トルコのCPIとPPIの乖離が記録的な水準。長期に渡ってインフレに悩まされることになりそう
トルコ統計局(TUIK)は先週(11月1日~)、10月の消費者信頼感指数(CPI)を発表しました。
10月のCPIは前年同月比で19.89%となり、前月比で2.39%なので、トルコのインフレが加速していることがわかりました。
【参考記事】
●【トルコリラ見通し】利下げによるリラ下落を、好調な消費者信頼感指数が下支え。足元の原油高騰で、CPIはさらに上昇する可能性(10月6日、エミン・ユルマズ)
(出所:TUIK)
生産者物価指数(PPI)も上昇していて、10月に前年比で46.31%に達しています。
(出所:TUIK)
PPIに関しては、エルドアン政権が誕生した年でもある2002年6月以来の高水準です。
CPIとPPIの乖離が記録的な水準で、生産者のコストがいずれ消費者に転嫁されることを想定すると、トルコは長期に渡ってインフレに悩まされることになりそうです。
トルコ国民の日常生活の必須アイテムの価格が大きく上昇。大きな政治変化をもたらしそう
インフレ統計の中身を見ると、価格がもっとも上がった項目は27.41%の食料品とノンアルコール飲料です。
次に上昇が大きい項目は25.23%の外食とホテル、そして23.03%の家具・雑貨です。
(出所:TUIK)
国民の日常生活の必須アイテムの価格が大きく上昇していて、これがトルコに大きな政治変化をもたらすと考えます。
エルドアン大統領の健康状態についての噂があとを絶たず、国民は懸念
2021年11月3日(水)はエルドアン政権が誕生した2002年の総選挙から19周年目で、毎年エルドアン政権はこの日に大きな祝杯イベントをやるのですが、今年は何もなく、エルドアン大統領も姿を見せなかったことで、大統領は亡くなったという噂が広がってしまいました。
もちろんこれは事実ではなく、エルドアン大統領は健在ですが、最近彼の健康状態についての噂があとを絶たず、やはり国民はこの点について懸念しているのがわかります。
エルドアン大統領は健在だが、最近彼の健康状態についての噂があとを絶たず、国民はこの点を懸念している (C)Anadolu Agency/Getty Images
足元のトルコリラは下落
11月に入り、トルコリラは対米ドル・対円で下落していて、米ドル/トルコリラは9.7リラを超え、トルコリラ/円も11.6円まで下がりました。
(出所:TradingView)
(出所:TradingView)
また、トルコ中銀は10月の実質実効為替レートを発表していて、10月の値は60.37となりました。9月の実質実効為替レートも63.09から62.93に下方修正されています。
2020年1月に実質実効為替レートは75前後でしたが、パンデミックで大きく下落し2020年の11月に60.47という史上最低の水準を記録しました。
その後上昇に転じ、2021年2月に69を超えましたが、再び下落して2021年6月には60割れしてパンデミック後の最安値を更新。10月も60.37と最安値付近にあります。
※トルコ中銀のデータを基にザイFX!編集部が作成
エネルギー価格の上昇が止まらない限り、トルコリラの下落トレンドも止まらない可能性が高い
実質実効為替レートが最安値付近にある背景には、トルコの経常赤字の拡大懸念があります。
原油価格の高騰に加え、天然ガスの価格も高騰しています。トルコの都市住宅のヒーティングは天然ガスで行われているので、冬に向かって天然ガスの需要が増えます。
エネルギー価格の上昇が止まらない限り、トルコリラの下落トレンドも止まらない可能性が高いです。
【参考記事】
●【トルコリラ見通し】トルコリラは対円・対米ドルで史上最安値を更新。年内の追加利下げ観測やコモディティ価格の上昇で、トルコリラの下落トレンドは今後も続きそう(10月27日、エミン・ユルマズ)
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