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西原宏一の「ヘッジファンドの思惑」

米ドルはイラン戦争で独り勝ちだが、安全資産の米ドル買いではなく、年初からの米ドル安進行の調整に過ぎない。戦争が長期化しても米ドル安に転じる局面が来る公算高い

2026年03月26日(木)16:17公開 (2026年03月26日(木)16:17更新)
西原宏一

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イラン戦争は長期化する公算が高まる。開戦以降、米ドルは独り勝ち状態

 みなさん、こんにちは

 イラン戦争が開戦してから、マーケットは「大混乱」。トランプ米大統領がSNSに投稿するたびに、原油を中心に株、債券、金(ゴールド)、そしてFXが激しく乱高下します。

 開戦当初は、エネルギー供給国が強く、輸入国が弱いというのがコンセンサスでした。そのため米ドルやカナダドル、豪ドルが買われ、円やユーロは反落しました。

 しかし、戦争の長期化が懸念されるようになると、米ドル独り勝ち状態となっています。

 たとえば、日本にとってLNGの重要な輸入元であり、連続利上げも予想されているエネルギー供給国の豪ドルも、リスクオフに弱いところが露呈して一時急落しています。

 開戦当初はベネズエラのように早期決着も想定されていました。ただ、どうもこの戦争は長期化する公算が高まっているようです。

 というのも、「ペンタゴン、第82空挺(くうてい)師団の約3000人を中東へ派遣へ」とWSJ(ウォールストリート・ジャーナル)紙が報じたからです。

 基本的に、地上戦に進むと戦争は長引きやすいといわれています。つまり、米国が第82空挺師団から約3000人の部隊を中東に派遣する計画があるということは、戦争が長引く可能性を示唆しています。

 それでは、戦争が長期化する公算から、長期にわたって米ドル買いを継続していけばいいのでしょうか?

イラン戦争は石油と米ドルの結びつきの土台を試す。長期では米ドル弱体化につながるか

 このイラン戦争勃発以降、アジアの友人たちの米国に対する評判はすこぶる悪いです。

米国の政治が不安定であるため、中長期では米ドルを保有したくないという意見が多数。たとえば、FT(フィナンシャル・タイムズ)のケイティ・マーティン(Katie Martin)も次のようなコラムを書いています。


「実際、この紛争はドルをさらに弱体化させるおそれがある(In fact, the conflict threatens to undermine the dollar further.) 」
イラン戦争の間ドルが上がっても「ドルは完全復活したわけではない」。 トランプが昨年政権に戻ってから、ドルが"絶対王者"であるという信頼は傷ついた。 今回の上昇も、安全を求めてドルへ殺到したというより、年初にドルリスクを減らし過ぎた分を「中立に戻す」動きが大きい、という見方が多い。 さらにこの戦争は、長期的にはドルを弱めるかもしれない。 ドイツ銀行のサラベロス氏は「中東は、ドルが世界の準備通貨であることと深く関係する。今回の戦争はペトロダラー体制(石油とドルの結びつき)の土台を試す。亀裂が広がれば、貿易や貯蓄でドルが使われる割合が下がるなど、長期で大きな影響が出る」と指摘した。
(出所:FT)


 実際に、イラン戦争が始まる前は、豪ドル/米ドルを中心に米ドル安が進行していました。

 そして開戦以降、米ドルが独り勝ち状態となっていますが、それはケイティ・マーティンが指摘しているように、米ドルが安全資産だから買っているのではなく、年初からの米ドル安進行の巻き戻しに過ぎないと想定しています。

 この戦争は地上戦に進む公算も高まったため、残念ながら長期化するかもしれません。

 だからといって米ドル上昇も長期化するかといえば、その可能性は低いでしょう。その理由をまとめると以下の3つとなります。


★イラン戦争の長期化で、米ドル上昇も長期化する可能性が低い理由
(1)米ドルは“昔ほど絶対”ではない。戦争時の米ドル買いは安全資産買いというよりポジション調整の側面が強い
(2)世界の投資家は米国だけに集中せず分散を続ける
(3)エネルギー高→インフレ→金利高が長引き、株も債券も難しくなるのでリスク管理に注意


 米ドル円に関しては、米ドルの材料というより円安の要素が強いため、押し目買いを継続。ただ、介入懸念もあってなかなか160円すら超えられないため、辛抱強く押し目を待ちたいところ。

米ドル/円 日足
米ドル/円 日足チャート

(出所:TradingView(トレーディングビュー))

 対ユーロでの米ドル買いはポジション調整の側面が強いため、戦争が長期化したとしても米ドル安に転じる局面が来る可能性が高いので要注意です。

ユーロ/米ドル 日足
ユーロ/米ドル 日足チャート

(出所:TradingView


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