金融不安はドイツ銀行へ飛び火
今週(3月27日~)で3月が終わります。
SVB(シリコンバレー銀行)の破たんからクレディ・スイスの救済合併、そして先週(3月20日~)はドイツ銀行の株価急落――。
このところ毎週、金融不安が高まり、当局が対応しつつも、徐々に危険水域へと近づいている印象です。
ドイツ銀行はそこまで中身が悪いわけではない、ヘッジファンドなどの投機筋が仕掛けているだけだ、との指摘もあります。
銀行業界だけの問題ではなく、本質的な金融危機を引き起こすほど悪い状況なのでしょうか。
潰れるほどかどうかはともかく、ドイツ銀行がよくないのはたしかでしょう。
たしかに、金曜日(3月24日)のCDS(クレジット・デフォルト・スワップ)急騰や、株価急落は仕掛けっぽい動きでしたが、クレディ・スイスですら、あっという間になくなってしまう今、安心できる状況とは言えません。
「年末1%利下げ」を織り込む
発端となったSVBの取り付け騒ぎですが、SNSでの煽りが火をつけたとの見方もあります。
ツイッターなどのSNSで煽れば、企業を潰せてしまう時代ですし、特に銀行のように、信用を基盤にするビジネスはもろい。
また、SVBのように、米国債が値下がりしたくらいで潰れてしまうほど、リスク管理が甘い銀行があった、ということも問題です。
そう考えると、金融危機はまだ続くのでしょう。
先週は、FOMC(米連邦公開市場委員会)もありました。
0.25%の利上げは予想どおりでしたが、ドットチャートが5月の利上げを示唆したままだったのは驚きました。
タカ派な印象ですが、マーケットはイエレン米財務長官の発言には反応しても、FOMCにさほど反応しませんでした。
FEDウォッチを見ても、ドットチャートに反して据え置き予想のままです。
(出所:FRB)
マーケットはパウエルFRB(米連邦準備制度理事会)議長を信用していない、ということでしょう。
金利先物市場の織り込みを見ても、7月から下がり始めていて、年末年始には3.75~4%程度の水準となっています。
政策金利は、上げるときは0.25%ずつ細かく刻んでいくのが通例ですが、ショックが起きて下げるときには、一気に1%動かすこともある。
そうした事態を織り込んでいるのでしょう。
利上げ打ち止め、金融不安で有望なゴールド
利下げを織り込み始めたのか、金融不安が高まっても株価は崩れませんね。
ほんのわずかでも緩和姿勢が見えれば、これまでの金融緩和で供給された流動性が株、そしてゴールドへと流れるのでしょう。
過去のサイクルだと、利下げが始まると株価が崩れる傾向があります。
米金利が上がらない、銀行への不安が高まっている、株価も崩れるかもしれないとなると、買われるのはゴールドですね。
足もとでは、2000ドルの大きな節目に差し掛かり上値が重くなってはいますが。
(出所:TradingView)
欧米は利上げ停止、消去法で買われる円
米2年債利回りは一時3.5%台まで急落しました。さすがに下がりすぎですが、反発も弱い。
利上げ停止は、BOE(イングランド銀行[英国の中央銀行])やECB(欧州中央銀行)も同様です。
次回の利上げ織り込みは、ほぼゼロ。
どこもかしこも一斉に利上げ停止となると、どの通貨に優位性があるのか、わかりにくいですね。
そうなると、消去法で円買いということになりますね。
米2年債利回りにしても、一時的な反発はあっても5%へ戻ることはもうない。
今月(3月)の米ドル/円は、137.91円から130円割れまで8円下げましたから、一時的な戻りはあるにしても、そこは売り場となるのでしょう。
今週も、米ドル/円の戻り売りでいいと思います。
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⇒米ドル/円を戻り売り! 米ドルを売るなら、クレディ・スイスの問題がある対スイスフランではなく、米2年債利回りとの相関が高い対円。リスクオフの円買いも復活気味(3月20日、西原宏一&大橋ひろこ)
(出所:TradingView)
金曜日(3月31日)は月末、そして本邦勢の年度末です。
これだけイベントがあったので、リバランスどころではないかもしれません。
ただ、年度末にからむ本邦勢のフローは出るはず。
水曜日(3月29日)、木曜日(3月30日)あたりには予想が出てくるでしょうから、目につくものがあればメルマガで紹介したいと思います。
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⇒西原宏一「トレード戦略指令!」
(構成/ミドルマン・高城泰)
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