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志摩力男の「マーケットの常識を疑え!」

ジャクソンホール会議では「自然利子率上昇」が
話題となるか。不動産大手・恒大集団が破産申請!
中国リスクが顕在化すると為替相場はどう動く?

2023年08月20日(日)08:14公開 (2023年08月20日(日)08:14更新)
志摩力男

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 記事では、4~6月にターニングポイントとなったトレードも振り返っているので、志摩さんが、なぜFXで勝ち続けることができるのか知りたい人はぜひご覧ください。
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FXプロトレーダー・志摩力男の本領発揮!4~6月の米ドル/円メルマガトレード利益は800pips超え!年間収益1300pips突破! FXで勝ち続ける極意とは?


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米金利の上昇を支えに、米ドル/円は一時146.56円へ上昇

 今週(8月14日~)も米ドル/円は堅調に推移しました。高値は146.56円。

背景にあるのは米金利の上昇です。30年という超長期金利が上昇の中心となり、先週(8月7日~)FOMC(米連邦公開市場委員会)議事要旨発表後に4.42%まで上昇しました。10年も4.32%、2年は一時的に5.00%を超えましたが、その後、4.9%台に軟化しています。

米30年債利回り 日足
米30年債利回り 日足

(出所:TradingView

 では、前回のコラムにも書きましたが、どうして米金利が上昇するのかと言えば、いろいろ要因はありますが、基本的には米国経済が強いからでしょう。
【※関連記事はこちら!】
米ドル/円はいずれ145円を超え、また介入との戦いになる可能性が高い! 日米金利差によるスワップ金利の拡大で、米ドル/円の売りは短期にならざるを得ない(8月10日、志摩力男)

 アトランタ連銀が出しているGDP NOWは5.8%となっています。どこかの新興国みたいな数字です。

アトランタ連銀が提供しているGDP NOW
GDP NOW

(出所:アトランタ連銀

 FRB(米連邦準備制度理事会)は金融引き締めをずっと続けて、ついに5.25%まで政策金利が上がってきました。それにも関わらず、経済が再加速しているというのは(本当に、羨ましい限りです)どういうことなのか? それに対する疑問が湧いてきます。

 「米国の自然利子率(中立金利)が上昇したと考えるしかないのではないか」

 8月10日(木)、NY連銀のサイトに掲載されたブログが話題を呼びました。そして、この自然利子率の上昇が、ジャクソンホールで開催される経済シンポジウムにおけるテーマになるかもしれないとウワサされています。
【※関連記事はこちら!】
ジャクソンホール会議が行われる建物はジャクソンホール? なぜ、ジャクソンホールは世界中のトレーダーの注目を集めるのか?

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ジャクソンホール会議で話題になるとウワサされる「自然利子率」とは?

 もし自然利子率(中立金利)が上昇していると認識されたらどうなるのでしょう。

 この自然利子率というのは「経済を熱しも冷ましもしない金利」とされています。すなわち、景気に中立的で、インフレにもデフレにもならない実質金利、別の言い方をすれば、マクロで投資と貯蓄をバランスさせる実質金利となります。

 自然利子率は推計値でしかありません。実際には見えないものですが、FRBは現状これを0.5%と見ています。インフレ率が2.0%なら、名目の自然利子率は2.5%となり、これがFOMCで発表されるドットプロットのLonger Runの数字になります。

 2023年6月会合におけるドットチャート(ドットプロット)ですが、Longer Runの数字は2.5%になっています。

2023年6月開催FOMCのドットチャート
2023年6月開催FOMCのドットチャート

(出所:FRB

 仮にLonger Runの金利が0.5%上昇して3.0%になった場合、どうなるのか? 

 長期的に均衡すべき金利が0.5%上昇したとすれば、米国の長期金利も0.5%程度上昇する可能性があります。8月10日(木)以降、再度米長期金利に上昇圧力がかかっているのは、このことが理由ではないかと思われます。その影響で米ドル/円も上昇しました。

(※筆者提供)

 先ほども少し紹介しましたが、"Structural Shifts in the Global Economy"と題されたジャクソンホール会議は8月24日~26日に行われます。パウエル議長の講演は25日午前10時5分(日本時間23時05分)と発表されています。

 反対に、ジャクソンホール会議でそれほど自然利子率(中立金利)の話題が出なかったとすれば、米ドルの上昇も少しは和らぐかもしれません。

米ドル/円 日足
米ドル/円 日足

(出所:TradingView

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中国不動産大手の恒大集団が米国で破産申請。マーケットは中国リスクをほとんど織り込んでいない

 ただ、その一方で、気になるニュースも飛び込んできました。中国の不動産大手、恒大集団が米国で破産申請しました。また、中国不動産最大手、碧桂園(カントリーガーデン)にも資金繰り懸念が浮上しています。

 中国経済は不動産セクターがGDPの30%を占めるという歪(いびつ)な経済です。普通の国は10%前後でしかありません。

 これまで中国経済は不動産開発をテコに成長してきましたが、あまりにも不動産価格が高くなりすぎたため、「共同富裕」を掲げる習近平政権は「住宅は住むためのもので、投機の対象ではない」として不動産規制をしてきました。そのため、不動産開発業者が経営不振に陥るケースが目立ってきました。

 中国の不動産市場は、米国株、米不動産市場を上回る、世界最大の資産市場です。推定になりますが、市場規模は62兆ドル、「1ドル=145円」で計算すれば9000兆円。日本のバブル崩壊の時、土地の時価総額は約2000兆円と言われていましたが、その4~5倍の規模です。

 中国の過剰レバレッジを解消するのは、相当の難題でしょう。不動産セクターだけでなく、地方政府の債務、地方政府傘下のインフラ投資会社「融資平台」、その他、表にはでていないさまざまな隠れ債務等を入れると、ものすごい規模になります。

マーケットはこの中国リスクをほとんど織り込んでいません。

 まず市場は人民元安で反応していましたが、中国当局は人民元安を力で抑え込むことにしたようです。

米ドル/人民元 日足
米ドル/人民元 日足

(出所:TradingView

 しかし本来であれば、中国は金利を下げ、通貨安に誘導し、債務者の負担を減らし、デフレに陥らないようにすべきです。キャピタルフライト(※)を恐れたのでしょうが、いずれやってきます。

(※編集部注:「キャピタルフライト」とは、資本がある国から別の国に逃避すること)

 今は、米国経済も絶好調、金利も高く、米ドル高・株高ですが、この状況は中国リスクが顕在化した時、180度転換する可能性があります。

 日本にも影響があります。リスクオフの円高になる可能性もありますが、中国経済が急減速すると、関係している企業の業績は当然落ち、日本経済は減速し、日本株には下落圧力がかかります。

日経平均 日足
日経平均 日足

(出所:TradingView

 金融政策の正常化への道は遠のき、円売りになる可能性も高いと思われます。どのように中国危機が顕在化するのか、その状況次第でしょう。


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