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西原宏一の「ヘッジファンドの思惑」

豪ドル/円、ユーロ/豪ドルでの豪ドル売りが
拡大すると予想。ウクライナ関連が沈静化
しても、米国株の下げ基調は変わらない

2022年02月24日(木)15:21公開 (2022年02月24日(木)15:21更新)
西原宏一

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ウクライナ関連が沈静化しても、米国株の下げ基調は不変。ナスダック総合指数と日経平均は戻り売りスタンス

 みなさん、こんにちは。

 ウクライナに関する懸念は燻り続けています。

 今週(2月21日~)はウクライナの政府機関や銀行のウェブサイトが「DDoS(分散型サービス妨害)攻撃」を受けたとの報道も。そして本日(2月24日)、ウクライナ政府は全土に非常事態宣言を発令しました。

(※2月24日、ロシアのプーチン大統領は、ウクライナ東部ドンバス地方での軍事作戦決行を発表。その後、ロシア軍によるウクライナへの攻撃が始まったと報じられています)

 ただ先週(2月14日~)と比較すると、バイ・ザ・ファクト(ウワサで売って、事実で買い戻す)という動きも出始めており、ウクライナ関連の報道が金融市場に与える影響は、徐々に限定的になりつつある場面も見られています。

 一方、来月(3月)からの米国のFF金利(※)引き上げ予想を背景に、米国株は続落。

(※編集部注:「FF金利」とは、フェデラルファンド金利のことで、FFレートとも呼ばれる。米国の政策金利)

 特にウクライナ情勢の緊迫を背景に、ハイテク株が売りを浴び、2月23日(水)のナスダック総合指数は2.6%下落しました。

ナスダック総合指数 日足
ナスダック総合指数 日足

(出所:TradingView

 前日(2月22日)に調整相場入りしたS&P500指数は、4営業日連続で下げており、米国株の軟調さは変らず。

S&P500指数 日足
S&P500指数 日足

(出所:TradingView

 特に米金利上昇に敏感なナスダック総合指数は、200日移動平均線を割り込んでからの戻りも限定的。

 そして、本稿執筆時点の日経平均も、2万6000円の大台を割り込んでいます。

日経平均 日足
日経平均 日足

(出所:TradingView

前回のコラムでも取り上げましたが、米国の利上げはまだ何も始まっておらず、来月(3月)から。

【参考記事】
豪ドル/円や米ドル/円を中心に、戻り売りを継続。米国のインフレは沈静化せず、リスクオフの「株安・米ドル高・円高」は続く!(2月17日、西原宏一)

 しかも0.50%の利上げも含め、連続利上げが予想されている環境下では、グロース株を含むナスダック総合指数は続落する可能性が高いままの状態です。

 呼応して、日経平均の上値も限定的であり、依然として、ナスダック総合指数と日経平均は戻り売りスタンスでいいのではないかと考えています。

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リスクオフ環境下で、為替ではどのようにリスクを取っていくべきかを考えてみる

 ではリスクオフの環境下、為替はどのようにリスクを取っていけばいいのか、もう一度考えてみたいと思います。

 まず、リスクオフといえば、円とスイスフランのロング(買い)ということになります。

 スイスフランはSNB(スイス国立銀行[スイスの中央銀行])の介入という複雑な要素も入るため、ここでは円を取り上げてみます。

 まず米ドル/円ですが、ナスダック総合指数が年初から大きく値を下げていますが、本稿執筆時点(ロシア軍によるウクライナ攻撃前)の米ドル/円は115.00円レベルで推移。

 今年(2022年)の米ドル/円のスタートは115.08円ですから、ナスダック総合指数の急落に関して、米ドル/円はまったく反応していないといえます。

 これは米ドル/円にとって、日米金利差拡大というポジティブ要因と、米国株の急落というネガティブ要因が相まって方向性を見いだせずにいます。

 ただ、円は避難通貨という側面もありますので、米ドル/円の上値が重いことは変わりません。

米ドル/円 日足
米ドル/円 日足

(出所:TradingView

リスクアセットとしての側面が根強い豪ドル。ウクライナ問題沈静化後は、ナスダック総合指数に追随し下落へ

 では、株の下落に追随してショート(売り)にする通貨といえば、リスクアセットの豪ドルということになります。

 ここで、ナスダック総合指数と豪ドル/円の相関性を確認してみましょう。以下は、ナスダック総合指数と豪ドル/円の日足チャートです。

ナスダック総合指数&豪ドル/円 日足
ナスダック総合指数&豪ドル/円 日足

(出所:TradingView

 昨年(2021年)までは、ナスダック総合指数の下落に豪ドル/円がおおむね追随してきたことがわかります。

 しかし、今年(2022年)に入ってからはナスダック総合指数の急落に、豪ドル/円が追随してこないのがわかります。

 これは、世界的にコモディティ価格が急騰していることと、ウクライナの問題が影響していると想定しています。

 ウクライナ問題は北半球の欧州での紛争なので、地理的に遠いオセアニアへの影響は極めて小さいため、ユーロ/豪ドルの売りという発想があるためです。

ユーロ/豪ドル 日足
ユーロ/豪ドル 日足

(出所:TradingView

 ただ、2月23日(水)のニューヨーク市場で、ナスダック総合指数が2.6%急落すると、豪ドル/円もあっさり1円強下落して追随しています。

 南半球に位置している国の通貨という側面よりも、豪ドルはリスクアセットであるという見方が根強く、ウクライナ問題が長期化するも、ある程度沈静化すれば、豪ドル/円はナスダック総合指数の下落に追随すると想定してます。

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豪ドル/円やユーロ/豪ドルでの豪ドル売りがじわじわ拡大すると予想

 米国の利上げはまだ始まっておらず、来月(3月)からスタートすると想定されています。

 金利先物市場では0.50%も含めた連続利上げが徐々に織り込まれていますが、株式市場、特にナスダック総合指数がFRB(米連邦準備制度理事会)の連続利上げを織り込むのはこれからです。

 特に米10年債利回りが2.00%をクリアに超えて、それが定着するようになれば、ナスダック総合指数の下落基調はさらに鮮明になると予想しています。

(長期金利(10年物国債利回り)
(長期金利(10年物国債利回り)

(出所:TradingView

 グロース株の下落に連動すると想定されるのは、やはり豪ドル。対米ドルよりも、対円の豪ドル/円や、対ユーロであるユーロ/豪ドルでの豪ドル売りが、じわじわと拡大すると想定しています。

 ナスダック総合指数の急落と、豪ドル/円、ユーロ/豪ドルの動向に注目です。


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