YouTube動画「週刊!志摩力男」では、志摩さんがより注目しているテーマをピックアップし動画で解説していますが、今回は5月30日に開催した「ライブ配信!志摩力男」の中から、政府・日銀の為替介入があるのか?そして米ドル/円相場の見通しをテーマにした部分を編集した動画を公開しています。最新コラムとも連動していますので、ぜひご視聴ください。
「財政責任法案」が下院で可決。米国の債務上限問題は事実上終了
「財政責任法案」が下院で可決されたと報じられました。毎回、世界を賑わす米国の債務上限問題ですが、これで事実上終わりました。
上院は民主党が過半数を抑えていますし、有力な共和党議員(ロムニー氏等々)も賛成の意向を示しています。
賛成314票、反対117票、意外に反対票が少なかったなという印象です。
「今年こそは危ない」と大騒ぎされた債務上限問題、結局やっぱり“Political Kabuki”で終わりました(こうしたことに「歌舞伎」という日本語が入るのは、嬉しいような、微妙な感じですね)。ご苦労様でした。
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⇒米債務上限問題はシナリオの決まっている「プロレス」なのか?金融市場が混乱して、リスクオフマーケットになればチャンスか(5月25日、志摩力男)
次は日米の金融政策に移ります。
まず、米国です。6月14日(水)のFOMC(米連邦公開市場委員会)において、0.25%利上げされるのか、それとも打ち止めになるのか、ここが焦点となっています。
5月19日(金)、FRB(米連邦準備制度理事会)のパウエル議長がバーナンキ元議長とのパネルディスカッションで6月利上げ見送りを示唆しましたが、その翌週、すかさずブラード・セントルイス連銀理事が「あと0.50%利上げが必要」と忖度なしの強硬発言をしました。
個人的には「すごいなぁ、ブラードさんは」と債務上限問題よりもこちらの方が気になりました。
その後のマーケットは、パウエル議長ではなく、ブラード総裁を信じるように金利は上昇を開始し、米2年債利回りは4.00%を割り込んでいたのに、5月26日(金)PCEコア・デフレーターが前年同月比+4.7%と市場予想の+4.6%を上回ると、4.60%へと上昇しました。パウエルさんのメンツ丸つぶれです。
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6月FOMCほぼ利上げ確定の雰囲気から、FRB執行部のチームプレーが始まった
CME(シカゴ・マーカンタイル取引所)のFed Watchでも、6月FOMCの利上げ確率は65%ぐらいまで高まり、ほぼ利上げ確定という雰囲気だったのですが、ここからFRB執行部のチームプレーが始まります。
ブレイナード氏の後任として副議長職に昇進することが決まったジェファーソン氏は、優秀なエコノミストですが、5月31日(水)に6月利上げを「スキップ」しても良いのではないかとスキップ論をぶち上げました。さすが副議長、議長をサポートします。
その1時間後には、ハーカー・フィラデルフィア連銀総裁も、同様の趣旨の発言をします。連携プレーですね。これでチーム「スキップ」はマーケットの利上げ織り込みを大きく引き戻すことに成功し、本稿執筆時点の6月利上げ確率は32%へと低下しています。
ここで、FRB理事の誰がどの政策を支持しているのか、整理したいと思います。FOMC議事要旨でも、利上げ派の数と、据え置き派の数、どちらが多いのか、SOMEとSERIALどっちが多いのか?ということが話題になりましたが、FOMC議事要旨ではSOME>SERIALです(この件に関しては、前回の当コラムで解説しました)。
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(※筆者作成)
こうしてみると、たしかに拮抗しています。しかし、パウエル議長、ジェファーソン副議長が「スキップ」支持というところが大きく、おそらくウィリアムNY連銀総裁辺りがチーム「スキップ」に寄り添って、6月利上げなしということになるのではないか?と感じます。NY連銀総裁はFOMCでは議長を支える副議長となります。
米ドル/円は150円ぐらいが為替介入のメドになるか
さて、日本の金融政策の方は、植田日銀総裁が金融緩和を堅持すると主張されたので、その後、円安が進んでいます。しかし、5月30日(火)に突然、財務省・金融庁・日銀による「3者会合」が開かれ、米ドル/円は141円近辺から叩き落されました。
「3者会合」が開かれるタイミングとしては早いのではないか、海外のトレーダー筋からは意見を求められました。昨年(2022年)のケースで考えると、最初に3者会合が開かれたのが6月10日、134.20円前後でした。数時間後に133.35円前後まで下げましたが、その日の引けは134.40円なので、3者会合の効果はあまりありませんでした。むしろ、無視されています。
【※関連記事はこちら!】
⇒米ドル/円は150円超の円安も覚悟か。円買い介入は無限ではない。投機筋とガチンコ勝負しても、日本の当局に勝ち目なし(2022年6月15日、志摩力男)
しかし、9月8日に次の3者会合が開かれ、その2週間後に145.90円で最初の介入が行われました。それを考えると、あと10円ぐらい米ドル/円が上昇すれば介入もあるということになります。150円ぐらいでしょうか。
海外勢は、昨年(2022年)の介入で痛手を被ったプレーヤーが多かったのでしょう。今回の3者会合のニュースはそれなりの「リスペクト」でもって受け止められています。しばらく、141円前後がレジスタンスとなりそうです。
(出所:TradingView)
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円安を止めるには日銀の政策を変更するしかない。6月の日銀金融政策決定会合に注目
ただ、本気で為替(円安)を止めるには日銀が政策を変更するしかありません。その意味では、6月14日(水)のFOMC後、6月16日(金)に行われる日銀金融政策決定会合が注目されます。
YCC(イールドカーブ・コントロール)変更について、先日、植田総裁が言及されましたが、政策変更の可能性は低くはないでしょう。なぜなら、はっきりとは総裁は言いませんが、為替のレベルこそが重要だからです。
特に、岸田政権が総選挙を考えているはずです(不謹慎ですが、7月8日の安倍首相一周忌直後ぐらいの可能性が高いかなと思います)。
その意味でも、過度に円安進行しないように、政権サイドでも根回し的なものはあるかなとは思います。
(出所:TradingView)
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