「年内にもマイナス金利解除」の可能性
今朝(9月11日朝)の米ドル/円は、1円近い下窓で始まりました。
土曜日(9月9日)の早朝に出た、植田日銀総裁のインタビュー記事が原因ですね。
「マイナス金利の解除後も物価目標の達成が可能と判断すれば、(解除を)やる」と話しています。
(出所:TradingView)
日本の10年債利回りも0.7%台へと上昇しました。2014年以来の高水準です。
(出所:TradingView)
ところが今朝、日銀から臨時オペの通達はありませんでした。
為替市場での円安も意識しているということでしょうか。
そうなのでしょう。
臨時オペを打たないといことで、当局として円安を容認しないスタンスを示した、との見方もできます。
介入の代わりとしての植田発言?
円買い介入の可能性はどう考えていますか?
「円買い介入が入るなら150円台」がコンセンサスでしたから、いくら鈴木財務相や神田財務官が円安けん制発言を出しても、効かない。
そのため今回、日銀と連携して円安を抑え込んだ、と解釈しています。
金融政策転換への思惑は、「注視している」「あらゆる選択肢を排除せず」よりも効きますから。
日本の金利が実際に動きますからね。
ただ、今週(9月11日~)は9月13日(水)に米CPI(消費者物価指数)、来週(9月18日~)、9月20日(水)にはFOMC(米連邦公開市場委員会)が控えています。
こうしたイベントで米金利が下がり、米ドル/円が落ち着いてくれればいいのでしょうが、急騰すれば円買い介入が入る可能性もありそうですね。
当局の発言を聞いていると、いつ入ってもおかしくないとは思います。
ただ、ドルインデックスが上がり始めているこの局面で、介入して効くのかどうかは疑問です。
入るとしたら、やはり150円台なのかなとも思います。
株式市場への見方は割れるも、中国弱気はコンセンサスに
世界の主要銀行で、最後まで大規模緩和を続けていたのが日銀。
最後の砦だった日銀まで方向転換すれば、世界的な過剰流動性への安心感がなくなり、株式市場が崩れる、との指摘もあります。
発想としてはそうなりますね。
株式市場に対しては、ゴールドマンサックスはまだ強気だし、モルガンスタンレーは弱気。見方が割れています。
ただ、共通するのは、どちらも歯切れが悪く迷いが感じられること、それに中国経済への弱気な見方です。
メルセデス・ベンツグループのCEOも「中国経済は30~40年にわたる驚異的な成長を経て、成熟の域に達しつつある」と話しています。
2年前に「今後10年は当社にとっておそらく最大の絶対的な成長機会」と話していましたから、急転換です。
利上げサイクルの終わり近づく英国
今朝の窓開けには、FEDウォッチャーとして有名なニック・ティミラオス記者の、WSJの記事も影響しているようですね。
インフレ率に急速な低下の兆候が見られ、9月FOMCは据え置き、その後の利上げも慎重に検討する、といったツイートが話題になりました。
いずれにせよ、来週、9月20日(水)のFOMCは据え置きでしょうし、11月の織り込みも大きく変わっているわけではありません。
大きく変わったのは英国ですね。
7月初旬時点では、ターミナルレート(利上げの最終地点)は6.5%とも予想されていましたが、先週(9月4日~)、ベイリー英中銀総裁はインフレが著しく下がる公算が大きいとして、利上げサイクルの終了に「かなり近づく」と話しています。
今の織り込みを見ると、まだ1回強の利上げは織り込まれていますが、さらに低下する可能性もあります。
英国は、ファンダメンタルズがころっと変わってしまうことがあるから怖いですね。
今週はユーロ/円の戻り売りを中心に
英ポンドは7月まで大きく上昇していましたが、足もとでは下落が加速しています。
ECB(欧州中央銀行)理事会が控えるユーロはいかがですか。見方は割れていますが、どちらかといえば据え置きに傾いています。
(出所:TradingView)
インフレ率はいまだに高いのですが、中国経済への不安もあり、利上げは難しいのではないでしょうか。
それもあって、ユーロは弱気方向で見ています。
今年(2023年)の円安を引っ張ってきたのはクロス円(米ドル以外の通貨と円との通貨ペア)、なかでもスイスフラン/円でしたが、失速気味です。ユーロ/円も160円をつけられずに反落してきました。
クロス円の調整で、米ドル/円も下へ引っ張られる可能性があり、今週はユーロ/円の戻り売りで臨みたいと思います。
(出所:TradingView)
(出所:TradingView)
(構成/ミドルマン・高城泰)
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