実際、QE3の実施で一番心配される米ドル/円の下値リスクについても、騒ぐほどのものではないと思う。
米ドル安がもたらした円高圧力は限定的である、という見通しをなお堅持したい。
■米ドル/円への影響が限定的であるとする根拠とは
その根拠として、次の3点があげられる。
まず、今回の無制限QEはオープン・エンド型であるだけに、毎月400億ドルと緩やかなペースで実施していくので、インパクトは限定的である。
日銀もバランスシートを拡大しているから、金額ベースでは相殺される可能性が大きい。その上、今回のQE3は国債購入でないため、米長期金利はどちらかというと上昇しやすい。よって、金利差に敏感な米ドル/円の下支えになってもおかしくない。
次に、やはりクロス円(米ドル以外の通貨と円との通貨ペア)全体の状況から米ドル/円の下値限定を推測できる。
ユーロ/円をはじめ、クロス円全般がブル(上昇)トレンドを継続しているうちは、米ドル/円だけがガンガン下値余地を拡大していくことは想定しにくい。
なお、ユーロ/円の見通しについて、8月31日(金)のコラムで提示したメイントレンドは、なお有用だとみる。
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最後に、うわさされる日銀介入について。介入の有無自体はなんとも言えないが、投機筋の動きを封じ込めるのには一定の効用を果たすだろう。
リスクオンの市場センチメントにおいて、仕掛け的な円買いはしづらいことも、大きな要素として認識しておきたい。
■ユーロはいったんスピード調整か
一方、ユーロ/米ドルの急伸からわかるように、米ドル安トレンド自体が継続していくとしても、目先はややオーバーボート(買われすぎ)感が否めない。
こういったオーバーボート感は、ユーロ/米ドルだけではなく、ユーロ/豪ドルやユーロ/英ポンドなどユーロクロス(ユーロと米ドル以外の通貨との通貨ペア)の通貨ペアでも見られているので、QE3の確定をきっかけに、ユーロはいったんスピード調整を行なってもおかしくないとみる。
そのうち、ユーロ/豪ドルの動向に注目したい。
ユーロ/豪ドルは200日移動平均線の1.2431ドルを上回れなければ、豪ドルの「売られすぎ」が修正される気運も高まるから、豪ドルの切り返しが続くだろう。
(出所:米国FXCM)
引き続きリスクオン相場において、豪ドルが恩恵をこうむる可能性に注目しておきたい。
■今後の市況はテクニカル要素に支配されると予想
総合的にみると、QE3の無事通過でこれからはテクニカル要素に支配される市況になりそうだ。
この意味合いでも、足元におけるドルインデックスですでに「売られすぎ」のシグナルが点灯しているのも見逃せない。
(出所:米国FXCM)
ひとまず上のチャートを掲載しておくが、検証および詳しい解説は、また次回に。
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