トルコの製造業は好調だが、経常赤字は拡大。エネルギー価格の高騰が悪影響
TUIK(トルコ統計局)は4月の雇用統計を発表しました。4月の失業率は前月(3月)と大きく変わらず11.3%でした。
(出所:TUIK)
今週(6月13日~)発表されたもうひとつの重要な指標は4月の鉱工業生産指数で、事前のコンセンサスだった6.4%を大きく超える10.8%の上昇となりました。
特に製造業の伸びが目立っていて、トルコリラ安の恩恵を受け、トルコの製造業への海外から受注が増えているのが背景にあります。
(出所:TUIK)
製造業が好調なので本来トルコの経常収支は改善するはずですが、今回はそうなっていません。トルコ中銀の発表によると、4月も経常収支の悪化が続いています。
直近12カ月合計の経常収支は257.1億ドルの赤字で、過去9カ月でもっとも悪い値を記録しました。経常赤字拡大の理由はエネルギー価格の高騰です。
(出所:TradingView)
経常収支悪化がトルコCDSを高騰させ、トルコリラ売り圧力を高めることに
エネルギーと金(ゴールド)価格を除いて計算されるコア経常収支は黒字ですが、トルコは原油などの天然資源をほとんど保有していないためエネルギー価格の上昇が経常収支を大幅に悪化させます。
経常収支の悪化はトルコ債の信用リスクを示すCDS(クレジットデフォルトスワップ)を高騰させ、トルコリラの売り圧力を高める結果になりました。トルコのCDSは2003年以来の高水準に達しています。
トルコ5年債のCDSは837bp、つまり8.37%を記録しましたが、リーマンショックが起きた2008年10月でさえトルコのCDSは8.31%が天井でした。リスクプレミアムの高騰を受け、トルコの米ドル建て10年債利回りは10.6%まで上昇しました。
トルコ、国債CDSが19年ぶり高水準に-リラ安や金融政策不安で
出所:Bloomberg
(出所:TradingView)
トルコ中銀の純外貨準備高は早いペースで減少。弱体化が深刻な問題に
今週(6月13日~)のトルコリラは、対米ドル・対円でともに売られています。米ドル/トルコリラは17.20リラを超え、トルコリラ/円は下落し、7.80円水準で推移しています。
(出所:TradingView)
(出所:TradingView)
トルコ中銀の純外貨準備高は6月3日の週で105億ドルに下がっていますが、前週比で17億ドル減というトルコにしてはかなり早いペースの減少です。
これを受け、スワップ協定を除く純外貨準備高はマイナス528億ドルに下がり、トルコ中銀の弱体化が深刻な問題になっています。
【参考記事】
●【トルコリラ見通し】トルコ経済の見通しは依然としてネガティブ。外国人投資家は、トルコの株式と債券を大きく売り越し(6月1日、エミン・ユルマズ)
トルコのCDSが急騰している背景にエネルギー価格の高騰に加え、外貨準備高が底をついていることが深く関係しています。
現地メディアでは、エルドアン政権は来夏まで待たず、今秋に解散総選挙を実施すると報じている
現地メディアでは、エルドアン政権が来年(2023年)の夏まで待てば経済の状況がさらに悪化して不利な選挙戦になるので、今年(2022年)の秋に解散総選挙をするのではないかとの報道が多くなりました。
現地メディアでは、エルドアン政権は今秋に解散総選挙を実施するのではないかとの報道が多くなっている (C)Anadolu Agency/Getty Images
トルコ政府は7月に最低賃金の引き上げを行ってから解散総選挙を発表するとの見方が強まっています。
【参考記事】
●【トルコリラ見通し】トルコリラへのスタンスを弱気に変更。大統領にとって重要なのは、インフレへの対策ではなく選挙(5月11日、エミン・ユルマズ)
エミン・ユルマズ
<内容紹介>
今後の世界経済はどのように展開していくのか?すべてがバブルと思われるほど価格が上昇したいま(2022年春)、リーマンショック以上の世界経済の崩壊(!)が近づいていることを、著者は深く懸念している。さらにサイバーセキュリティへの懸念や暗号通貨の広がりなど、グローバル化、デジタル化した世界経済ならではの、新しい問題についても警鐘を鳴らしている。
著者は、こんなときだからこそ、日本に世界の資金が集まるチャンスとも言う。投資をする人も、そうでない人も、世界経済の大転換期に入った今、是非読んでおきたい一冊である。
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