過去1カ月、対円以外で米ドルはじり安に推移
みなさん、こんにちは
米ドル/円を中心に相場を組み立てていると、「米ドル強いなあ」と思いがちですが、ここで主要通貨の動きを確認してみましょう。
下図が、過去1カ月の主要通貨の対米ドルの騰落率です。対円以外は全て米ドル安です。
米ドル高になっているのは見事に米ドル/円のみ。
各主要通貨間の強弱はある程度理解できますが、FRB(米連邦準備制度理事会)がピボット(政策転換)しているわけでもないのに、対円以外の主要通貨に対して米ドル安が続いているというのもピンとこないところ。
基本、米ドル弱気の参加者は、この動きに呼応して、タイムラグを伴って米ドル/円でも米ドル安が来るのではという予測を立てています。
しかし今年の米ドル/円は年初はレンジで、それ以降は総じて米ドル高に進んでいます。
結果クロス円が続伸しているだけなので、米ドル/円が急落するとも考えにくい。
そのクロス円ですが、このコラムで注目しているスイスフラン/円は、先週も史上最高値を更新しており、一時161.65円まで上昇。
(出所:TradingView)
カナダドル/円も、英ポンド/円も、そして豪ドル/円も軒並み上昇しています。
では、スイスフラン/円も含め、今後どの通貨ペアが値を伸ばすのか、チェックしてみましょう。
世界の外貨準備資産の中でユーロの人気が低下
ここで世界の外貨準備の変化をチェックしてみましょう。
下図は、今年第1四半期の、世界の外貨準備資産の各通貨の増減。
(出所:Bloomberg、IMF)
このチャートによれば、世界の外貨準備資産の中でユーロの人気が急低下していることがわかります。
為替レートの変動と年限の短い国債のリターンを調整したIMFの最新データによると、世界の外貨準備は第1四半期に過去最高の926億ドル(約13兆3900億円)相当のユーロ資産を売却したと推計される。これはポンド建て証券の売却額の約6倍に相当する。
(出所)Bloomberg
ユーロは引き続きロシアのウクライナ侵攻による地政学リスクに直面していることが影響しています。
英ポンドは粘り強い英国のインフレに苦しんでいることがマイナス要因です。
中国人民元は5四半期連続で売られ、まだ有力な基軸通貨と見なされていないことを示唆。
円はこうした資金の受け皿となってプラスになっているようですが、流入した資金の多くは為替ヘッジ付きとみられ、円安を緩和する効果はほとんどなかったとブルームバーグは分析しています。
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外貨準備は豪ドル、カナダドル、スイスフランへ
そしてプラスになった外貨準備は、豪ドル、カナダドル、スイスフランとなっています。
これは年初来から対円で上昇を続けている通貨ペアでもあります。
ユーロ/円は前述の通貨同様上昇していますが、外貨準備としての魅力は落ちているようです。
一時ユーロは米ドルに変わる基軸通貨ともいわれていましたが、米ドルに変わる基軸通貨とはなりそうもありません。
それは中国人民元でもなく、米ドルからユーロ、そしてスイスフラン、カナダドル、豪ドルに分散していくのだと考えています。
この意味において、引き続き、スイスフラン/円、カナダドル/円、そして豪ドル/円の底堅さは続くのではないかと見ています。
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米ドル/円は高値を追わず徹底した押し目買いで
一方、こうしたクロス円の影響もあり、米ドル/円は底堅く推移していますが、今月に入ってのレンジは143.99円~144.91円と1円も動いていません。
米ドル/円の上昇を抑えているのが日銀の存在。
過去のコラムでも取り上げていますが、昨年(2022年)日銀が初めて介入を実施した時の米ドル/円のレベルは145円台。2022年9月22日で介入額は2.8兆円でした。
当局は、米ドル/円の水準ではなく、円安のスピードを懸念していると報道されていますが、参加者はどうしても145円という水準を気にしています。
(出所:TradingView)
加えて、米ドル/円の145.00円はFXオプションのガンマトレードによる米ドル売りも持ち込まれており、今月(7月)に入ってレジスタンスとなっていますが、144.00円レベルに反落するとオプションマーケットから米ドル買い戻しの動きも入り、動きにくくなっています。
結果、米ドル/円は高値を追わず徹底した押し目買い方針で。
世界の外貨準備資産の中の動きから、今月も引き続き豪ドル/円やスイスフラン/円も上値を追う展開になるのではないでしょうか?
では、今月もよろしくお願いします。
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