強すぎる米ドル! だが、長く続くとは思わない
米ドルは強い。強すぎるかもしれない。
もちろん、それは短期スパンの話で、またその強さが長く続くとは思わないから、今は「出尽くし」の段階にあると、改めて確認しておきたい。
ドルインデックスは今週(9月4日~)も続伸し、昨日(9月7日)105の節目をブレイクし、105.21を打診した。今晩、(9月8日)大きく下がらない限り、7月後半から実に8週連続の上昇(週足では8陽連)が確定し、2014年以来の陽連(週足)となる。
(出所:TradingView)
米ドル全体の強さが想定より長引いたわけは、いろいろ解釈されているが、肝心なところはやはり「米景気の好調」と「米長期金利の上昇」、この2点に帰趨するだろう。
リッセション、リッセションと、昨年(2022年)からウォール街はうるさいほど言ってきたが、見事に外れてきたぶん、米長期金利(米10年物国債利回り)の上昇(国債下落)も想定以上に続き、米ドル買いにつながったわけだ。
もっとも、つい1カ月半前、ドルインデックスは99前半まで急落し、2022年4月以来の安値を打診したばかりだ。米10年物国債の急落がロング勢の損切りによってもたらされた現象と言えるのと同様に、ドルインデックスの急騰は、裏を返せば、ショート筋の狼狽買戻しが推測され、またその結果であると言える。
(出所:TradingView)
言ってみれば、ウォール街の予測が外れて、米長期金利の急伸が予想外だったから、ポジション調整が主導の市況が、大分、形成されたわけだ。
サプライズがあれば、そのサプライズに行きすぎた値動きをもって反応するのも相場の常であり、これからどうなるかは前のサプライズをもって測れないとも言える。
言いたいことは、1つだ。大幅急伸してきたからと言って、米ドルはこれからも大幅に上昇していくとは限らない。
7月後半からのドルインデックスの急騰は、あくまで昨年(2022年)高値114.42から急落してきた分に対する反動、すなわち調整であり、メイン変動自体は変わっていない。
(出所:TradingView)
そればかりか、途中の調整子波が激しければ激しいほど、実は一時に留まり、長く続かない可能性が大きい。
前述のように、米ドル全体の急伸が、米ドルのショート筋が踏み上げられた結果であれば、もう一巡したから、これからの上値余地は限られる、ということも推測される。
米ドル全体の行きすぎが目立ち、ここからの上昇は容易ではないか
では、新たな米ドルロング筋主導の上昇はないのかと聞かれると、それは容易ではないと答える。なぜなら、米長期金利の上昇と連動して米ドル全体が買われてきた分、目先、米ドル全体の行きすぎが目立つからだ。
なにしろ、ドルインデックスは昨日(9月7日)高値更新していたが、米10年物国債利回りは4.3%の節目をいったん打診したものの、8月22日(火)の4.366%を超えなかった。
(出所:TradingView)
8月の高値は、いったん昨年(2022年)高値を更新していただけに、ドルインデックスの切り返し自体は米金利との連動で説明できたものの、正当化するには限界があったと思う。
前回(9月1日)のコラムでも指摘したように、105の節目の打診があっても、ドルインデックスは昨年(2022年)10月後半(米10年国債利回りの高値時期)の水準(≒112)より大分、下にある。
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(出所:TradingView)
米ドル上昇の主因が米長期金利の上昇に帰趨するなら、実は、米長期金利の5.6%以上への大幅な続伸がないと、これから米ドルの大幅上昇を想定できない。
もちろん、現実的な感覚で言えば、米長期金利の、現在のFF(フェデラル・ファンド)金利を上回るほどの急伸はありえない。米ドルの大幅続伸が、米長期金利のさらなる急騰を伴うなら、「悪い米ドル高」のほかあるまい。
しかし、米株式市場のパフォーマンスから考えると、調整はあったものの、総じて堅調であり、また、いつになるかはわからないが、史上最高値を更新していく地合いを整えているように見える。
日経平均も本日のメジャーSQ(特別清算指数)後、大きく反落してきたが、それでも一時3万3000円を回復し、底固く推移していることがわかる。
つまり、「悪い米ドル高」の可能性は完全に否定できないものの、現時点ではかなり低いと思われる。
むしろその逆で、米長期金利の頭打ちが、もしかしたらもう確認できた上に、株式市場が堅調であることにより、米ドルの急伸がもたらされる要素は少なく、諸外貨の売られすぎも、そろそろ解消されるだろう。
米ドル/円の頭は徐々に重くなるのではないか
当然のように、諸外貨のうち、円はなお最弱の地位を保っているから、米ドル全体の頭打ちがあっても、円が積極的に買われるわけがない。
米ドル/円は、いったん148円の節目手前まで迫ったため、当局の口先介入を招いたこと自体、円が売られやすいことを示唆している。
(出所:TradingView)
ゆえに、米ドル/円は介入への警戒でなかなか高値更新しにくいと思うが、積極的な米ドル売り・円買いも見られないかもしれない。
先日は当局の介入を期待して「先回り」して円買いを仕掛けたミセス・ワタナベさんもそれなりにいたと思うが、いったん踏み上げられたぶん、今は静かになっているか、とも推測している。
だからこそ、実は米ドル/円の頭が徐々に重くなるのではないかと思う。なにしろ、逆張り派の減少自体、これから踏み上げの土台が少なくなっていると言えるから、当局の介入なしでも米ドル/円の頭打ちが形成される可能性がある。
(出所:TradingView)
介入なしという前提なら、実はクロス円(米ドル以外の通貨と円との通貨ペア)の方が買われやすいとも思い、円売りならクロス円の方がなお王道ではないかと記しておきたい。
詳細はまた次回、市況はいかに。
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