みなさん、こんにちは。
■豪ドル/円についで、米ドル/円も動意づいてきた
今週に入っても、ギリシャに対する第2次支援は決定しておらず、ユーロ情勢は混迷を深めています。ユーロ/米ドルはヘッドラインリスクに翻弄され、方向感なく乱高下しています。
一方、それを横目に、資源国通貨の豪ドルはジリジリと上値を切り上げる展開です。豪ドル/円は一時84.63円まで上昇し、日本が昨年、「円売り・米ドル買い」の大規模介入を実施した際の高値である83.96円を上抜けてきました。
豪ドルを取り巻く環境は変わっておらず、ユーロ圏から大きなネガティブサプライズが出てこないかぎり、豪ドル/円は90円に向けて上昇し続ける可能性が濃厚でしょう(「資源国通貨高・避難通貨安の展開へ。豪ドル/円は中期的に90円へ向けて上昇か」を参照)。

(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:豪ドル/円 4時間足)
また、豪ドル/円についで動意づいてきたのが、前回のコラムでもご紹介した米ドル/円です。
今週に入り、米ドル/円は久しぶりに78円台を回復しました。一時は78.65円まで上昇しています。

(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドル/円 4時間足)
こちらも、前回のコラムでご紹介した79.00円のターゲットに向けて、上昇中です。
■日銀もグローバルな金融緩和の流れに参加した
さて、米ドル/円がにわかに活気づいてきた背景には、日銀の思い切った施策があります。それは、2月14日(火)のバレンタインデーに発表され、サプライズとなりました。
「資産買い入れ等の基金の規模を従来の55兆円から10兆円増額し、65兆円とする」
加えて、それまでは「物価安定の理解」という表現をしていたのですが、あいまいな言い方を避け、次のような言い回しに変更しました。
「CPI(消費者物価指数)の1.00%をメドとする」
FRB(米連邦準備制度理事会)の「2.00%をゴールにする」という表現にならい、「1.00%をメド」と表現を変えたということですね!
つまり、「1.00%をゴールにする」という直接的な言い回しにしたのです。
さらに、FRBと比較され、「日銀はゼロ金利以外に何もしていない」という批判をかわすことも、目的としてあるのでしょう。
海外勢はこれを「インフレターゲット導入」ととらえており、その向きは広がりつつあるようです。
日銀の発表後に、安住財務相が「実質的にインフレターゲット設定と受け止めている」とコメントしたことも影響しているようです。その後、海外勢からの円売り圧力は増大しました。
米ドル/円は、78円台に乗せてからも上昇を続けており、2月15日(水)には一時78.67円をつけています。前回のコラムでターゲットとして示した79.00円に急接近する展開です。

(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドル/円 日足)
その後、78.80~79.20円には、本邦輸出企業の米ドル売りのオーダー、さらに、欧米勢の利益確定の米ドル売りも控えていると観測されるため、さすがに伸び悩んでいますが、本稿執筆時点でも78.45円レベルを維持しており、引き続き底堅い展開となっています。
■「円キャリートレード」が復活か?
ところで、2000年代半ばは、ゼロ金利を継続していたのは日本だけでした。したがって、低金利の円を売って高金利通貨を買い、その金利差を享受する「円キャリートレード」が、当時は全盛となっていました。
それが、2012年に入ってから「ドルキャリー」という言葉が聞かれ始め、さらに、昨年末にECB(欧州中央銀行)が実施した「LTRO(3年物無制限資金供給オペ)」の影響で、今では「ユーロキャリー」という言葉まで出てきています。
しかし、「キャリートレード」の対象となる通貨は、「金融緩和傾向にあること」はもちろん、「ボラティリティ(変動幅)が低いこと」も重要です。
その点では、不安定な値動きを続けるユーロと比較すると、米ドル/円は極めてボラティリティが低い通貨ペアです。
こうしたことが背景となり、「円キャリートレード」が再開される環境が整いつつあると言えるのです。
■ヘッジファンドの米ドル/円に対する目線は、さらに上へ
米ドル/円は、2007年以降続いてきた長期の円高トレンドが終えんしつつあり、緩やかな上昇基調となっています。

(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドル/円 月足)
前回のコラムでご紹介した米ドル/円の79.00円というターゲットは達成しつつあります。ヘッジファンドの友人の米ドル/円に対する目線は、さらに上へとシフトしており、82円あたりをメドに戦略を組み直しているもようです。
3月の本邦の期末に向けて、リパトリエーション(本国への資金送還)による「米ドル売り」が持ちこまれると予想されるため、いったんは、米ドル/円が下押しする局面もあるでしょう。
しかし、米ドル/円は欧州債務問題の混迷の中でも、大きく値を崩しませんでした。
ここから、上昇トレンドが徐々に鮮明になってくるのではないでしょうか?
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