先週末の海外市場では、米国・イスラエルがイラン国内の複数施設を空爆し、イランもペルシャ湾岸地域全体への攻撃を継続したことで、WTI原油先物価格が1バレル=101ドル台まで急伸し、ダウ平均は一時900ドル近く急落。為替市場では「有事のドル買い」が優勢となりドル円は160.41円まで上値を伸ばした。また、ユーロドルは1.1500ドル手前まで下押した。
今週の為替市場も、イラン情勢に振り回される展開が続く。先週、トランプ米大統領は原油先物価格の急騰に押される形で、イランのエネルギー関連施設への空爆を二度にわたり延期し、期限をイースター明けの4月6日まで先送りした。しかしその一方で、週末にかけても戦闘は拡大し、トランプ大統領はホルムズ海峡を「トランプ海峡」と呼ぶなど、米国による実質的な掌握を示唆する発言も飛び出した。停戦には期間面・内容面ともに障害が多く、原油高・金利上昇・ドル高の流れは当面続く公算が大きい。
戦禍の拡大は、週末28日には開戦後初めてイエメンのフーシ派がイスラエルへの攻撃を開始したことがあげられる。28日のフーシ派の攻撃は限定的で、イランを本格的に支援するための行動というよりは、象徴的な動きと見なされている。しかし、イエメン沖はホルムズ海峡の代替輸送の一つとして紅海に出るルートでもあり、フーシ派が紅海での船舶攻撃を再開した場合はマンデブ海峡も閉鎖に追い込まれ、エネルギー価格のさらなる上昇が懸念される。
イランをめぐる戦争が、米・イスラエルとイランの3国だけではなく、中東全体へと拡大すれば、より停戦への道のりが険しくなってくる。トランプ米大統領は原油高騰に歯止めをかけようと、停戦に向けて前向きな発言をしているが、戦争は混迷を深めていることで、停戦期待に関する発言に対する市場の反応は明らかに鈍っている。加えて、23日の攻撃延期のSNS投稿直前に約6億ドル規模の原油先物が売却されていたことも判明し、トランプ政権の発言がインサイダー疑惑への懸念もあり市場の信認は揺らいでいる。今後は米国発の一方的な情報に依拠した取引はリスクが高く、イラン側の公式見解に対する感応度が高まる局面に入る。
停戦が進まない構造的要因も明確だ。トランプ政権が提示したとされる「15項目の停戦案」は、「核開発の放棄」「ウラン濃縮停止」「主要核施設の破壊」「ホルムズ海峡の開放」など米国側の要求が前面に出た内容で、イランへの見返りは制裁解除や民生支援にとどまる。一方のイランは、「侵略の停止」「賠償保証」「主権承認」などを条件に掲げており、溝は極めて深い。これまでの資源確保を巡るトランプ政権(グリーンランド領有の企て、ベネズエラの原油施設奪取)の姿勢を踏まえれば、ホルムズ海峡の主導権確保が狙いと見るのが自然であり、停戦への道のりは長い。
為替市場では、戦争長期化を背景にドル買い圧力が根強い。ただし、ドル円は前回の為替介入局面(2024年7月11日)以来の円安水準に達しており、ここからの円売りには警戒が必要だ。原油高に加え円安が進行することで、国内エネルギー価格の上昇圧力も強まる。ただ、財務省サイドからは警戒発言が出ているものの、政権としてのインフレ対策に対しては消極的に感じ、過去の外為特会の利益拡大の「ホクホク」発言などを含め、円安けん制は依然として弱い。政権内の温度差も含め、為替市場は新たな不確実性を抱えながらの展開となる。
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