12月以降の米利上げ幅鈍化の可能性が意識されるようになり、この1週間でムードが一変
先週(10月17日~)まで、私を含め、多くの市場関係者が米国の利上げはまだまだ続き、米ドル高が継続するという見方を持っていました。
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しかし、この1週間でムードが一変しています。
きっかけはウォール・ストリート・ジャーナルのフェド・ウォッチャー、ニック・ティミラオス記者が「11月のFOMC(米連邦公開市場委員会)では0.75%の利上げを決め、今後の利上げ幅を議論する見通しだ。複数の委員がやりすぎるリスクを意識している」との記事を投稿したことです。
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彼は、FOMCのメンバーに聞き取りをして記事を書いているので、投稿の内容はおそらく本当でしょう。
この記事により、12月以降の利上げ幅鈍化の可能性が意識されるようになりました。
その後、発表された米国の経済指標が予想を下回るものが続いたため、さらに利上げペース鈍化の可能性を意識するようになり、一時4.3%程度にまで上昇していた米国の長期金利(10年債利回り)は、現段階では3.9%台にまで急低下しています。
(出所:TradingView)
11月2日のFOMCで、複数の委員が今後の景気後退に懸念を示すと、米ドル安の反応へ。米雇用統計と米CPIへの注目度はこれまで以上に
しかし、これで潮目が変わったわけではありません。
まずは、11月1日(火)、11月2日(水)に行われるFOMCです。ここでは、0.75%の利上げが実施されることはほぼ確実です。
問題は、ニック記者の指摘どおり、12月以降の利上げペースについてどういった議論がなされるかということです。
もちろん、それはその後の経済指標の結果次第なのですが、複数の委員が今後の景気後退に懸念を示したりすると、市場は米長期金利低下、米ドル安の反応をすると思います。そこに注目しておいてください。
そして、その後は主要な経済指標の結果に注目が集まります。特に米雇用統計と米CPI(消費者物価指数)、この2つの指標の11月の結果が、12月FOMCの決定に大きく影響します。
利上げ幅が鈍化するのではないかという観測が出ている時ですから、これらの指標の注目度は、これまで以上のものになるでしょう。
米ドル/円の下がったところは、輸入企業の米ドル買いが出てくる。当面の底は145円程度を考えて押し目買い
さて、こうした背景の下、為替市場ではこれまでの米ドル高の修正が入っています。
しかし、これはあくまでもポジション調整によるもので、米ドル安トレンドへの転換ではありません。ちょうど今年(2022年)7月の状況に似ていると思います。
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(出所:TradingView)
今後はFOMC、米雇用統計、米CPIの結果を見て、方向性が決まっていきます。
私自身、米国の利上げはいずれ鈍化してくる、そしてその時、米ドル高相場は終わると常々申し上げてきました。しかし、その議論は先延ばしになったと思い、米ドル高はまだ続くと考えていましたが、思ったより少し早めにきてしまったかもしれないと、現時点ではどちらかの方向への決めつけは控えているところです。
ただ、米ドル/円に関しては、輸入企業の米ドル買い需要はまだまだあると聞いていますので、下がったところでは、米ドル買いが出てくると思います。当面の底は145円程度を考えて押し目買いをするつもりです。
(出所:TradingView)
また、ユーロ/米ドルに関しては、ECB(欧州中央銀行)も昨日(10月27日)の会合で0.75%の利上げを決定したものの、その後のペースを鈍化させる可能性を匂わせているため、1.00ドルより上は売りゾーンと考えています。
(出所:TradingView)
政府・日銀の米ドル売り介入は珍しく効果があったが、それも時間の経過とともに薄れる。米ドル/円の行方は米国の金融政策次第
最後に介入の話を。先週金曜日(10月21日)の深夜と今週月曜日(10月24日)の早朝に、政府・日銀は米ドル売り介入を実施しました。
当局は介入をしたかについてコメントを控えていますが、値動きを見ればわかります。
150円を抜けて急上昇していましたので、そろそろあるかもとは考えていましたが、金曜日の夜中にやるとは想像すらしておらず、完全に虚をつかれました。一本取られた感じです。
(出所:TradingView)
今回は、WSJの記事と同時に出たことで、珍しく効果のあるものとなっています。
また、金額が6兆円と言われていますが、これだけの金額をやれば、短期的に市場の需給を歪める効果もあったと思います。
ただ、この効果も時間の経過とともに薄れていきます。その後、米ドル/円がどう動くかについては、すべては今後の米国の金融政策次第ということだと思います。
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