(前回「ドルはどこまで下がるのか? (8)」からのつづき)
「ドル安=原油高」の本当の理由は何なのか? そこへ話を進める前に、産油国でいかにドルという通貨の存在感が薄れてきたかということについて、広瀬さんは歴史的な変遷を語ってくれた。
「昔は世界の原油の所有権の少なからぬ部分が米国の石油会社をはじめとする、いわゆる『セブン・シスターズ』と呼ばれる巨大企業に支配されていました」
埋蔵された原油の所有権の変遷

確かに上のグラフを見ると、1970年には、原油の所有権は実にその94%が西側石油会社にあったとわかる(原油の確認埋蔵量に対する割合)。そして、この西側石油会社の大半は米国企業だったという(ロイヤル・ダッチ・シェルだけが欧州)。
「昔は油田の所有権は米国企業にあり、生産や精製する際のノウハウも米国企業が提供、発生する費用もドル建てで、産油国の最大のお得意さんも米国という構図になっていました。
この状況なら、原油がドル建てで取引されるのはいたって当然のことであり、そこに違和感はなかったわけです」
しかし、そうした状況は変化してきた。上のグラフで1970年には94%を占めていた西側石油会社は1979年には45%、2006年には6%と激減している。
その裏で何が起こったのか? 原油所有権の国有化である。確認埋蔵量に対するその割合は1970年に6%に過ぎなかったものが、2006年には83%まで拡大している。
「イラン革命などにより、油田の国有化がどんどん進んだんですね。その結果、今では世界の原油埋蔵量のうち、8割以上が『別にドルで取引しなくても構わない』持ち主に帰属しています」
一方、原油の消費にも大きな変化が訪れた。
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