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西原宏一の「ヘッジファンドの思惑」

「円キャリー」復活の環境も整ってきた!
ドル/円の上昇基調は徐々に鮮明になる!!

2012年02月16日(木)16:47公開 (2012年02月16日(木)16:47更新)
西原宏一

FXトレーダー・羊飼いに聞く、初心者におすすめのFX口座の選び方とは?

 みなさん、こんにちは。

■豪ドル/円についで、米ドル/円も動意づいてきた

 今週に入っても、ギリシャに対する第2次支援は決定しておらず、ユーロ情勢は混迷を深めています。ユーロ/米ドルはヘッドラインリスクに翻弄され、方向感なく乱高下しています。

 一方、それを横目に、資源国通貨の豪ドルはジリジリと上値を切り上げる展開です。豪ドル/円は一時84.63円まで上昇し、日本が昨年、「円売り・米ドル買い」の大規模介入を実施した際の高値である83.96円を上抜けてきました。

 豪ドルを取り巻く環境は変わっておらず、ユーロ圏から大きなネガティブサプライズが出てこないかぎり、豪ドル/円は90円に向けて上昇し続ける可能性が濃厚でしょう「資源国通貨高・避難通貨安の展開へ。豪ドル/円は中期的に90円へ向けて上昇か」を参照)

豪ドル/円 4時間足

(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:豪ドル/円 4時間足

 また、豪ドル/円についで動意づいてきたのが、前回のコラムでもご紹介した米ドル/円です。

 今週に入り、米ドル/円は久しぶりに78円台を回復しました。一時は78.65円まで上昇しています。

米ドル/円 4時間足

(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドル/円 4時間足

 こちらも、前回のコラムでご紹介した79.00円のターゲットに向けて、上昇中です。

■日銀もグローバルな金融緩和の流れに参加した

 さて、米ドル/円がにわかに活気づいてきた背景には、日銀の思い切った施策があります。それは、2月14日(火)のバレンタインデーに発表され、サプライズとなりました。

「資産買い入れ等の基金の規模を従来の55兆円から10兆円増額し、65兆円とする」

 加えて、それまでは「物価安定の理解」という表現をしていたのですが、あいまいな言い方を避け、次のような言い回しに変更しました。

 「CPI(消費者物価指数)の1.00%をメドとする」

 FRB(米連邦準備制度理事会)の「2.00%をゴールにする」という表現にならい、「1.00%をメド」と表現を変えたということですね!

 つまり、「1.00%をゴールにする」という直接的な言い回しにしたのです。 

 さらに、FRBと比較され、「日銀はゼロ金利以外に何もしていない」という批判をかわすことも、目的としてあるのでしょう。

海外勢はこれを「インフレターゲット導入」ととらえており、その向きは広がりつつあるようです

 日銀の発表後に、安住財務相が「実質的にインフレターゲット設定と受け止めている」とコメントしたことも影響しているようです。その後、海外勢からの円売り圧力は増大しました。

 米ドル/円は、78円台に乗せてからも上昇を続けており、2月15日(水)には一時78.67円をつけています。前回のコラムでターゲットとして示した79.00円に急接近する展開です。

米ドル/円 日足

(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドル/円 日足

 その後、78.80~79.20円には、本邦輸出企業の米ドル売りのオーダー、さらに、欧米勢の利益確定の米ドル売りも控えていると観測されるため、さすがに伸び悩んでいますが、本稿執筆時点でも78.45円レベルを維持しており、引き続き底堅い展開となっています

■「円キャリートレード」が復活か?

 ところで、2000年代半ばは、ゼロ金利を継続していたのは日本だけでした。したがって、低金利の円を売って高金利通貨を買い、その金利差を享受する「円キャリートレード」が、当時は全盛となっていました。

 それが、2012年に入ってから「ドルキャリー」という言葉が聞かれ始め、さらに、昨年末にECB(欧州中央銀行)が実施した「LTRO(3年物無制限資金供給オペ)」の影響で、今では「ユーロキャリー」という言葉まで出てきています。

 しかし、「キャリートレード」の対象となる通貨は、「金融緩和傾向にあること」はもちろん、「ボラティリティ(変動幅)が低いこと」も重要です。

 その点では、不安定な値動きを続けるユーロと比較すると、米ドル/円は極めてボラティリティが低い通貨ペアです。

 こうしたことが背景となり、「円キャリートレード」が再開される環境が整いつつあると言えるのです。

ヘッジファンドの米ドル/円に対する目線は、さらに上へ

 米ドル/円は、2007年以降続いてきた長期の円高トレンドが終えんしつつあり緩やかな上昇基調となっています。

米ドル/円 月足

(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドル/円 月足

前回のコラムでご紹介した米ドル/円の79.00円というターゲットは達成しつつあります。ヘッジファンドの友人の米ドル/円に対する目線は、さらに上へとシフトしており、82円あたりをメドに戦略を組み直しているもようです。

 3月の本邦の期末に向けて、リパトリエーション(本国への資金送還)による「米ドル売り」が持ちこまれると予想されるため、いったんは、米ドル/円が下押しする局面もあるでしょう。

 しかし、米ドル/円は欧州債務問題の混迷の中でも、大きく値を崩しませんでした

ここから、上昇トレンドが徐々に鮮明になってくるのではないでしょうか?


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