米国のCPIが衝撃的な結果となり、米ドルは暴落に近い動きに。今後は米ドルが下がりやすい状況に転換した
昨日(11月10日)、米国のCPI(消費者物価指数)は衝撃的な結果となりました。事前予想が前年比8.0%のところで7.7%という結果になっています。
結果を受けて、米長期金利(米10年債利回り)は急低下、米ドルも同じように暴落に近い動きを見せました。
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この下げは一時的なものではないと思います。今年(2022年)初めからの米ドル高相場に終焉が訪れ、今後は米ドルが下がりやすい状況に転換したと考えておくべきだと思っています。以下、その理由を説明します。
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米当局が、そろそろ急速な利上げを終えようとしているまさにその時に、この米CPIの結果が出た
11月FOMC(米連邦公開市場委員会)の声明文に「将来の目標レンジの引き上げベースを決めるにあたり、委員会は、金融政策の累積的な引き締め、金融政策が経済活動やインフレに影響を与えるラグ、経済・金融情勢を考慮する」との文言が加わりました。
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⇒乱高下が続く米ドル/円。米CPIと米雇用統計の結果次第で、12月FOMCの利上げ幅が0.75%か0.50%か決まると言っても過言ではない! 方向感がない時は、とにかく大損しないこと(11月4日、今井雅人)
つまり、利上げは時間差をおいて効いてくるという意味で、これは、あるところまで利上げしたら、後は少し様子を見ようという意味だと考えられます。
その後、パウエルFRB(米連邦準備制度理事会)議長は「金融環境が大幅に引き締まり、その効果が現れているが、効果が完全に現れるには時間がかかるだろう」との見解を表明しました。これは、声明文と同じ趣旨です。
また、「ある時点で利上げペースを緩めることが適切になる。利上げ減速の時期は早ければ次回会合となる可能性がある」ことに言及。「今回の会合で利上げを減速させることについて議論した」ことを明らかにしました。
そろそろ利上げのペースを緩めたらどうかとメンバーが考えていることを示唆しています。
さらに、他のメンバーからも同様の発言がありました。コリンズ米ボストン連銀総裁は「FRBは利上げの規模から最終的な金利水準に焦点を移すべき」との見解。エバンス米シカゴ連銀総裁は「利上げ幅を縮小しても、金融引き締めの余力は十分」、「FRBがより小規模な利上げに移行することは理にかなっている」、「インフレは実体経済より遅れており、評価する時間が必要」などの発言が見受けられました。
米当局が、そろそろ急速な利上げを終えようとしているまさにその時に、この米CPIの結果が出たわけです。
米CPIの発表以降、ハーカー米フィラデルフィア連銀総裁は「利上げは4.5%で一時停止することを望む」とまで言い出しました。
流れは完全に出来てきているようです。次回12月会合では0.5%の利上げ。そして、その後来年(2023年)は0.25%の利上げ、ひょっとすると来年は利上げを見送る可能性も出てきたということです。
米国の利上げが終わるのであれば、米ドル高も終わる。今後しばらくは、ポジション調整でさらなる米ドル売りがある可能性
今年の米ドル高・円安が米国の利上げによってもたらされてきたことは周知の事実です。それが終わるのであれば、米ドル高も終わるということです。
では、米ドル安相場が始まるのでしょうか?
今後しばらくは、ポジション調整でさらなる米ドル売りがある可能性はあると思います。
しかし、米国は利上げをいったん止めたとしても、そこからはしばらく様子を見る時期に入ります。利下げの議論はその後です。
ですから、米ドル安トレンドに転換するところまでは行かないと考えています。
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米ドル/円は140円の節目を下抜けると、さらに下がる可能性。130円あたりまでは行かないかもしれないが、リスクは下方向
米ドル/円は、140円台まで落ちてきています。いったんここは節目ですが、この水準を抜けるとさらに下がる可能性があります。
(出所:TradingView)
週足を見ていると、130円あたりまで見えてきますが、さすがにそこまでは行かないかもしれません。しかし、リスクは下方向です。
(出所:TradingView)
ユーロ/米ドルは1.05ドル前後が視野に。金利差が縮小してくることを期待してのロングポジションは面白い
ユーロ/米ドルは週足で下方トレンドを上に抜きました。1.05ドル前後が視野に入ってきました。
(出所:TradingView)
米国が利上げを緩める可能性が高くなってきている一方で、複数のECB(欧州中央銀行)メンバーはまだまだ利上げが必要だと発言しています。
今後、金利差が縮小してくることを期待してのユーロ/米ドルのロングポジションは面白いのではないかと思います。
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