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エミン・ユルマズの「トルコリラ相場の明日は天国か? 地獄か?」

【2022年のトルコリラ見通し】エルドアン
大統領の新政策は、大失敗に終わる可能性。
政権交代がなければ、本格的な上昇は難しい

2021年12月22日(水)15:24公開 (2021年12月22日(水)15:24更新)
エミン・ユルマズ

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今週のトルコリラ大きく乱高下。エルドアン大統領の利下げ姿勢継続で、リラは一段安に

 今週(12月20日~)のトルコリラは大きく乱高下しました。

 12月20日(月)に米ドル/トルコリラが18.00リラを越え、トルコリラ/円も6円台前半まで下がる局面がありました。

米ドル/トルコリラ 日足
米ドル/トルコリラ 日足

(出所:TradingView

トルコリラ/円 日足
トルコリラ/円 日足

(出所:TradingView

 その背景にあるのは、エルドアン大統領がたびたび宗教的な理由で利上げに反対していると発言し、利下げ姿勢を続けると強調していたことです。

 トルコリラの連日の下落で、トルコ国民は手持ちのリラをいち早く米ドルやユーロなどの外貨に換えるために両替所に殺到していました。エルドアン大統領が12月20日(トルコ時間)にも国民向けの演説を行うと報道されると、トルコリラは一段安となりました。

トルコリラ建て預金の価値をトルコ政府が保証する「前代未聞」の新預金制度発表。一転してトルコリラは暴騰

 ところが、エルドアン大統領は12月20日(月)の演説で、ハットからウサギを取り出しました。

それは前代未聞の新預金制度でした。この新しい預金制度とは、トルコリラ建て預金の価値をトルコ政府が保証するというものです。

 つまり、トルコリラで国内銀行に預金している間にトルコリラが対米ドルで下がって、預金した時の為替レートとの差額が金利収入を超えた場合にその差額を政府から支払うとのことです。

 この説明を読んで、頭が混乱している日本人の投資家が多数いると思います。

 実際にトルコ国民の頭も混乱しています。新しい預金制度の詳細は、まだはっきりわかりませんが、現地メディアの報道によれば、預金期間が3カ月、半年、1年という括りで、期限が来る前に解約したら差額が保証されません。また、差額を計算する方式は預金開始日のレートと終了日のレートから計算するとのことです。

エルドアン大統領は演説で前代未聞の新預金制度を発表。この新しい預金制度では、トルコリラ建て預金の価値をトルコ政府が保証するという (C)Anadolu Agency/Getty Images

エルドアン大統領は演説で前代未聞の新預金制度を発表。この新しい預金制度では、トルコリラ建て預金の価値をトルコ政府が保証するという (C)Anadolu Agency/Getty Images

日本の個人投資家のトルコリラのロングポジション増加。トルコリラへの関心がジワリ高まっている可能性

 新預金制度の発表を受けトルコリラは急騰して、米ドル/トルコリラは13.00リラを割り、トルコリラ/円も9円台まで反発しました。

米ドル/トルコリラ 日足
米ドル/トルコリラ 日足

(出所:TradingView

トルコリラ/円 日足
トルコリラ/円 日足

(出所:TradingView

 トルコ市場が閉鎖している夜の薄商いを狙った発表でしたので、積みあがっていたトルコリラのショートポジションの急な巻き戻しが発生し、トルコリラは12月20日(月)の安値から約25%も上昇するという、数十年ぶりの上昇を記録しました。

 ブルームバーグの報道によれば、日本の個人投資家は、12月20日(月)にトルコリラのネットロングポジションを5444枚増やしました。12月17日(金)には1万8716枚減らしたばかりでしたので、トルコリラへの関心が高まっているかもしれません。

日本のデイトレーダー、トルコ・リラ取引にそろり回帰

出所:Bloomberg

【参考記事】
乱高下で注目が集まるトルコリラ相場はスワップ狙いより短期売買のチャンス!? トルコリラ/円のスプレッドが狭いFX会社は?

新預金制度は大失敗に終わると予想。市場がエルドアン政権を信頼しているととても思えない

 さて来年(2022年)の見通しですが、エルドアン大統領の新政策が成功してトルコリラは安定するでしょうか?

個人的には長期でこの政策は大失敗に終わると予想しています。

 政府が為替差損を支払うには、トルコリラを印刷する以外にやり方がありません。これがインフレを加速させ、トルコリラの価値をさらに下げるという負のスパイラルを作ってしまいます。

 エルドアンがどんなに利上げ反対と言っても、この新預金制度は隠れた利上げであることに違いないです。しかも、利上げ幅がわからないという変わったやり方でうまくワークするのは、トルコ政府やトルコの金融機関の信用度にかかっています。

 これまでの動きを見ると、市場がエルドアン政権を信頼しているとはとても思えません。よってこのシステムを長期でうまく機能させるのは至難の業です。

エルドアン大統領が発表した新預金制度は長期で大失敗に終わるとの見方。このやり方がワークするのはトルコ政府やトルコの金融機関の信用度にかかっているが、市場が信頼しているとはとても思えないという (C)Adobestock

 (C)AdobeStock

エルドアン大統領の真の狙いは時間稼ぎ。2022年のトルコリラは、政権交代がない限り本格的な上昇は厳しいか

 では、エルドアン大統領の真の狙いは何でしょうか?

一言でいうと時間稼ぎです。来年(2022年)夏に解散総選挙が行われる可能性が高まっています。エルドアン政権にとって為替は総選挙まで持てば御の字です。選挙に勝てば通常の利上げスタンスに戻すのではないかと考えます。

 来年(2022年)のトルコリラは選挙関連の動きに大きく左右されると思います。総選挙の発表でトルコリラはさらに上昇すると考えられますが、政権交代がない限り本格的な上昇は厳しいと考えます。

米ドル/トルコリラ 週足
米ドル/トルコリラ 週足

(出所:TradingView

トルコリラ/円 週足
トルコリラ/円 週足

(出所:TradingView

※次回の配信は2022年1月5日(水)の予定です。


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