昨日の海外市場では、ホルムズ海峡の航行状況が改善するとの期待から、原油供給の停滞を巡る懸念が薄れると原油先物相場が下落。株高・ドル安の様相が強まりドル円は158.85円と日通し安値を更新した。ただ、売り一巡後は下げ渋った。ユーロドルは一時1.1525ドルまで上昇した。
本日の為替市場も、イラン情勢とそれに連動する原油先物価格の動向に神経質な展開が続きそうだ。また、今週は主要国の金融政策決定会合が相次ぐが、その先陣を切るのが本日の豪準備銀行(RBA)理事会による政策金利発表となる。
ドル円は、原油価格の高止まりによるドル先高観に加え、高市政権の積極財政路線への懸念など複数の円売り要因が重なり、基調としてはドル高・円安地合いが継続する可能性が高い。ただ、足もとは2024年7月以来のドル高・円安水準で推移していることで、本邦為替当局による口先介入だけでなく実弾介入への警戒感も強まりつつあり、相場が急変するリスクには注意が必要だ。
原油市場では、昨日こそは小幅に調整が入ったが、国際エネルギー機関(IEA)加盟国による石油備蓄放出や対ロシア制裁の一部緩和といった材料も価格を押し下げるには至らず、高値圏を維持している。仮に前日同様に調整局面があったとしても、原油価格が急速に下落トレンドへ転じる可能性は低い。昨日には木原官房長官も「3月下旬以降は、日本の原油輸入は大幅減少になる見込み」と発言している。また、日本時間の本日早朝にはトランプ米大統領が米中首脳会談を1カ月延長するよう要請しているとも報じられていることで、戦争の長期化も原油不安を促しそうだ。原油高はインフレ懸念を通じて米金利の上昇圧力を高めるだけでなく、決済通貨としてのドル需要を押し上げる要因となる。
一方で、円安材料も依然として多い。イラン情勢の陰に隠れているが、2026年度予算案は先週13日に衆議院を通過し、昨日から参議院での審議が本格化した。参議院では与党が過半数を確保していないものの、憲法第60条により30日以内に議決されない場合は衆議院の議決が国会の議決となる。一般会計122.3兆円規模の大型予算が成立すれば、積極財政への懸念は円売り圧力として残りやすい。
さらに19日に予定されている日米首脳会談も、すでに市場の重要な焦点となっている。中でも最大のテーマはホルムズ海峡の安全確保だ。欧州ではトランプ政権に近いとされるイタリアのメローニ首相でさえ、今回のイラン攻撃に対して批判的な姿勢を示している。一方で高市首相は米国の攻撃への直接的な評価を避けつつ、イランの反撃を強く非難する姿勢を取っている。
故安倍元首相は、日本とイランの関係を活用し、現職首相として41年ぶりにイランを訪問するなど「調整役」としての外交を模索していた。しかし現在の高市政権は、トランプ政権への同調色が強いとの見方が市場でも広がっている。
こうした中、日米首脳会談で自衛艦のホルムズ海峡派遣を要請される可能性が注目されている。小泉防衛相は3月10日に続き、週末15日にもヘグセス米国防長官と電話会談を実施。昨日の国会答弁では護衛艦派遣について「まだ一切決めていない」と述べたが、トランプ大統領が首脳会談の場で直接要請する可能性は残る。
米海軍ですらホルムズ海峡の護衛任務に慎重姿勢を示している中で、日本が自衛艦派遣に踏み切れば、日本がイランとの軍事的緊張に深く巻き込まれるリスクも高まる。国内世論でも米国のイラン攻撃に対して反対意見が多数を占めており、仮に首脳会談で米国側の要請を大きく受け入れる形となれば、高市政権への信頼低下が政治リスクとして意識され、為替市場にも影響を及ぼす可能性がある。
一方で、円買い要因として意識されるのは現状では為替介入のみだ。原油高と円安の同時進行は輸入物価の上昇を通じて国内インフレを押し上げる懸念がある。また、ベッセント米財務長官もドル高への警戒感を示しており、日米通貨当局の動向には注意が必要だ。ただし、今回のイラン攻撃は同時多発テロ後のような国際的な結束が見られず、多くの国が米国とイスラエルの行動を批判している。仮に日本が単独で為替介入を行った場合、その効果が限定的となる可能性も否定できない。
なお、本日のRBA理事会については、これまでの据え置き予想から一転し、先週には豪州4大銀行すべてが25ベーシスポイントの利上げ予想へと修正した。すでに2月に利上げへ舵を切ったRBAは、小規模開放経済であることから政策転換が比較的早い中銀として知られる。利上げ自体は市場に織り込まれている可能性が高いが、声明文がタカ派色を強め追加利上げの可能性を示唆すれば、豪ドルの反応は大きくなるだろう。
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