トルコ消費者信頼感指数は史上最低を更新。リラ乱高下で消費者マインドが悪化
TUIK(トルコ統計局)は、11月22日(月)に11月の消費者信頼感指数を発表しました。11月の結果は71.1ポイントに低下し、2004年から調査しているトルコの消費者信頼感指数の歴史でもっとも低い水準を更新しました。
(出所:TUIK)
向こう12カ月間の景況感指数も10月の74.2ポイントから見て8.1%下落し68.2ポイントになりました。為替レートが安定せず、トルコリラの乱高下が続いていることが、消費者のマインドを悪化させ、消費行動を抑えています。
11月30日(火)に発表された7-9月期のGDP成長率はプラス7.4%となりました。セクター別で見た場合に輸出業が好調であることがわかります。商品とサービスの輸出は前年同期比で25.6%増となっている一方で、輸入は8.3%減となりました。
(出所:TUIK)
これはトルコの経常赤字の縮小に貢献するので本来歓迎すべきことですが、輸入金額の減りが、トルコリラ安の影響で国民の購買力が減ったことを意味しています。
トルコリラの下落は輸出企業の価格競争力を高め、輸出が増えています。エルドアン大統領もこの点を強調して、低金利政策がトルコ経済を活性化させると主張しています。
しかし、通貨の下落が続けば原材料の調達コストが上がり続けるのは避けられないので、輸出企業の利益率が圧迫されてしまいます。
また、GDPがトルコリラベースで増えても、米ドルベースで大きく下がっていて、トルコの1人当たりのGDPは、中間所得国の水準である1万ドルを大きく割ってしまっています。
2018年のトルコリラショックと似てきたが、トルコ中銀に打つ手があまり残っていないのが大きな違い
今週(11月29日~)のトルコリラは、対米ドル、対円で再び下落に転じていて、米ドル/トルコリラは13.50リラを上抜け、トルコリラ/円も円高の影響もあり8.50円を割りました。
(出所:TradingView)
(出所:TradingView)
トルコリラの動きは2018年のトルコリラショックに似てきましたが、当時との大きな違いはトルコ中銀に打つ手があまり残っていないことです。
【参考記事】
●トルコリラ/円が一時、16円台まで暴落! トルコリラ急落の震源地はユーロか!?(2018年8月10日公開)
●トルコリラ/円は一時15円台まで大幅続落! 原因はトランプとエルドアンの両大統領!(2018年8月10日公開)
2018年にトルコ中銀は、豊富な外貨準備高を使って直接の為替介入で為替を安定させることはできましたが、今、同じことができません。
エルドアン大統領は現行の低金利政策を弁護。トルコリラはもう一段安の可能性に要注意。
トルコ中銀の発表によると、11月19日(金)の週におけるトルコの総外貨準備高は879億ドルになっていますが、純外貨準備高は252億ドルしかありません。
こちらも諸外国の中銀とのスワップ協定を含めた金額なので、スワップを除くとトルコの純外貨準備高はマイナス353億ドルです。つまり、トルコ中銀は直接為替介入を行う外貨を持っていません。
エルドアン大統領は11月30日(火)のトルコ時間の22時(日本時間の12月1日午前4時)に国営テレビ局のTRTに出演し、現行の低金利政策を弁護しました。番組の放送時間中に米ドル/トルコリラは14.00リラを付ける瞬間もありましたが、これはエルドアン大統領の命令で今後も利下げが行われる可能性が高いことを意味しています。
エルドアン大統領はTRTに出演し、現行の低金利政策を弁護。放送時間中に、米ドル/トルコリラは14.00リラを付ける瞬間もあった (C)Anadolu Agency/Getty Images
トルコリラはもう一段安の可能性もあり、注意が必要です。
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