トルコ中銀の大幅利下げで、トルコリラは対米ドルで史上最安値更新
トルコ中銀は10月21日(木)に行われた政策会合で、政策金利を18%から16%に2%引き下げました。
前回のコラムでも書いたように、政策会合の直前にエルドアン大統領がトルコ中銀の副総裁ら3人を解任しましたが、その背景に、中銀内の利下げ反対派の完全排除がありました。
【参考記事】
●トルコリラは対米ドルで史上最安値更新。中銀メンバー3人解任で、利下げ織り込む。対円は12円割れもあるか(10月20日、エミン・ユルマズ)
そのため市場は利下げを覚悟していましたが、さすがに200bpの引き下げは予想より大きかったです。市場は50bp~100bp程度の利下げを予想していたので、利下げ発表でトルコリラは急落し、対米ドルで史上最安値を更新しました。
(出所:TradingView)
10カ国のトルコ駐在大使の共同声明を受けて、トルコリラ下落が一時加速
その後、トルコリラの下落を加速させる別の事件が発生してしまいました。
10月18日(月)に、米国、ドイツ、フランス、オランダ、カナダ、フィンランド、デンマーク、ニュージーランド、ノルウェーとスウェーデンの10カ国の駐トルコ大使は共同声明を発表し、トルコで4年以上拘束されている人権活動家オスマン・カワラ氏の解放を求めました。
これに対して、エルドアン大統領は大使らの共同声明がトルコへの内政干渉だと反発し、「10カ国の大使を好ましからざる人物に指定するように外務大臣に命令した!」と発言しました。
「好ましからざる人物(ペルソナ・ノン・グラータ)」とは外交用語で、その外交官を国外追放するということです。これが大きな外交問題に発展すると市場が懸念し、週明け早々にトルコリラは下落を加速させました。
しかし、各国の大使館がトルコの内政に干渉する意向がないという声明を発表し、エルドアン大統領も国外追放の処分を見送ると意見を変えました。
10カ国の駐トルコ大使の共同声明を受けて、エルドアン大統領は国外追放を示唆。その後、トルコの内政に干渉する意向がないという声明を受けて、事態は沈静化した (C)Anadolu Agency/Getty Images
トルコ中銀は年内に100bpの追加利下げを行うと予想。支持率低下に悩むエルドアン大統領は、今後も欧米との対立を煽るか
今週(10月25日~)のトルコリラは、対米ドル、対円で史上最安値を更新し、米ドル/トルコリラは9.80リラを越え、トルコリラ/円も瞬間的に11.50円を割り込む水準まで売り込まれましたが、外交危機の回避で反発し、対円では12円水準までいったん戻しています。
(出所:TradingView)
(出所:TradingView)
しかし、トルコ中銀は年内に追加で100bpの利下げを行うと予想されていて、トルコリラの上値が重いです。
また、今回の外交危機は大使らの柔軟な対応でなんとか回避されましたが、支持率低下に悩んでいるエルドアン大統領は、今後も欧米との対立を煽る可能性が高いです。トルコはシリアで新たな軍事作戦を展開すると発表していて、これに対しても米国やEU(欧州連合)が反対の立場をとっています。
【参考記事】
●シリア内戦がトルコとロシアの代理戦争に発展!? トルコリラ/円は低ボラ相場が続くか(2020年2月5日、エミン・ユルマズ)
トルコはリーマンショック後の不況と同じような状況。トルコリラの下落トレンドは今後も続くと予想
今週(10月25日~)発表された、9月の消費者信頼感指数は前月比で3.6%下落し、76.8になりました。これは2009年2月以来の低水準です。
(出所:TUIK)
政治不安に加え、コモディティ(商品)価格の上昇で、トルコはリーマンショック後と同じような不況に陥っています。そのため、トルコリラの下落トレンドは今後も続くと予想しています。
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