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志摩力男の「マーケットの常識を疑え!」

強い米国経済を背景に米ドル/円は128円台から135円へ
上昇!日本の金融政策変更なくして円高はない。岸田政権
と植田次期日銀総裁候補の本音とは?

2023年02月24日(金)19:58公開 (2023年02月24日(金)19:58更新)
志摩力男

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YouTube動画「週刊!志摩力男」では、志摩さんがより注目しているテーマをピックアップし動画で解説します。動画を視聴したら、続けて最新コラムをご覧ください。

週刊!志摩力男


強い米国経済。米10年債利回り上昇を受けて、米ドル/円は135円乗せ

 このところ、米国経済の強さを示す経済指標が続いています。

 NFP(非農業部門雇用者数)が51.7万人もの増加となった1月雇用統計(2月3日発表)、そして予想が前年比+6.2%のところ同+6.4%と上振れしたCPI(2月14日)。

 それだけでなく、予想+1.7%だったところ+3.0%の結果となった小売売上高(2月15日)、これまた予想が+4.8%のところ+5.4%に上振れしたPPI(2月16日)、そして予想では47.5が50.2の結果となった総合PMI(2月22日)というように、強い結果が相次ぎました。

 そしてFOMC(米連邦公開市場委員会)議事要旨では、0.50%利上げを主張した委員が何人かいたことが明らかになりました。

 FRB(米連邦準備制度理事会)のパウエル議長は、FOMC後の会見で「ディスインフレーション」という言葉を使い、米国経済の強さにあまり警戒感を示していませんでしたが、現実の経済指標がパウエル議長の言葉を「上書き」していきました。

 市場の予測するターミナルレート(最終的な政策金利水準)は4.75%から5.25%となり、米10年債利回りは3.3%台から3.9%台へ、米ドル/円は128円台から135円乗せと7円上昇しました。

米10年債利回り 日足
米10年債利回り 日足

(出所:TradingView

米ドル/円 日足
米ドル/円 日足

(出所:TradingView

 米国株は金利上昇の割には、比較的高い値を維持し健闘していましたが、PMI発表後は崩れました。景気が強いことは株価には悪いことではありませんが、企業の将来利益を現在価値に引き直す時、金利が高いと適正な株価は下がります。

 よって新興企業やIT企業と言った、いわゆるグロース株には金利上昇は痛く、水準訂正が必要となってきます。

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インフレ抑制がバイデン政権の最重要課題。景気を犠牲にしてもインフレは抑え込まなければならない

 ターミナルレートが6%となり、ナスダック総合指数が1万ポイント割れとなるような急落があるかもしれない……という予測も出てきました。果たしてそこまで株価が下落するのかどうかはわからないところです。少し前までは、リセッション(景気後退)突入間違いなしと震えていたのに、今は反対に強すぎる景気ゆえに、金利上昇に震えています。

 ある意味、日本から見ると羨ましい光景です。「ノーランディング」(※)という言葉まで踊り始めています。

(※編集部注:「ノーランディング」とは、ソフトランディングでも、ハードランディングでもない状態のこと)

ナスダック総合指数 週足
ナスダック総合指数 週足

(出所:TradingView

 インフレの鎮静化が確認されるまで金融引き締めの状態が続く。その認識は多くの市場参加者が共有しているでしょう。株価を押し下げるぐらいの金利上昇がなければインフレが鎮静化しないのであれば、最終的にはそうなってしまうのかもしれません。

インフレ抑制がバイデン政権のもっとも重要な課題です。次の大統領選挙の時、景気の状況がどうなっているかはわかりませんが、インフレが続いていたとすれば共和党にとって格好の攻撃材料になります。多少、景気をオーバーキルしても、インフレだけは抑え込まなければならないでしょう。

ロシアのウクライナ侵攻から1年。長期化は避けられない状況に…

 米国市場だけを見ていると「ノーランディング」という言葉は説得力がありますが、そんな簡単に世の中上手くいくものではないでしょう。

 もっとも大きな問題が残っています。それは、ウクライナにおける戦争です。

 2月24日(金)でロシアのウクライナ侵攻から1年経ったことになります。プーチン露大統領とすれば、当初の奇襲攻撃によって2~3日ぐらいで終わるはずの戦争でしたが、長期化が避けられない様相になっています。

 ロシア軍の武器や弾薬が尽きるから戦争継続できないはずだとか、所詮ロシアのGDPは韓国程度だから経済制裁に音を上げるはずといった、戦争の最初の頃に言われていた楽観論は間違っていました。エネルギーも食料も自給できるロシアは強靭な国です。半導体が不足しているはずですが、秘密のルートがあるのか、今も次々と兵器を増産しており、ロシアは経済的には潰れないのです。

 一方のウクライナは、西側から必要な分だけ兵器が供給され、さまざまな支援もなされています。兵器のレベルも、当初はジャベリンといった対戦車砲ぐらいでしたが、ドローンやハイマース、そして最新式戦車も供給されるようになり、ある意味ウクライナへの支援は「無限」に近いものがあります。よって、ロシアもウクライナも、なかなか簡単には負けないということになります。

 停戦のためには、双方が納得できる妥協案が必要ですが、国土を失う形での和平案にゼレンスキー大統領が応じることはできないでしょうし、プーチン大統領の方も、奪ったはずのクリミアやウクライナ東部を失う形での妥協はできないでしょう。

 戦闘は、兵器の「質」の面ではウクライナ優位でしょうが、ロシアは「量」で対抗します。そして、ロシアが核大国という事実が状況を困難にします。ウクライナ軍がロシア領に攻め込んで、首都モスクワを陥落させるというシナリオはありえません。

 その前に、核兵器が使用されることになります。核兵器を使うことはプーチン大統領にとって良いことではないでしょうが、敗北よりましです。

 このような残虐行為が続くのを見たいとは思わないのですが、各国首脳の威勢のよい言葉とはうらはらに、戦闘の長期化が避けられないように見えます。

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中国がロシアのサポートに動き始めた。ウクライナ戦争の長期化はバイデン大統領再選に有利?

 そして、このタイミングで中国がロシアのサポートに動き始めました。暗澹たる気持ちとなりました。気球問題で米国から攻勢を受けたこともあるかもしれませんが、中国からすれば、ロシアが敗北した世界は受け入れ難いということでしょう。ロシアがいなくなると、米国は「次は中国」となります。

 ロシアと心の底から信頼しあっているとは思いませんが、ロシアを中国のガソリンスタンドとして確保するチャンスです。中国が最大の支援国となれば、中国への資源売値は、かなり低いものになるでしょう。

 また、戦争が長期化した方が、バイデン大統領再戦には有利でしょう。戦争は、ほとんどのケースにおいて、政権党(与党)に有利に働きます。昨年(2022年)の米中間選挙も、ロシアによるウクライナ侵攻があったこともあり、民主党に追い風となりました。

 バイデン大統領は、戦争が次の選挙まで続いていて欲しいと思っているのではないでしょうか。

戦争が長期化した方が、バイデン大統領再戦には有利。戦争は、ほとんどのケースにおいて、政権党(与党)に有利に働く (C) Scott Olson/Getty Images News

ウクライナ戦争が長期化した方が、バイデン大統領再戦には有利か。戦争は、ほとんどのケースにおいて、政権党(与党)に有利に働く (C) Scott Olson/Getty Images News

国会の承認を得るまではハト派にふるまう?金融緩和の修正が植田次期日銀総裁の本音か

 ロシアとウクライナによる戦争が長期化するとなると、資源価格は高止まりしやすくなります。食料品価格も高いままでしょう。インフレ率は高めとなり、2023年のいずれかのタイミングで、2022年相場を彷彿させる局面が来るのではないかと思います。そうなるとFRBの利上げが続くということになります。

 そうしたことを踏まえると、米ドル/円が円高方向に振れるには、米国の引き締めが続くので、日本側の金融政策の変化がないと難しいということになります。

 本日(2月24日)、植田次期日銀総裁候補の所信聴取が衆議院で行われましたが、国会での承認を確実なものとするには、黒田日銀の政策を踏襲する、継続するという意思を示さなければならず、植田次期総裁候補は首尾よく、それをやり終えました。金融緩和継続を印象付けることに成功したと思います。

 ただ、岸田政権及び植田次期総裁候補の本音の部分では、金融緩和を修正しないといけないと思っているはずです。それがいつ顕在化するのかわかりませんが、円安が進んだ場合、金融政策を変更する可能性は高いと思います。

米ドル/円 週足
米ドル/円 週足

(出所:TradingView

 わかりにくい書き方になりましたが、国会の承認を経るまでは植田氏はハト派として振る舞うでしょう。しかし、ある程度時間が経過すると、本音が出てくると思います。

 そのときは円高になる可能性もあると思いますが、それが3カ月後なのか、半年後か、1年後か、それはまだ定かではありません。


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