日銀観測記事で円安へ
今週(7月24日~)は、中銀ウィークですね。
7月26日(水)深夜にFOMC(米連邦公開市場委員会)、7月27日(木)にECB(欧州中央銀行)理事会、7月28日(金)に日銀会合(日銀金融政策決定会合)と続きます。
先週金曜日(7月21日)には、ブルームバーグから観測記事が出ました。
「日銀は現時点でYCC副作用に対応の緊急性乏しいと認識-関係者」とのタイトルです。
これを受けて、YCC修正期待で売られていた、日本国債のショートカバーが始まったのか、YCC(イールドカーブコントロール)上限の0.5%に接近していた10年債利回りは急落し、米ドル/円は上昇しました。
(出所:TradingView)
(出所:TradingView)
ヘッドラインで為替が動いたので、金利がついていかざるを得なかった、という側面もあると思います。
このところ日銀会合前には、こうした観測記事で動くのがパターン化してきましたね。
日銀「現状維持」の思い込みは禁物
ブルームバーグの記事で、YCC修正期待は収束していますが、今回の会合で、YCCの修正・解除が絶対にないかというと、そうではないと思います。
YCCを解除するには、いい環境ではあるんですよね。
米金利が上がっているなかで解除すると、日本の金利も急騰してしまうリスクがありますが、今は幸い落ち着いていますから。
黒田さんのようにサプライズ的にやりたいのであれば、今のように「今回は据え置きだろう」という雰囲気だと、逆になにかやる可能性も出てくるのかと思います。
日銀発表と同じ日の朝には、東京都区部のCPI(消費者物価指数)も発表されます。日本全体のCPIの、先行指標的な役割もある経済指標です。
6月は前月比+3.2%でしたが、7月分は+2.9%と低下する予想。
インフレがピークアウトしているなら、今回どころか来年(2024年)まで動かない可能性もあります。
持続的な賃金上昇を確認するなら、やはり来年ということにもなります。
今回YCCを修正するのか、しないのか、どちらの可能性もありそうですね。
このところ、日銀会合でのボラティリティが高まっています。
事前に予測してポジションを取らず、流れが決まったあとにエントリーしても、2波、3波目には十分間に合います。
先入観を持ってエントリーして、逆にいってしまうと動きにくくもなりますから、ポジションを持たずに日銀を迎え、結果を見てから判断してもいいのではないでしょうか。
米インフレは収まったのか
1米ドル=145円から137円までの下落は、半分がYCC修正期待、もう半分が米金利低下によるものだったと思います。
ブルームバーグの記事で修正期待が剥落して、半分が取り戻された、という印象でしょうか。
下落に対する半値が141円付近なので、オーバーシュートはしていますが。
(出所:TradingView)
残るのは米金利ですが、今回のFOMCは0.25%利上げが確定的です。
あと1回の利上げがあるかどうか、そして利下げがいつから始まるのか、が焦点ですね。
米インフレは収まったような雰囲気ですが、目標とする2%には達していませんし、ボルカー時代のようにしつこく続く可能性もありますよね。
利上げは今回、ないしはあと1回で終わるにせよ、利下げの開始時期が来春から夏へと遠のいていき、金利が高止まりする可能性は十分にありますね。
ECB理事会はハト派となるリスクも
ECB理事会も、今回は0.25%利上げの見通しですね。
金利先物市場の織り込みを見ると、1.8回の利上げ。つまり、今回に加えて、9月か10月にあと1回の利上げを織り込んでいます。
ただ、要人発言のトーンには変化を感じますね。
特に、ドイツ連銀総裁のナーゲルさんは「あと数回の利上げが必要」としていたのが、先週には「一段の利上げ決定はデータ次第」とトーンを弱めています。
記者会見や声明文は、意外とハト派に寄るのかもしれません。
IMM(国際通貨先物市場)ポジションでは、ユーロの買い越しが高水準に積み上がっていますから、買いポジションの解消が始まって、ユーロ安に向かうリスクも考慮しておきたいですね。
(詳しくはこちら → IMM通貨先物ポジション/経済指標・政策金利)
金曜日のクロス円(米ドル以外の通貨と円との通貨ペア)を見ても、スイスフラン/円は高値をはっきり更新したのに対して、ユーロ/円は6月高値の158.00円を5銭抜けただけで跳ね返されました。
短期的なレンジを上抜けたユーロ/米ドルですが、そう大きくは上がれないのかもしれません。
(出所:TradingView)
(出所:TradingView)
(出所:TradingView)
スイングポジションは、日銀会合を待ってから判断を
今週の戦略はどう考えますか?
中期的にクロス円を買っていく戦略は変えていませんが、今週(7月24日~)は日銀会合で大きく動く可能性があります。
FOMC、ECB理事会と続きますが、大きなポジションを取るかどうかは、最後の日銀会合を待ってから判断したいと思います。
(構成/ミドルマン・高城泰)
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