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115円を伺う米ドル/円と、1.15ドルを割り
込んで下落を速めたユーロ/米ドル。理由は
金融政策、想定以上の米ドル高に備えよ!

2021年11月17日(水)18:18公開 (2021年11月17日(水)18:18更新)
志摩力男

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岸田政権の石油元売り補助金に違和感。ガソリン価格の上昇は「国策」の結果

 岸田政権は、原油価格の高騰を受け、レギュラーガソリンが1リットルあたり170円を超えた場合に石油元売り会社に補助金を出すそうですが、違和感のあるニュースです。

 日本は2%超のインフレ率を目指して超金融緩和政策を採っています。ガソリン価格の上昇は「国策」の結果とも言えるのに、なぜ税金を使って補助するのか? 

 結局、政府はインフレが良いと思っているのか、悪いと思っているのか。

 また、補助金は1リットルあたり5円が上限。5円下がったところで、何か意味があるのでしょうか。「対策をやっています」アピールにしか見えません。そもそも、国は1リットルあたり53.8円のガソリン税と2.8円の石油税をとっています。岸田政権の、政策の「しょぼさ」を象徴している感じです。

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日銀が超金融緩和政策を変更する可能性は、目先ほぼない

 黒田日銀総裁は、先日の会見で「現在の円安は特にマイナスになっていない」と述べました。日銀総裁の立場からするとそうでしょう。2013年4月に就任し、超金融緩和で2%のインフレ率を2年以内に実現すると約束しましたが、2年どころか10年の任期中に実現することはほぼ不可能と見られています。

先日の会見で「現在の円安は特にマイナスになっていない」と発言した黒田総裁。2%のインフレ率達成は10年の任期中に実現することはほぼ不可能と見られている (C)Bloomberg/Getty Images

先日の会見で「現在の円安は特にマイナスになっていない」と発言した黒田総裁。2%のインフレ率達成は10年の任期中に実現することはほぼ不可能と見られている (C)Bloomberg/Getty Images

 官僚は間違えてはならないのです。2%物価目標を実現するチャンスがあるのであれば、悪い円安でも何でも良いのです。少々円安になったからといって、日銀が現在の超金融緩和政策を変更する可能性は、目先はほぼないでしょう。

米ドル/円は115円をうかがう展開。まだ、この円安は続くと見る

 米ドル/円相場が115円をうかがう展開になってきました。予想どおりの展開といえますが、まだこの円安は続くのではないかと思います。

米ドル/円 週足
米ドル/円 週足

(出所:TradingView

 ひとつには、少々円安になったとしても、日銀の政策が変わらないと見通せるからです。

 もうひとつは、米国サイドの理由です。先日、予定通りテーパリング(※)を開始しましたが、インフレ懸念から、引き締めペースを早めることはあっても、引き締めしないという選択肢はないからです。

(※「テーパリング」とは、量的緩和政策により、進められてきた資産買い取りを徐々に減少し、最終的に購入額をゼロにしていこうとすること)

 先週(11月8日~)発表された、プラス6.2%という米国のCPI(消費者物価指数)には驚かされました。もはやバイデン政権は「インフレは一時的」という表現を使わなくなりました。バイデン大統領は「インフレを反転させることが優先課題」と強調するようになっています。インフレに対する有権者の不満が強いのでしょう。

先週発表された米国のCPIはプラス6.2%という驚きの結果に。バイデン大統領は「インフレを反転させることが優先課題」と強調するようになった (C)Scott Olson/Getty Images News

先週発表された米国のCPIはプラス6.2%という驚きの結果に。バイデン大統領は「インフレを反転させることが優先課題」と強調するようになった (C)Scott Olson/Getty Images News

 来年(2022年)には中間選挙がありますが、バイデン政権の支持率は40%台前半に低迷しています。直近では、バージニア州の知事選挙で民主党候補が敗北しました。これ以上の失策が許されない以上、インフレに寛容にはなれません。

 その意味では、次のFRB(米連邦準備制度理事会)議長が、パウエル議長続投か、ブレイナード理事昇格かわかりませんが(今週(11月15日~)中に決まると報道がありました)、誰が議長になってもインフレを放置するのは難しくなっているということです。

ユーロ/米ドルは重要な節目1.15ドル割れ。1.05~1.15ドルのレンジ入り

 金融マーケットでは、2022年に2~3回の米利上げが織り込まれています。今後、おそらく、米国は順調に利上げを続けることになります。日米の金融政策は、はっきりと逆方向を向いています。

 こうした中、ユーロ/米ドルが重要な節目である1.15ドルを割り込んで急落しました。1.15ドルは昨年(2020年)、コロナ前後の高値であり、重要なサポートでした。

ユーロ/米ドル 週足
ユーロ/米ドル 週足

(出所:TradingView

 ここを割り込むということは、ユーロ/米ドルが今後、1.05~1.15ドルのレンジに入るということです。

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米ドル/円を含め、想定以上の米ドル上昇に備えなければならない

 多くの金融機関は、どちらかというと、ユーロ/米ドルの方向性を上に見ていました。

 それは、ユーロが比較的割安ということ、ユーロ圏の経常収支の黒字が大きいこと、欧州復興基金による経済立て直しが始まったことが背景にありました。

 しかし、ECB(欧州中央銀行)のラガルド総裁のもと、ECBが引き締め政策に転じるのはかなり先のことでしょう。2024年以降と想定されています。そうなると、米金融引締めを反映して、ユーロ/米ドルが下落するのは極めて自然に見えます。

ユーロ/米ドル 週足
ユーロ/米ドル 週足

(出所:TradingView

 これまでユーロを強気に見ていた人が多いので、大手金融機関による資金シフト、ヘッジ売りはかなりの金額になりそうです。事実、1.15ドル割れから、本日の1.1265ドル前後まで、かなりのスピードで落ちています。米ドル/円を含め、我々は想定以上の米ドル上昇に備えなければならないでしょう。

米ドルVS世界の通貨 日足
米ドルVS世界の通貨 日足

(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドルVS世界の通貨 日足


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