 今週の作戦会議」では、恒大集団の破綻懸念、加えて中国の「第2の文化大革命」のマーケットへの影響は上海総合指数が鍵を握っていると、ご紹介させていただきました。
【参考記事】
●豪ドル/円の押し目買い継続!「サナエノミクス」は、いわば「NEWアベノミクス」。株高・円安の再来に期待できそう(9月13日、西原宏一&大橋ひろこ)
その注目の上海総合指数が、今週(9月13日~)大きく値を下げたため、ジョージ・ソロス氏の懸念が現実となるのかということで、一気に中国リスクが意識されてきています。
9月14日(火)には、金融情報サイトのZerohedgeでも、中国に対するネガティブな記事を報道しています。
ハードランディングが近いことを示す中国のデータダンプ
出所:Zerohedge
そして救済するといわれていた恒大集団ですが、下記の記事で
9月20日(月)が期限の利払いができなくなる可能性が浮上しています。
中国恒大、20日期限の利払い履行不能との報道 流動性危機深刻に
出所:ロイター
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上海総合指数の下落が米国株の下落を誘引するかどうかの見極めが重要になる
今年(2021年)になって、豪州と中国の関係は急速に悪化。
よって、上海総合指数の下落が豪州経済に及ぼす影響度は急速に低下しています。
一般的に中国リスクを為替で表現するには、豪ドル/円のショート(売り)というシンプルなものだったのですが、上海総合指数が反落するわりには、9月15日(水)の米国株は総じて堅調。
S&P500指数にいたっては、ほぼ3週間ぶりの高値となっています。
(出所:TradingView)
WTI原油も一時3.8%高となっており、これはリスクアセットの豪ドル/円に対してはどちらかといえばポジティブです。
結果、中国発のリスクで上海総合指数が下落したとしても、それが米国株や日本株の急落を誘引するかどうかを見極める必要があります。
中国の掲げる「共同富裕」というコンセプトのリスクを見極めるには、上海総合指数の動向が重要と考えていましたが、今週(9月13日~)に入って、同指数が反落しはじめました。
(出所:TradingView)
その上海総合指数の下落が米国株の下落を誘引するかどうかを見極めるのが、今週(9月13日~)後半のマーケットの最重要課題になります。
上海総合指数の下落が米国株の下落を誘引しなければ、8月20日(金)以降のリスクオンマーケットは継続。米国株の下落を伴うようであれば、為替相場でもクロス円反落というシナリオでしょうか。
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