トルコ失業率は低下。トルコリラ安による製造業の好調が雇用環境に寄与
TUIK(トルコ統計局)は2月の雇用統計を発表しました。2月に失業率は0.5%低下して10.7%になりました。失業率は男性で9.3%、女性で13.4%になっています。24歳以下の若者の失業率は20.7%と依然として高い水準ですが、雇用が若干ながらも改善しているのがわかります。
(出所:TUIK)
その背景にあるのは、トルコリラ安による製造業を中心とする輸出産業の好調ぶりです。同じくTUIKは今週(4月11日~)、2月の鉱工業生産指数も発表しました。2月は前年同月比で13.3%増、前月比で4.4%増となり、やはり製造業の好調が続いています。
(出所:TUIK)
ロシアによるウクライナ侵攻によって、EU(欧州連合)は、ロシアやウクライナから調達していた物資の一部をトルコに発注するようになりました。
また、ゼロコロナ対策で中国の大規模ロックダウン(都市封鎖)が続いていることも、代替国としてトルコの製造業に対する需要を高めています。
トルコ経常収支は悪化。エネルギー価格と米ドル高がダブルパンチに
一方で、やはり大きな問題はトルコの経常収支の悪化です。
前回のコラムでも、トルコの経常赤字の拡大の最大要因が原油価格の高騰であることを解説しましたが、3月23日(水)以降にずっと下落トレンドだった原油価格は今週(4月11日~)反発し、WTI原油価格は再び100ドルを超えてきました。
【参考記事】
●【トルコリラ見通し】トルコの消費者物価指数(CPI)、実際は100%超え!? トルコリラの下落を阻止する介入は継続(4月6日、エミン・ユルマズ)
(出所:TradingView)
エネルギー価格の上昇と米ドル高は、トルコに限らず資源国を除くすべての新興国にダブルパンチになっています。
今週(4月11日~)、スリランカがすべての対外債務に対してデフォルト(債務不履行)を起こしました。ロシアは産油国ですが、欧米による経済制裁の影響で選択的債務不履行(セレクティブデフォルト、SD)(※)に陥っています。
(※編集部注:「選択的債務不履行」とは、格付け会社スタンダード&プアーズ(S&P)が適用する格付け(信用度)のこと。債務の一部について予定期日に履行されなかったことを示すもので、下から2番目の格付けとなる)
トルコリラは対米ドル・対円で堅調に推移。米CPIが予想を大きくは上回らず、米ドル売り材料に
今週(4月11日~)のトルコリラは対米ドル・対円で堅調に推移していて、米ドル/トルコリラは14.60リラ水準まで下がり、トルコリラ/円は8.60リラ水準まで上昇を見せています。
(出所:TradingView)
(出所:TradingView)
米国の金利上昇は続いていますが、 今週(4月11日~)発表された米国のCPI(消費者物価指数)の上昇率が8.5%と市場予想の8.4%を大きくは超えていないことが、米ドル売り材料になりました。
トルコがデフォルトを引き起こすリスクは極めて少ない
日本の投資家によく聞かれる質問のひとつは、トルコのデフォルトリスクについてですが、個人的にはトルコがデフォルトを起こすリスクは極めて低いと考えます。
トルコの対外債務のGDPに占める比率は高いものの、これの大部分は民間セクターの債務で政府のものではありません。そのため、トルコ国債がデフォルトを起こす可能性は低いです。
エミン・ユルマズ
<内容紹介>
今後の世界経済はどのように展開していくのか?すべてがバブルと思われるほど価格が上昇したいま(2022年春)、リーマンショック以上の世界経済の崩壊(!)が近づいていることを、著者は深く懸念している。さらにサイバーセキュリティへの懸念や暗号通貨の広がりなど、グローバル化、デジタル化した世界経済ならではの、新しい問題についても警鐘を鳴らしている。
著者は、こんなときだからこそ、日本に世界の資金が集まるチャンスとも言う。投資をする人も、そうでない人も、世界経済の大転換期に入った今、是非読んでおきたい一冊である。
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