参議院選挙後、メイントレンドに戻った米ドル/円。中長期の目標147円に向けて上昇再開へ
みなさん、こんにちは。
前回のコラムでご紹介させていただいたように、参議院選挙(7月10日)後にメイントレンドに戻った米ドル/円は続伸。
【参考記事】
●米ドル/円は、短期で140円、中長期で147円!参議院選挙を終え、米国のインフレと急上昇する金利に話題が集中するなか、上昇再開!(7月14日、西原宏一)
参議院選挙前は、3者会合(=財務省と金融庁、日銀)を開催し、政府として「円安に懸念を共有している」といったスタンスも見られました。
ところが、与党圧勝という結果となった参議院選挙後は、さっそく黒田日銀総裁が「当面は新型コロナの影響注視、必要あれば躊躇なく追加緩和」とコメントしたこともあって米ドル/円は上昇トレンドに回帰しています。
参議院選挙前(7月8日)には、135.34円という安値もあった米ドル/円ですが、選挙後は続伸し、一時139.39 円と節目の140円に迫るところまで急騰しています。
(出所:TradingView)
短期での目標値である140円は、ほぼ達成(高値は139.39円)。
参議院選挙後、1週間で4円ほど急騰したため、今週(7月18日~)はいったん調整に入っています。
調整後、中長期の目標値である147円に向けて、米ドル/円は上昇再開すると想定しています。
(出所:TradingView)
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今週マーケットの注目を集めているのが「ノルドストリーム1」問題。定期点検後、ガス供給は再開されるのか
一方、今週(7月18日~)マーケットの注目を集めているのが、7月22日(金)の欧州のDoomsday(運命の日)。
つまり、ロシアから欧州に天然ガスを運ぶパイプライン「ノルドストリーム1」が21日(木)の保守点検作業終了後に操業を再開するかどうかという問題。
なぜ、「ノルドストリーム1」が操業を再開するかどうかが大問題になっているのかという確認の意味で、前回のコラムを抜粋しておきます。
欧州にとって、ロシア産の天然ガスは重要なエネルギー源になっています。
言い換えれば、それが止まるとヨーロッパは破綻することにもなりかねないわけです。
現在、ロシアから欧州への天然ガスの大部分を供給しているパイプライン、ノルドストリームがメンテナンスのため7月11日(月)から10日間停止しています。
ドイツ銀行のストラテジスト、ジム・リード氏によれば、天然ガスがオンラインに戻るはずの7月22日(金)が、今年(2022年)もっとも重要な日になる可能性があるとコメントしているようです。
つまり、ロシアが欧州向けガス供給を停止するのではないかという危惧があるわけです。ブルームバーグもロシア産天然ガスの供給遮断リスクを報道しています。
ロシアが欧州向けのガス供給を停止した場合の影響に関し、UBSグループが今週公表した詳細な分析によれば、企業利益は15%余り減り、ストックス欧州600指数の下落率は20%を上回り、ユーロは0.90ドルまで下げる恐れがある。
出所:Bloomberg
本稿執筆時点(7月21日)では、「ノルドストリーム1」は、21日(木)の保守点検作業終了後に操業を再開するとの見方が大勢。
しかしプーチン大統領は、制裁対象となっているパイプライン部品を巡る問題を解決しない限り、供給量は絞られると警告しています。
一方、EU(欧州連合)行政執行機関である欧州委員会は、ロシアがガス供給を再開するとは考えていないようです。
欧州連合(EU)行政執行機関である欧州委員会は、天然ガスのパイプライン「ノルドストリーム」の保守点検をロシアが今週終了しても、同国がガス供給を再開するとは考えていない。
出所:Bloomberg
一部メディアによると、ゴールドマン・サックスのアナリストは、パイプラインは21日(木)にメンテナンス前の40%の容量でオンラインに戻ると予想しているようです。
イタリア政局の混乱もユーロにとって大きな問題。ドラギ首相は主要3政党の指示を得られず…
この「ノルドストリーム1」がユーロにとって最重要課題であることは変わりませんが、ユーロにとってもうひとつ大きな問題が噴出してきました。
それは、イタリアの政局の混乱。
7月20日(水)に、イタリアのドラギ連立政権が、主要3政党の支持を得られず崩壊の瀬戸際に追い込まれています。
ドラギ首相は20日(水)、議会上院で実施された政権への信任投票で信任された形となったのですが、コンテ前首相が率いる連立の一角「五つ星運動」のほか、中道右派の「同盟」とベルルスコーニ元首相率いる「フォルツァ・イタリア」が投票を棄権したことから実質的な意味を失っています。
結果、ドラギ政権は早ければ秋にも解散総選挙に至ることが確実となりました。
これはECB(欧州中央銀行)の政策にも影響を与えます。
イタリア国債が政治的不安の高まりで暴落しそうなときに、ECBが0.50%の引き上げを行うことは極めて困難だと思われるためです。
一部メディアでは「ドラギ首相を見捨てたイタリア政府は崩壊寸前、ユーロは暴落へ」と報道しています。
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ノルドストリーム1問題に加えて、イタリア政局の混乱でユーロの反発余地は極めて限定的に。ユーロ/米ドルはパリティに向けて下落再開へ
「ノルドストリーム1」の再開問題に加え、イタリアの政局も混迷を深め、ECBの利上げは順調に進まず。これはユーロの反発余地を極めて限定的にしています。
このコラムで注目のユーロ/スイスフランは、調整があってもパリティ(=1.0000スイスフラン)まで戻らず、0.9900スイスフランレベルで上値が重い展開のまま。
(出所:TradingView)
「ノルドストリーム1」の再開問題に加えて、イタリアの政局も混迷を深め、ECBの利上げは順調に進まず。ユーロ/米ドルは再びパリティ(=1.0000ドル)に向けて下落を再開する可能性が高そうです。
(出所:TradingView)
そして 参議院選挙後にメイントレンドに戻り、147円へと上昇を再開した米ドル/円に注目です。
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