トルコは過去3カ月の製造業の受注と設備投資が好調。一方、向こう3カ月はロシアのウクライナ侵攻の悪影響が出始める見通し
トルコ中銀は4月の設備稼働率と企業信頼感指数を発表しました。設備稼働率は4月に0.5%上昇し、前月比77.8%になりました。企業信頼感指数も4月に上昇を見せ、1.2ポイント上昇し前月比109.7に到達しました。
データの中身を見ると、過去3カ月の製造業における受注と設備投資の増加が目立っています。一方で、ロシアによるウクライナ侵攻の悪影響も出始めていて、戦争が長引くとの見方から向こう3カ月の受注と設備投資が減少する見通しです。
(出所:トルコ中銀)
ウクライナ戦争の影響がもっとも感じられる指標として、消費者信頼感指数があります。
TUIK(トルコ統計局)は4月21日(木)に4月の消費者信頼感指数を発表しましたが、その結果は前月比67.3となりました。これは歴史的な低水準です。また、前月比で7.3%減(前月72.5)というかなり激しい下げ方ですが、やはりウクライナ戦争によるインフレの加速が消費を大きく冷やしています。
(出所:TUIK)
トルコは家賃も高騰。イスタンブール、アンカラなどの大都市圏では100~120%の上昇に
国民生活を直撃しているもうひとつ重要なことは家賃の高騰です。トルコの住宅価格の上昇について、当コラムで解説しましたが、家賃も同じペースで上がっていて、過去1年間で95.5%も上昇しました。
95.5%はトルコ全体の平均数字で、イスタンブール、アンカラなどの大都市圏では家賃が100~120%の上昇を見せています。過去4年間のトルコ全体の家賃上昇率が133.2%であることから、インフレがこの1年間でいかに加速したのかがわかります。
【参考記事】
●【トルコリラ見通し】トルコリラ/円は目先、9円までの上昇を想定するべき。ロシアの富裕層の一部が、トルコ資産へ投資を開始!?(4月20日、エミン・ユルマズ)
円安トレンド一服でトルコリラ/円は反落。ただ、商品価格の下落がトルコリラの追い風に
今週(4月25日~)のトルコリラですが、対米ドル・対円でともに下げに転じていて、米ドル/トルコリラは14.80リラを超え、トルコリラ/円は8.60円水準に下がりました。
(出所:TradingView)
(出所:TradingView)
直近の円安トレンドが一服しているので、トルコリラ/円の上昇は止まりましたが、コモディティ(商品)価格の下落がトルコリラに追い風になります。
ラマダンでイスラム諸国の経済活動や投資は停滞。5月9日以降からトルコリラも本格的に動き出すか
今月(4月)はイスラム教の聖なる月であるラマダンでした。ラマダンは断食月のことで、断食の影響でこの期間中にイスラム諸国における経済活動や投資が停滞します。
そのため、為替のボラティリティも小さくなりますが、ラマダンは今週(4月25日~)で終わります。来週(5月2日~)はラマダン明けのお祭りでトルコ市場は水曜日(5月4日)まで休みになります。
まだ正式発表はありませんが、トルコ政府は5月5日(木)・6日(金)も休みにして9連休にする可能性が高いです。再来週(5月9日~)以降、トルコリラも本格的に動き出すと予想しています。
エミン・ユルマズ
<内容紹介>
今後の世界経済はどのように展開していくのか?すべてがバブルと思われるほど価格が上昇したいま(2022年春)、リーマンショック以上の世界経済の崩壊(!)が近づいていることを、著者は深く懸念している。さらにサイバーセキュリティへの懸念や暗号通貨の広がりなど、グローバル化、デジタル化した世界経済ならではの、新しい問題についても警鐘を鳴らしている。
著者は、こんなときだからこそ、日本に世界の資金が集まるチャンスとも言う。投資をする人も、そうでない人も、世界経済の大転換期に入った今、是非読んでおきたい一冊である。
⇒Amazon.co.jpで『エブリシング・バブルの崩壊』を見る
株主:株式会社ダイヤモンド社(100%)
加入協会:一般社団法人日本暗号資産ビジネス協会(JCBA)