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エミン・ユルマズの「トルコリラ相場の明日は天国か? 地獄か?」

【トルコリラ見通し】トルコリラは、外貨保有の
新たな規制導入で上昇! しかし、事実上の
資本規制に現地では懸念が増加

2022年06月29日(水)15:56公開 (2022年06月29日(水)15:56更新)
エミン・ユルマズ

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スウェーデンとフィンランドのNATO加盟をトルコが容認。トルコリラの追い風に

 スウェーデンとフィンランドのNATO(北大西洋条約機構)加盟に反対していたトルコ政府は、両国の加盟を容認することになりました。

 エルドアン大統領は6月28日(火)に両国首脳やNATOのストルテンベルグ事務総長とスペインのマドリードで会談し、加盟への反対を取り下げました。

スウェーデンとフィンランドのNATO加盟を容認したエルドアン大統領。当初から加盟に反対していたがいったい何が…!?  (C)Anadolu Agency/Getty Images

スウェーデンとフィンランドのNATO加盟を容認したエルドアン大統領。当初は加盟に反対していたがいったい何が…!?  (C)Anadolu Agency/Getty Images

 トルコが両国のNATO加盟を認めない理由は、トルコ軍が戦っているクルド系のテロ組織PKK(クルディスタン労働党)への両国の支援でしたが、以前このコラムで「これは表の理由で、真の理由はNATOから何らかの譲歩を引き出すことであろう」と指摘しました。

【参考記事】
【トルコリラ見通し】トルコリラは反発があっても限定的か。NATOとエルドアン政権の政治的摩擦が、トルコリラの売りに拍車(5月18日、エミン・ユルマズ)

 トルコが両国の加盟を容認する代わりに何を得たのか現時点ではっきりしていませんが、経済支援や米国やEU(欧州連合)諸国から戦闘機部品を含む軍事機器輸出規制の緩和などを引き出せた可能性は高いです。いずれにしてもNATOとトルコの対立がなくなったことがトルコリラに追い風となるでしょう。

米ドル/トルコリラ 週足
米ドル/トルコリラ 週足

(出所:TradingView

BDDKが新外貨資産保有規制発表。企業からの米ドル売り・トルコリラ買いが入る

 今週(6月27日~)のトルコリラは、対米ドル・対円でともに上昇に転じています。

 米ドル/トルコリラは16.10リラ近辺まで下げて、トルコリラ/円は8.30円台まで上昇しました。

米ドル/トルコリラ 日足
米ドル/トルコリラ 日足

(出所:TradingView

トルコリラ/円 日足
トルコリラ/円 日足

(出所:TradingView

 トルコリラが上昇した背景には、6月24日(金)にトルコのBDDK(銀行管理監視局)が発表した新しい外貨資産保有規制の影響があります。

 BDDKの新規制は90万ドル(約1億2000万円)以上の外貨資産を保有している民間企業を対象にしています。外貨資産が総資産あるいは売上高の10%を超える場合に、民間企業は国内の銀行からトルコリラ建ての借り入れができなくなります。

 新規制の発表があったのは、先週(6月20日~)金曜日にトルコ市場が閉鎖したあとでしたが、やはり今週(6月27日~)月曜日から手持ちの米ドルを売ってトルコリラを買う企業の動きが出て、トルコリラは上昇に転じました。

新資本規制で企業の「ドル化」は止まるか?トルコリラの下落が止まらなければ、もっと強い資本規制への懸念も

 直近では特に海外と取引をしている民間企業において資産の一部を外貨に換える動きが流行っていました。

【参考記事】
【トルコリラ見通し】トルコの短期対外債務は過去最高レベル、トルコリラの売り圧力に。緩和継続の政策は孤立状態(5月25日、エミン・ユルマズ)

 為替変動リスクを減らすための対策でしたが、トルコ国内の「ドル化」を加速させることになりました。

 「ドル化」とは、米ドルが自国通貨と並存または自国通貨に代わって利用される現象のことです。

 当然ながら政府や中央銀行にとって望ましい状況ではありません。しかし、企業の外貨保有に規制をかけることは事実上資本規制の一種であり、現地ではトルコリラの下落が止まらなければもっと強い資本規制を投入するのではないかとの懸念が増えています。

エブリシング・バブルの崩壊(エミン・ユルマズ著)
エブリシング・バブルの崩壊
エミン・ユルマズ

<内容紹介>
今後の世界経済はどのように展開していくのか?すべてがバブルと思われるほど価格が上昇したいま(2022年春)、リーマンショック以上の世界経済の崩壊(!)が近づいていることを、著者は深く懸念している。さらにサイバーセキュリティへの懸念や暗号通貨の広がりなど、グローバル化、デジタル化した世界経済ならではの、新しい問題についても警鐘を鳴らしている。
著者は、こんなときだからこそ、日本に世界の資金が集まるチャンスとも言う。投資をする人も、そうでない人も、世界経済の大転換期に入った今、是非読んでおきたい一冊である。
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