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「ニック砲」をきっかけに9月FOMC利下げ幅予想は拮抗
9月18日(水)、FRB(米連邦準備制度理事会)はついに利下げに踏み込みますが、このときの利下げ幅が0.25%になるのか、0.50%になるのか、この点が焦点になっています。
先週(9月9日~)、米CPIとPPI、2つのインフレ指標が発表されましたが、米CPIコア指数の対前月比が予想+0.2%を上回る+0.3%、内訳を見るとシェルター(住居費)の部分が+0.5%と上昇、インフレ再燃の可能性がまったく消えているわけでもないので、市場は0.25%利下げがほぼ決定的とみなしました。CME(シカゴ・マーカンタイル取引所)が提供するFedWatchでは0.25%利下げが87%前後まで高まりました。
(出所:CME FedWatch 2024年9月12日時点)
しかし、その市場の動きに待ったをかけたのが、久しぶりの「ニック砲」でした。
ウォールストリート・ジャーナル紙(以下、WSJ紙)の記者ニック・ティミラオス氏はパウエル議長が利下げを始めるにあたって「小さく(0.25%)始めるか、大きく(0.5%)始めるか」決めかねていると報じました。
The Fed’s Rate-Cut Dilemma: Start Big or Small?(FRB利下げのジレンマ、大きく始めるか、それとも小さく)
(出所:WSJ)
今回はニック・ティミラオス氏だけでなく、FT(フィナンシャル・タイムズ)紙にもリークがありました。ニック砲だけだと不十分と考えたのでしょうか。
Federal Reserve wrestles with how aggressively to cut interest rates
(出所:FT)
こうした、FRB筋からのリークと思われる報道により、次のFOMC(米連邦公開市場委員会)における利下げ確率は、0.25%も0.50%も50%と拮抗しています。
(出所:CME FedWatch 2024年9月13日NYクローズ時点)
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なぜ、米国は0.50%の利下げが必要なのか?
なぜ0.25%ではなく、0.50%の利下げが必要になるのか。
ニック・ティミラオス氏の記事において、今年(2024年)の初めまでパウエル議長のシニアアドバイザーだったジョン・ファウスト氏は「最初の緩和が0.25%か、0.50%なのかということよりも、これから先数カ月でどれだけ利下げするのか、それが重要だ」と発言しています。
米国のCPIは対前年度比で2.5%まで減速してきました。現状の政策金利が5.25%なので、実質金利は2.75%と相当高いことになります。
金融引き締めを緩和するだけでも、何回も利下げしていかなければなりません。そうであるなら、最初に0.25%利下げというのは悠長すぎないか(?)ということになります。
マーケット関係者は、どうしてもCPIやPPIといった数字が市場予想よりも高ければ0.25%、低ければ0.50%という単純な見方をしてしまいますが、政策当局者は違う視点から見ているということでしょう。
米国のコアCPIの対前月比が予想よりも高かったのは家賃の影響ですが、米CPIは家賃の割合が非常に高いインフレ指標です。家賃はインフレ率に反映されるのに非常に大きなタイムラグがあるので、いつまでたっても米国のインフレ率は下がらない傾向があります。
欧州が採用しているHICP(Harmonised Index of Consumer Prices 欧州基準消費者物価指数)を使うと、米国のインフレ率はすでに2%前後です。
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米ドル/円は140円割れならダウンサイドリスクへの警戒高まる
次に問題になるのはドット・チャート(ドット・プロット)です。特に6月FOMCで示されたドット・プロットは年内1回という予想でした。これがおそらく今回は4回(1%)の利下げという予想が多くなるでしょう。
(※筆者提供)
しかし、2024年3月に予想された2024年末レートは4.75%と3回利下げ予想でした。2024年6月は5.00%と1回利下げと、よりタカ派的方向にFOMCはシフトしました。
ところが今回はおそらく4.00%~4.25%といった、4回~5回利下げ予想に大幅に下方シフトすることになると思われます。
短期間にこれだけ予想がシフトするのも違和感があります。FOMCがその点をどのように説明するのか、パウエル議長会見が見ものになります。
ここまでドット・チャートが下方シフトせず、年内3回ぐらいの利下げ(4.50%)に留まるのであれば、9月FOMC後は、米ドルが買い戻されるかもしれませんが、4回以上の利下げになると米ドル売りがさらに進むかもしれません。
FOMC(9月17-18日開催)で、実際どうなるのか。市場の予測はおそらく0.25%がそれでも主流でしょう。そして、予想どおり0.25%の利下げとなった場合は、米ドルには買い戻し圧力がかかるでしょう。
しかし、9月18日までは、0.50%利下げの可能性も相当高いということを前提にトレードされることになるので、米ドルには売り圧力がかかりやすいことになるでしょう。
0.50%利下げする心積もりがなければ、ニック・ティミラオス氏に記事を書かせることはないからです。
米ドル/円は140円を割ってくると、日足・一目均衡表の雲を下抜けすることになるので、ダウンサイドへの警戒が高まります。
(※筆者提供・TradingView)
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