パウエルFRB議長の「0.75%に決まっていない」発言で、米長期金利と米ドルが下落
米ドル/円は、2002年の高値135.15円を上に抜ける局面がありましたが、その後、乱高下をしています。
(出所:TradingView)
乱高下のきっかけになったのは、FOMC(米連邦公開市場委員会)後のパウエルFRB(米連邦準備制度理事会)議長の発言でした。
今回のFOMCでは、市場の事前予想どおり0.75%の利上げを実施したのですが、実は市場は7月のFOMCでの0.75%の利上げも100%織り込んでいました。それは、CME(シカゴ・マーカンタイル取引所)のFed Watch ツール(※)を見れば、ビジュアル的に分かります。
(※編集部注:「Fed Watchツール」とは、FOMCで決める米国の政策金利であるFF金利の誘導目標が変更される可能性を確率で表した数値。シカゴ・マーカンタイル取引所グループがFF金利先物の動向に基づき算出するもの)
その状況の中で、パウエル議長が「7月のFOMCは0.5%か0.75%の選択肢があり、0.75%に決まっているわけではない」とわざわざ発言したことで、米長期金利が低下し、米ドルも急落しました。つまり、織り込み過ぎていたことへの反動です。
実は市場は7月のFOMCでの0.75%の利上げも100%織り込んでいた。その状況の中で、パウエルFRB議長が「7月のFOMCは0.5%か0.75%の選択肢があり、0.75%に決まっているわけではない」とわざわざ発言した (C)Bloomberg/Getty Images News
(出所:TradingView)
ただ、米国が今後かなりのペースで利上げをしていくことは間違いありませんので、米ドルが大きく崩れるということは、米国サイドの状況からは考えづらいと思います。
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円安懸念の声明文を3者で公表したということは、日銀もコミットしたということ。選択肢としては、長期金利の変動幅拡大しかない
そこで、今回は、もしかしたらという程度の可能性ではありますが、日銀が何か動くかもしれないという点を考えてみたいと思います。
本日(6月16日)から明日、6月17日(金)にかけて、日銀の金融政策決定会合が開催されています。
実は、先週(6月6日~)、財務省、日銀、金融庁の3者会談が行われ、現在の円安に対する懸念を共有する声明文が公表されました。
一説には、官邸からの強い要請があったとも言われていますが、真実は分かりません。
この声明文を3者で公表したということは、日銀もコミットしたということを意味します。
実際のところ、それ以降、黒田日銀総裁の発言にやや変化がみられます。
財務省、日銀、金融庁の3者会談が行われ、現在の円安に対する懸念を共有する声明文が公表された。この声明文を3者で公表したということは、日銀もコミットしたということ。実際のところ、それ以降、黒田日銀総裁の発言にやや変化がみられる (C)Bloomberg/Getty Images
さて、その上で日銀に何ができるかということですが、ゼロ金利政策や量的緩和政策を変更することは流石にできません。
そうなると、選択肢としては、YCC(※イールド・カーブコントロール)の上下幅を拡大するということしかないと思います。
(※編集部注:「イールド・カーブコントロール」とは、長期金利と短期金利の誘導目標を操作して、イールドカーブを適切な水準に維持すること)
なぜなら、日銀は2021年3月19日(金)にこの長期金利の変動幅をそれまでの±0.1%から±0.25%に拡大した実績があるからです。
その時も苦し紛れのような理由を説明していましたが、今回も理由は何とでも言えます。これは、金融の引き締めではないと言い張ればいいだけの話です。
可能性は低いが、日銀が長期金利の変動幅を拡大した場合、かなりの円高になるのはおそらく間違いない
繰り返しますが、これは、もしかしたら?という程度の話ですが、可能性がゼロではないので取り上げています。
仮に変動幅を拡大した場合は、日銀がどういう説明をしようと、市場は円安対策だと捉えます。かなりの円高になるのはおそらく間違いないでしょう。
私自身も政治家をやっておりましたので、「3者会談で声明文をわざわざ出して、それで終わりということはない」というのが自然ではないかと感じています。
実務的には、明日も無制限の指値オペを実施すると公表していますので、その日に幅の拡大を決定するというのはかなり窮屈であり、そういう点からも可能性は低いということは再度申し上げておきます。
いずれにしても、今後動きについては、FOMCが終わってしまい、米ドル高がさらに進むような材料が少し見当たらなくなってしまうと思いますので、一気に137~138円というような展開にはならないと予想しています。
(出所:TradingView)
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