トルコリラ暴落。2018年のトルコリラショック再び
トルコリラは、11月23日(火)に対米ドル、対円で最安値を更新しました。
(出所:TradingView)
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1日の下落幅は15%を超え、2018年のトルコリラショックの再来となりました。急落のきっかけはエルドアン大統領の発言でしたが、下落基調が始まったのは11月18日(木)に行われたトルコ中銀の政策会合の直後です。
【参考記事】
●トルコリラ/円が一時、16円台まで暴落! トルコリラ急落の震源地はユーロか!?(2018年8月10日公開)
●トルコリラ/円は一時15円台まで大幅続落! 原因はトランプとエルドアンの両大統領!(2018年8月10日公開)
トルコ中銀は、11月18日(木)に政策金利である1週間物のレポ金利を16.00%から15.00%に1.00%下げました。3カ月連続の利下げでしたが、9月からの政策金利の引き下げは4%に達しました。
(出所:各種データよりザイ投資戦略メルマガ事業部が作成)
エルドアン大統領の「意味不明」な発言が、リラ暴落を招いた
トルコの政策金利が15%で、トルコのCPI(消費者信頼感指数)は約20%なので、実質金利はマイナス5%ということになります。個人的にはTUIK(トルコ統計局)が発表しているCPIの数字をあまり信用していません。
トルコの年間インフレ率は30%を超えていると予想しているため、実質金利はマイナス15%、もしくはそれ以上である可能性が高いと考えています。このように考えると、トルコリラがなぜここまで下げたのか、ある程度説明がつきます。
もちろんトルコリラの急落を、ファンダメンタルな要因だけで片付けることはできません。
トルコは現在、政治的な危機に陥っています。エルドアン大統領は11月22日(月)の演説で、トルコ中銀の利下げ姿勢を弁護したうえで「トルコは経済独立戦争をやっていて、必ず成功する。金利はインフレの要因だ!」という意味不明な発言をしたことが国内外の投資家の不安を招き、トルコリラの下落を加速させました。
エルドアン大統領の意味不明な発言が、国内外の投資家の不安を招きトルコリラの下落を加速させた (C)Anadolu Agency/Getty Images
トルコリラの下落トレンドはどこで止まる?トルコ中銀の緊急利上げはハードルがとても高い
米ドル/トルコリラは、11月23日(火)に13.00リラを超え、トルコリラ/円も9.00円を割りました。
(出所:TradingView)
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気になるのは、トルコリラの下落トレンドはどこで止まるかという点ですが、ゴールドマンサックスやソシエテジェネラルなど、一部の金融機関はトルコ中銀が近いうちに緊急利上げに動くと予想しています。
一方で、私はそこまで楽観的ではありません。これらの予想はトルコ中銀が独立性を持って合理的な判断をするでしょうという前提に基づいています。しかし、トルコ中銀は完全にエルドアン大統領の支配下にあり、当然ながら独立性もありません。
「経済独立戦争」という発言からもわかるように、政策金利はエルドアン大統領にとってプライドをかけた戦いになっています。緊急利上げをするということは、エルドアン大統領が自らの間違いを認めることを意味しているので、ハードルがとても高いです。
もちろん可能性がゼロではありません。2018年のトルコリラショックの後にエルドアン大統領はトルコ中銀の利上げを容認しました。いずれにせよトルコリラは政権交代がない限り乱高下を繰り返す可能性が高いので、日本のトルコリラ投資家にとって重要なのはリスク管理だと考えます。
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