トルコ経常赤字縮小も、構造的な赤字は継続。原油価格の上昇が赤字拡大の最大要因
トルコ中銀は2月11日(金)に、トルコの経常収支を発表しました。
2021年12月の経常収支は38.4億ドルの赤字で、2021年全体では148.8億ドルの赤字となりました。2020年の経常赤字は355億ドルでしたので半分以下に減っています。
(TCMBのデータを参考にメルマガ事業部が作成)
しかし、依然として構造的な経常赤字が続いています。トルコの経常赤字の中身はほとんどエネルギーですが、その中でも原油価格の上昇が経常赤字を拡大させる最大の要因といえるでしょう。
(出所:TradingView)
経常赤字の拡大によりトルコリラの売り圧力が増すので、原油価格とトルコリラのパフォーマンスが逆相関関係にあることは、以前から指摘してきました。
【参考記事】
●なぜ、トルコリラは上昇しているのか…!?原油価格とトルコリラは逆相関関係にある(2018年10月31日、エミン・ユルマズ)
●エネルギー価格上昇で、トルコ経常赤字は大幅拡大か。トルコリラ売り圧力に警戒!(2021年2月17日、エミン・ユルマズ)
●【トルコリラ見通し】世界的なインフレ率上昇に投資家は懸念。犠牲祭による大型連休でリラに大きな動きはなさそうだが(2021年7月14日、エミン・ユルマズ)
しかし、原油価格の上下にトルコリラが反応するまでタイムラグがあります。今週(2月14日~)に入って、ロシアが一部の部隊をウクライナ国境から撤退させるとの報道で原油価格が下げに転じました。しかし、依然として90ドルを超えたままです。
ウクライナ危機の長期化はトルコ観光業にも悪影響。平和的かつ短期的な解決が、もっとも望ましいシナリオ
ウクライナ危機が長引くと、原油価格の高止まり以外でトルコ経済に悪影響を与える要因がもうひとつあります。それは、観光業です。
トルコ政府は2022年に345億ドルの観光収入を期待しています。2021年にトルコを訪れた外国人観光客は約3000万人となり、前年と比べて80.8%増でした。観光収入も2020年に比べ103%増の244億ドルとなりました。
トルコの首都イスタンブールを象徴する建造物で観光名所としても人気のある、世界遺産アヤソフィア (C)Nate Hovee/AdobeStock
トルコを訪れた観光客の国籍を見ると470万人でロシアが1位、206万人でウクライナが3位です。つまり、ロシア人とウクライナ人の観光客がトルコの観光業にとってとても大事です。
そうした観点で見ると、ウクライナ情勢の平和的かつ短期的な解決はトルコにとってもっとも望ましいシナリオです。
【参考記事】
●【トルコリラ見通し】しばらく狭いレンジ想定も、ウクライナ情勢悪化なら下抜けの可能性。エネルギー危機がトルコ製造業に悪影響(2月2日、エミン・ユルマズ)
トルコリラは対円・対米ドルで狭いレンジで推移。近年、「低ボラティリティ→乱高下→低ボラティリティ」を繰り返す動き
今週(2月14日~)のトルコリラですが、米ドル/トルコリラは13.50リラ前後、トルコリラ/円は8.50円水準の狭いレンジでの動きが続いています。
(出所:TradingView)
(出所:TradingView)
トルコリラの向こう1カ月のインプライドボラティリティは2021年11月に9.50でしたが、トルコリラショックの再来で12月に80を越える場面がありました。しかし、今年(2022年)に入ってからボラティリティは急減し、足元では11月初旬の水準まで戻っています。
トルコリラの近年の動きを見ても、長期間続く低ボラティリティの後に激しく乱高下し、新しい水準で落ち着いた後にまた動きが少なくなるというパターンを繰り返しているのがわかります。
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