トルコCPIは前年同月比79.6%!G20でもっとも高インフレの国に
TUIK(トルコ統計局)は7月のCPI(消費者物価指数)を発表しました。
7月のCPIの上昇率は前年同月比で79.6%になりました。前月比でも2.37%の上昇となり、14カ月連続で上昇しました。コアCPIは前年同月比で61.69%の上昇となり、1998年以来の高水準を記録しました。
(出所:TUIK)
(出所:TUIK)
データの中身をみると、7月にもっとも物価が上昇したのは交通で119.11%でした。その次は94.65%の食料・ノンアルコール飲料と88.35%の家電・雑貨でした。
(出所:TUIK)
これらの結果を受け、トルコはG20の中でもっともインフレ率が高い国になりました。トルコの次にインフレ率が高いのはアルゼンチンです。
PPIの上昇率は144.61%。CPIとPPIの乖離はさらに拡大することに
PPI(生産者物価指数)の方は、7月に前年同月比で144.61%の上昇を記録し、CPIとPPIの乖離はさらに拡大しました。
(出所:TUIK)
非製造業PPIの6月の上昇率は前年同月比で91.27%でしたが、その中でも価格上昇が目立ったのは不動産関連のサービス価格で、144.11%でした。
(出所:TUIK)
(出所:TUIK)
シリアからの難民、アフガニスタンからの移民に加え、ロシア・ウクライナ戦争によってトルコの住宅ニーズが高まったのが背景にあります。
外国人による不動産購入が増えているのに、原材料高の影響で新規住宅の建設が大幅に遅れています。
【参考記事】
●【トルコリラ見通し】米CPIの結果を受けて、対米ドルで下落。コモディティ価格下落と観光シーズン到来でリラ売り圧力は弱まるか(7月20日、エミン・ユルマズ)
需給バランスが崩れているので、家賃も大きく上昇する傾向にありますが、トルコ政府は住宅を借りている人を守るために家賃の値上げに年間25%の上限を設けました。当然ながら家を貸している住民(オーナー)はこの制度に反発しています。
トルコの外貨預金の割合は71%。「米ドル化」がさらに進む
今週(8月8日~)のトルコリラは対米ドルで大きく動かなかったものの、米ドル/円が再び円安に振れたことによって対円で上昇しました。
米ドル/トルコリラは17.90リラ前後で推移し、トルコリラ/円は7.50円を超えています。
(出所:TradingView)
7月29日(金)の週でトルコの銀行預金における外貨預金の割合は54.5%になりました。為替差損保証付き預金制度(※)で預けられているお金も計算に入れると外貨預金の割合は71%です。これがトルコの「ドル化」がさらに進んでいることの証明です。
「ドル化」とは、米国以外の国で米ドルが自国の法定通貨と並存、または自国の法定通貨に替わって利用される状況のことを言います。
(※編集部注:「為替差損保証付き預金制度」とは、トルコリラ建て預金の価値をトルコ政府が保証するというもの。トルコリラで国内銀行に預金している間にトルコリラが対米ドルで下落し、預金した時の為替レートとの差額が金利収入を超えた場合、その差額を政府から支払う)
【参考記事】
●【2022年のトルコリラ見通し】エルドアン大統領の新政策は、大失敗に終わる可能性。政権交代がなければ、本格的な上昇は難しい(2021年12月22日、エミン・ユルマズ)
(C)AdobeStock
ドル化が進む原因はさまざまですが、政情不安、内戦を含む戦争、財政破綻、ハイパーインフレなどによって起きることが多いです。トルコの場合、戦争や内戦はないものの、政府の経済政策の失敗でハイパーインフレが起きていることがドル化の最大要因です。
【参考記事】
●【トルコリラ見通し】トルコリラは、外貨保有の新たな規制導入で上昇! しかし、事実上の資本規制に現地では懸念が増加(6月29日、エミン・ユルマズ)
エミン・ユルマズ
<内容紹介>
今後の世界経済はどのように展開していくのか?すべてがバブルと思われるほど価格が上昇したいま(2022年春)、リーマンショック以上の世界経済の崩壊(!)が近づいていることを、著者は深く懸念している。さらにサイバーセキュリティへの懸念や暗号通貨の広がりなど、グローバル化、デジタル化した世界経済ならではの、新しい問題についても警鐘を鳴らしている。
著者は、こんなときだからこそ、日本に世界の資金が集まるチャンスとも言う。投資をする人も、そうでない人も、世界経済の大転換期に入った今、是非読んでおきたい一冊である。
⇒Amazon.co.jpで『エブリシング・バブルの崩壊』を見る
株主:株式会社ダイヤモンド社(100%)
加入協会:一般社団法人日本暗号資産ビジネス協会(JCBA)