この円安はまだまだ続く! 市場の関心事は、本来のテーマである各国のインフレと金融政策に回帰
円安が止まらなくなっています。この円安はまだまだ続きます。その背景について考えていきたいと思います。
【参考記事】
●米ドル/円や、豪ドル/円などの買い方針を継続。日本だけが引き締め方向に転換しないなか、全体的な円安傾向は今後も続く(3月17日、今井雅人)
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:世界の通貨VS円 日足)
ウクライナ情勢は相変わらず混沌としていますが、金融市場には耐性が出来てきて、この問題で相場があまり動かなくなってきています。
そうなってくると、市場の関心事は本来のテーマに回帰していきます。
それは、各国のインフレと金融政策です。
FOMCでついに利上げ開始。かなり強気な発言をするFRB関係者も
米国ですが、前回のFOMC(米連邦公開市場委員会)でついに利上げを開始しました。
それに伴い、FRB(米連邦準備制度理事会)関係者は今後について、かなり強気の発言をしてきています。
パウエルFRB議長も、今後利上げペースを早める可能性に言及していますが、他のメンバーの中には、もっと強気の発言をしている人もいます。
たとえば、FOMCで議決権を持っているセントルイス連銀のブラード総裁は、「政策金利であるFFレートを今年3%以上にすべきだ」と主張しています。
また、クリーブランド連銀のメスター総裁も「今後6回のFOMCのうち、一部で大幅な利上げが必要になる」との見解を示しています。
ほとんどのメンバーが程度の差はあっても、同じような問題意識を示しています。
こうしたことを背景に、米国の長期金利(米10年債利回り)は上昇し、2.4%台に達する局面もありました。
(出所:TradingView)
FFレート(※)の先物、30日物FFレートは年末まで、政策金利が2.25%に達する水準にまで上昇してきました。
(※編集部注:「FFレート」とは、フェデラルファンド金利のことで、FF金利とも呼ばれる。米国の政策金利)
米国は金利上昇ムード一色となってきました。
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各国も金融引き締め方向へ
また、英国は米国より先に昨年(2021年)の12月から利上げを開始し、3回連続で利上げをしています。
ECB(欧州中央銀行)はまだ慎重な姿勢を崩していませんが、夏を越えた辺りから、金融引き締めを検討すると言われています。
その他の国をみても、たとえば、メキシコはすでに昨年中ごろから継続的に利上げを実施してきています。
豪州も先日発表された雇用統計が非常にいい結果となっていますので、今後金融緩和政策からの転換を議論することになると思います。
■日本は金融緩和政策を維持すると明言。円全面安となるのは、ある意味当たり前の話
そんな中、他の国と違ったスタンスを持ち続けている国があります。日本です。
日銀の黒田総裁は、足元でインフレが進行していることは認めており、携帯電話の値下がりの影響を除くと、消費者物価指数は年率で2%を超えてきていることは認めていますが、だからと言って、「政策転換を考えるような状況にはない」と発言しています。
世界の主要国は、インフレ対策のために、金融引き締め政策に転換している一方で、日本は金融緩和政策を維持すると明言している。
そうなれば円全面安となるのは、ある意味当たり前の話です。
それが現在の円安の原因ですので、とても分かりやすい動きをしているということです。
IMMで円売りポジションはここ1~2週間で増えていない。米ドル/円は125円が視野に
また、ポジション状況を見ても、思ったほど円売りが溜まってきていない状況です。
直近のIMM(国際通貨先物市場)のポジションを見ても、円売りポジションはここ1~2週間で増えていないことが分かります。
(詳しくはこちら → 経済指標/金利:シカゴIMM通貨先物ポジションの推移)
また、資源価格の高騰などで日本の貿易収支が赤字になっていますが、輸入企業の中には、代金支払いのための外貨確保に出遅れてしまっている企業もかなりあるようです。
以上を考えると、「円安はこんなものでは終わらない。まだまだ続く」と考えるのが自然ではないかと思います。
米ドル/円も125円が視野に入ってきたと思います。
(出所:TradingView)
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資源価格も高止まり。さまざまな通貨に対しての円売りを継続
さらに、インフレの原因となっている資源価格も高止まりしています。
(出所:TradingView)
これは、ウクライナ情勢が緊迫化する前からの現象ですので、ウクライナ情勢の行方に関わらず、この傾向は続きます。
ですから、豪ドル、ニュージーランドドル、メキシコペソなどもまだまだ上昇する可能性が高いと考えています。
さまざまな通貨に対しての円売りを継続します。
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