昨日はアメリカが休みだったので、マーケットは小動き。多少の上下動はあったものの、1日の始値と終値が同じになるくらいに相場は戻ってきている。そして今週注目されているのは、日銀の次期総裁が週の後半に国会で意見を述べることだ。金融政策についてあり方が議論されているが、それにともなう長期金利の上昇について考えてみよう。
国債の利回りが上昇するのを嫌って、日銀は異常な金融緩和を続けているという。金利が上がるのだから企業や家計を苦しめることになるのはもちろんだが、国債の大部分を保有している日銀と政府の場合ではどうだろうか。
大量保有している日銀は国際価格が値下がりするのだから、膨大なキャピタル・ロスを抱えることになる。一方で政府は抱えている1000兆円以上の借金の利息が上がるのだから破綻に向かうかもしれず、これまた苦しいときている。これでは誰でも得をする人がないではないかという構図になる。果たしてそうだろうか。
日銀は国債を買って持っているのだから、立場としてはロングである。一方で政府の方はお金があったら国債を買い戻す宿命にある立場なので国債ショートである。立脚すべきポジションがまったくの反対なのだ。どちらかが得をすれば、もう一方は苦しくなるはず。発行している側とそれを購入している側の双方が苦しくなるとは、何か論理矛盾を含んでいないだろうか。
国債を買って持っているというのは、長期にわたって利回りを固定するということである。だからその間の他の物件への投資機会を犠牲にしているのである。保有中に利回りが上昇したら、それは無駄な投資に長期観に渡ってお金を使ってしまったと言うことで、やはり損失だ。それは債券価格の下落となって現われる。
仮に債券を満期まで保有すれば満額戻ってくるのでロスはないじゃないかという考えもあるが、それでもその間の金利上昇分を享受できていないことに変わりはない。日銀の減資は公的資金なのだから、きちんと運用できていないということでは税金の無駄遣いということになる。
債券の発行体である政府の場合はどうか。これから発行する国債に対しては、確かに利回りが上がると支払い利息も増えるので、利払い負担は増える。しかし金融マーケットでは市場で決まるレートで取引する分にはロスはないと見なす。すぐに反対売買すれば損は出ないので、評価損はゼロだと言うわけだ。市中金利が10% のときに10%で借りても、それは損も得もないということ。負担が増えるというのは借り手の事情であって、金融リスクはない。
それとは変わって既発債の方はどうだろうか。金利が上がっているのだから負債の評価は目減りするのは明らか。江戸時代に何度も行った貨幣の改鋳と同じで、政府の収入になる。政府としてはこの収入分で、将来の負担増をまかなうことになる。
結果として既発債をたくさん持っている日銀が金利上昇において巨額な損失を被り、政府が債務の目減りというメリットを得るのである。
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