ドルインデックスの切り返しを拡大解釈すべきではない
ドルインデックスは、切り返しを果たしている。一時99.5に迫ったが、米長期金利の反騰とともに、目先100台後半まで回復し、何とか「底割れ」を回避したように見える。
(出所:TradingView)
米7月利上げ自体を否定するような予測がほとんどないにもかかわらず、米ドルの切り返しを拡大解釈する声がまた聞こえてきた。「今月も利上げするから米ドルが買われた」という見方は、幼稚すぎて反論の必要もないと思うが、今月(7月)の利上げが最後になるといった論調にも注意が必要だ。
なにしろ、仮に7月の利上げをもって米利上げ周期の終焉があっても、米ドル買いの根拠にはならないだろう。昨年(2022年)11月から、米利上げの進行と米ドル全体のパフォーマンスがかなり乖離してきたから、今さら利上げ休止を持ち出し、米ドル買いの理由として説明されても困る。
反面、相場は常に先行するものだから、「利上げが進行しているうちに米ドルが売られてきたから、逆に利上げ停止になれば米ドルは買い戻されるだろう」といった理屈が「合理的」に聞こえる。先に注意したのも、このような理屈による論調だ。
結論から申し上げると、筆者はそのような論調に同意できない。確かに、2023年年初来、米利上げが進行中の米ドルは強くなかったが、ドルインデックスは今年(2023年)2月にもすでに100台後半をトライしたので、目下のレートと大した差がない。
(出所:TradingView)
言ってみれば、米ドルは売られてきたとはいえ、2023年年初の水準と大した差がなく、利上げ休止を見越した米ドル売り自体、行きすぎた現象ではなかった。
ゆえに、その反動となる米ドルの買い戻しは、言われるほど見られないと思う。
先週(7月10日~)の米ドルの急落で、2023年年初来のサポートライン(2月、4月、5月安値)を割り込んだばかりなので、これから下値余地を拡大するだろう。
(出所:TradingView)
つまるところ、目先の米ドル全体の切り返しは、単純に下落途中におけるスピード調整にすぎず、大げさな解釈は不要だと思う。
だいぶスピード調整を果たした英ポンドは、これからブルトレンドに復帰しやすい
おもしろいことに、スピード調整のニーズがある時には、ファンダメンタルズ上の材料が拡大解釈される傾向が強い。
今週(7月17日~)以降、英ポンド/米ドルは一貫して反落し、7月19日(水)に下落幅を拡大したが、6月CPI(消費者物価指数)が6.9%に留まったことが売りの根拠として解釈された。
(出所:ゴールデンウェイ・ジャパン)
もちろん、予想はより高い数字だったから、予想に届かず、利上げ観測の後退で売られたといった理屈自体は問題ないと思うが、ごく短期の変動にこだわりすぎると、本質が見えなくなる恐れが大きい。
言ってみれば、英6月CPIの数字自体はかなり高い。想定より低かったとはいえ、数字自体をもって英利上げ停止云々を予測できないはずだ。
あたかも英利上げ周期がもう終焉したかのように騒いだり、英ポンド売りを正当化するような論調は、やはり短絡すぎると言わざるを得ない。
英ポンドは先週(7月10日~)1.3ドル超の高値までほぼ一本調子の上昇を果たし、2022年4月以来の高値を更新していた。
(出所:TradingView)
英利上げ加速の観測が大きな背景であれば、それに沿った形でロングポジションの積み上げも容易に推測され、短期間で上りすぎたところでスピード調整が必要になってきたわけだ。
ゆえに、昨日(7月20日)までの続落もあって、英ポンドは大分スピード調整を果たしたと見られ、かえってこれからブル(上昇)トレンドへ復帰しやすいかとみる。
強調したいのは、個々の材料をもって短期間における変動を解釈できても、大きなトレンドにおける位置を間違って解釈すべきではない。
米ドルの買い戻しは、目先どんな理由であれ、大きな下落トレンドにおけるスピード調整なので、本格的な米ドル買いとして解釈すべきではない。
米ドル/円の上昇もあくまでスピード調整にすぎないだろう
同じ理屈は米ドル/円にも通用するだろう。昨日(7月20日)いったん140円台半ばをトライし、これからさらなる切り返しの余地を拡大すると思うが、あくまでスピード調整にすぎず、大げさな解釈は適切ではなかろう。
(出所:TradingView)
145円を起点とした下落波は、推進波動としてすでに始まった公算が高く、戻り余地があっても限定されるだろう。
一方、英ポンド/米ドルの連日の急落に見られるように、通貨ペアごとに調整波の進行に差が見られる。
来週(7月24日~)の日銀会合での政策修正の観測が低下しているなか、米ドル/円の切り返しがより長く続く可能性が大きいだろう。
クロス円はこれから再度高値トライの機運が高まりそう
対照的に、前述の英ポンド/米ドルの例を見るとわかるように、英ポンドなどの外貨対米ドルの反落が、むしろやや行きすぎのように見えるから、英ポンド/円などクロス円(米ドル以外の通貨と円との通貨ペア)の上昇が期待できると言える。
(出所:TradingView)
大きなトレンドとして、主要クロス円における外貨高・円安のトレンドはなお維持され、これから再度高値トライの機運が高まるだろう。
来週(7月24日~)の日銀会合次第といった話が多いが、あえて言うなら、相場は今回の日銀会合の政策維持を折り込みつつあるように見えるから、日銀政策は不変の公算が大きい。市況はいかに。
15:00執筆
※来週(7月28日)のコラムは事情により1回休載いたします。
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