日銀会合通過も、さほど買われない米ドル/円
米国やスイス、英国、そして日本などの金融政策発表が続いた中銀ウィークが終わりました。
これまでは、日銀会合(日銀金融政策決定会合)を通過すると、安心感から米ドル/円、日本株が買われる流れがありました。
ところが、今回はここまでさほど上がっていません。
介入警戒感があるからでしょうか?
そうですね。下がったところは買われますが、年初来高値の水準だと、上値を積極的に買う人はいません。
(出所:TradingView)
「急騰」せずとも「水準」で介入する可能性あり
イエレン米財務長官からは、為替市場の急激な変動を抑えるスムージング・オペレーションであれば、容認するといった趣旨の発言がありました。
本邦当局の発言も、すでに警戒直前のレベルに達しており、額面どおりに受け取れば「今この瞬間に介入が入ってもおかしくない」と感じさせます。
スムージング・オペであれば、ボラティリティをともなった急騰でないと介入できませんが、もはや水準で入ることもありえますか?
このままジリジリ上がっていくと、介入するきっかけがないですから、あるかもしれません。
「年間で●%の急騰」など、なんらかの理屈はつけるのでしょうが、150円、155円といった水準に達したら、ボラティリティをともなわなくとも要警戒でしょう。
UAWストライキ、余波は金融市場へ及ぶか
FOMC(米連邦公開市場委員会)では、タカ派なトーンが目立ちました。
四半期経済予測では、年内はあと1回の利上げが示唆されています。
ところが、FEDウォッチを見ると、織り込みが進んでいないのが不思議です。
織り込みを細かく見ると、11月は据え置き、12月は0.5回ですから、年内の利上げ織り込みは50%程度ですね。
今後のデータ次第、ということなのでしょう。
UAW(全米自動車労組)のストライキの影響も、これから出てきそうです。
来年(2024年)の大統領選挙も絡んできますし、行方が気になりますね。
ストライキが始まったのが、先週金曜日(9月22日)。
一気に全工場で始まったわけではなく、順次広がっていくようです。
交渉が長引くようだと、金融市場にも余波が及んできそうですね。
「裏切りの英ポンド」、円安を主導したスイスフランの転換
先週(9月18日~)、サプライズとなったのは英国、そしてスイスの利上げ見送りです。
英国では、7月時点で5.6%程度のターミナルレート(利上げの最終地点)が予想されていましたが、今回は5.25%据え置き。
ガラッと雰囲気が変わりました。
「裏切りの英ポンド」が炸裂しましたね。そしてスイスです。
今年(2023年)の円安はクロス円(米ドル以外の通貨と円との通貨ペア)、特にスイスフラン/円が主導しながら進んできました。
ところが、今回の利上げ見送りで、スイスフランは全面安となっています。
(出所:TradingView)
スイスフラン/円や英ポンド/円などクロス円が下がって、米ドル/円も下がるといった展開もありえますか?
米ドル/スイスフランが買われており、米ドル/円も底堅いですから、そう素直にはいかないかもしれません。
BOE(イングランド銀行[英国の中央銀行])は方向転換したばかりですし、FOMCはタカ派的なメッセージだったので、英ポンド/米ドルのショートがいいのかもしれませんね。
(出所:TradingView)
米ドル/円は難しい展開に
米ドル/スイスフランの買いでもいいでしょうね。
難しいのは米ドル/円。介入で下がったところは買っていいのでしょうが、介入を期待した売りはタイミングが難しい。
米ドル/円のスワップ1年分を、値幅に換算すると8円にもなります。
148円で買って、1年後に140円に下がってもスワップでトントンにできる、ということですね。
これだけ大きいと、売りを1週間握るのも厳しいし、買うのも怖い。難しい局面ですね。
岸田政権が「減税」を打ち出すサプライズも!?
今週(9月25日~)は、9月29日(金)にインフレ指標の米PCEデフレータが発表されますし、日本では岸田政権が経済対策、補正予算案の編成を始めます。
その先には、解散総選挙の影も見え隠れしており、減税を打ち出すのではないか、とのウワサがチラホラ聞こえてきます。
増税イメージの強い岸田さんが減税を言い出せば、サプライズですから、日本株市場はポジティブに反応しそうです。
今週は月末、そして半期末ですが、気になるのはユーロ/米ドル。
下落を見込む市場参加者が多いのですが、ユーロ/スイスフランやユーロ/英ポンドなどのユーロクロス(ユーロと米ドル以外の通貨との通貨ペア)が買われていて、月末はユーロが買われやすい傾向もある。ユーロ/米ドルは売りにくいですね。
(出所:TradingView)
米ドル/円は様子見。米ドル/スイスフランの押し目買い、あるいは英ポンド/米ドルの戻り売りで
今週の戦略はどう考えますか?
米ドル/円は様子見で、米ドル/スイスフランの押し目買い、あるいは英ポンド/米ドルの戻り売りでいいのではないでしょうか。
(出所:TradingView)
(出所:TradingView)
(出所:TradingView)
(構成/ミドルマン・高城泰)
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