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アクティブに動いているのは「円」だけ。年初から米ドル/円急騰の背景には何があるのか?
年明けから米ドル/円は急反騰しています。
昨年(2023年)末、米ドル/円は急落しました。11月高値151.91円から年末12月28日には140.25円まで下落しました。
米金利は低下に向かう一方、日本の金利は正常化に伴い上昇し、日米金利差は縮小するとの観測が背景にありました。しかし、年が明けると下落トレンドは反転し、1月19日(金)時点では148.80円まで戻しています。短期間のうちに8円強戻すのは、結構な変動です。
(出所:TradingView)
この急反転の背景にあるのは何なのでしょうか?
(1)米利下げ観測が後退したこと
米国は3月にも利下げ開始と見られていましたが、好調な米経済指標が続いたことや、利下げ織り込みがあまりにも急過ぎるとの懸念が一部FRB(米連邦準備制度理事会)関係者からもたらされ、一時80%を超えていた3月利下げ確率が、今や50%を割り込んできました。
(2)日本の金融正常化が遅れるとの観測が強まったこと
植田総裁の「チャレンジング」発言もあり、早期正常化が期待されましたが、実質賃金が上昇していないという統計結果が出たことや、能登における地震の影響を見極める必要があるため、日銀は政策正常化を遅らせると見られています。よって1月会合でのマイナス金利解除の可能性はゼロに近く、現状4月会合での正常化が予想されています。
しかし、米ドル/円は8円強も急騰しましたが、米ドルは全体的に見るとそれほど上がっているわけではありません。ドルインデックスは100.63から103.66と303ポイントの上昇でしかありません。
(出所:TradingView)
ユーロ/米ドルは1.1035ドルから1.0845ドルとわずか190pipsの下落です。英ポンド/米ドルに関しては、年初は1.2730ドルで現状は1.2700ドル前後とほとんど動いていません。
こうしてみると、為替市場でアクティブに動いているのは「円」だけとも言えます。米ドルは上昇したとはいえ、米ドル/円以外はそれほど動いていないということは、米ドル/円の反発には、円の要因が強いということでしょう。
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円の要因は新NISAか。年間10兆円が2つの積立投信に流れることを想定
円の要因とは何か。今は、やはり「新NISA」ではないでしょうか。
新NISAで、一体どれだけの人たちが新たに海外投資するのか。それは現時点で正確に予想することは困難です。しかし、それは日本株上昇のサポートになるでしょうし、円安の要因にもなるでしょう。実際、年初から日本株は暴騰し、米ドル/円も急上昇しています。
(出所:TradingView)
ただ、本当のところはどうなのか?
日本取引所グループが発表する、1月第2週(1月8日~12日)によると
(※筆者提供)
「NISAで個人投資家が買っているのでは?」と多くの人が思ったのですが、実際は、NISAを材料に海外投資家が大量買いして日本株を持ち上げたというのが実態でした。
日本の個人はやはり逆張り派が多いのでしょうか。NISAで買っている部分もあるかもしれませんが、多くの投資家は手持ち株の利食いに走ったのだと思います。
では、米ドル/円に関してはどうなのでしょう。
NISA用の積立投信の約8割が、三菱UFJアセットマネジメントが運営する「eMAXIS Slim全世界株式(オール・カントリー)」と「eMAXIS Slim米国株式(S&P500)」に流れると言われています。では、年初来、この2つの投信にどの程度資金が流れたのでしょうか?
(※筆者提供)
(※筆者提供)
オルカンが約2500億円、S&P500が約1500億円、合計4000億円ぐらいです。そうであるならば、全体では5000億円程度でしょうか。これは少なくない金額とも言えるし、期待ほど大きくもないとも解釈できます。
このペースであれば、全体で月間8000億円、年間10兆円程度になるでしょうか。そうであれば、私が個人的にざっくりと予想した金額におおよそ合値します。もっと加速するかもしれないし、減少するかもしれないが、今後もウォッチしていきます。
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FRBの利下げ後ずれなら、米ドル/円は160円レベルを目指す可能性。チャンスは意外に早くやってくる
こうしたことも背景にあり、昨年(2023年)末円高方向に賭けていたヘッジファンド勢も、急遽円安方向への賭けに転換しているようです。FRBの利下げが後ずれするようなら、意外と早いうちに米ドル/円は150円に再度乗せて、160円というレベルも試すかもしれません。
(出所:TradingView)
こうした動きに呼応したのか、GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)が2024年度から為替フォワード取引開始というニュースが流れてきました。これは大きなニュースです。
GPIF、24年度に外債先物と為替フォワード取引開始へ-理事長
(出所:Bloomberg)
これまでGPIFは為替ヘッジを基本的にしてきませんでした。運用額があまりにも大き過ぎて、自らのヘッジ行為そのものが市場に影響を及ぼすからです。しかし、現状の為替相場は、相対的に円安レベル。リーマンショックのときのように、株価が急落し、為替も円高に行けば、一挙に30%を超えるような損失が出る可能性もあります。
国民の年金を運用するという性格上、大幅なロスは避けたいところ。為替フォワードでのヘッジは合理的とは思います。
しかし、ファンドの規模が大きすぎます。総運用資産220兆円、その半分を海外で運用していますが、たとえ10%ヘッジ比率を高めたとしても、11兆円の円買い・米ドル売りとなります。11兆円は、2022年の介入総額よりも巨額です。
2024年4月以降は、GPIFのヘッジ行動がマーケットでも話題になるでしょう。ヘッジファンド勢としては、GPIFが動き出す前に動いて収益を固めたいと思っている人もいるかもしれません。そうであるなら、チャンスは意外に早くやってきます。
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