■日銀の量的緩和が円安トレンドを後押しする可能性あり
円安継続の視点からすると、今月(10月)、日銀による一段の量的緩和が行われる可能性も無視できない。
ただし、筆者は「一段の量的緩和」あるいは「日銀による外債購入といった新しい手法の試み」などのファンダメンタルズの材料をもって、円安の進行を判断するのではない。
あくまで「円安トレンドがすでに始まっている公算が大きいので、日銀の行動など、ファンダメンタルズ上の材料が後追いで発生して円安トレンドの可能性を証左したり、トレンドが一段と押し進められたりするだろう」というロジックに基づく発想だ。
■豪ドルの安値追いは少なくとも2012年のうちは危険
ところで、豪ドルについては、前回のコラムで紹介したように、ゴールドマンサックスのアナリストが非常に弱気な見方を示していたが、短中期では豪ドルの安値追いが危険だったことは、以下のチャートをもって説明できる。
【参考記事】
●スペイン国債格下げがユーロに好材料!? 「悪材料のユーロ買い」になる理由とは?(10月12日、陳満咲杜)
(出所:米国FXCM)
(出所:米国FXCM)
豪ドル/米ドルの日足は、「ダブルトップ」のフォーメーションを示し、豪ドル/円も日足に「ヘッド&ショルダーズ(※)」を形成していた。
しかし、そのダブルトップの下放れがあっても、「ヘッド&ショルダーズ」のネックライン割れがあっても、豪ドルは切り返しを果たしている。
要するに、「ダマシ」が発生したわけだ。
何回か強調してきたように、テクニカルアナリシスの視点では「ダマシ」こそ最強のシグナルとなるわけで、少なくとも短中期スパンでは豪ドルの安値追いが失敗していることは明らかだ。
したがって、豪ドルに関して弱気一辺倒な見方には距離を置くべきだ。少なくとも2012年のうちは。
(※編集部注:「ヘッド&ショルダーズ」はチャートのパターンの1つで人の頭と両肩に見立てたもの。天井を示す典型的な形とされている。「三尊型」「三尊天井」などとも呼ばれる)
■豪ドルの「ダマシ」は市場センチメントに翻弄された結果
もっとも、豪ドルの買われすぎがずいぶん前から指摘されてきたが、最近になって買われすぎという論調が勢いを増してきた背景には、商品相場と中国経済に関する弱気見通しがある。
実際、前述のゴールドマン・サックスのアナリストも、豪ドル安の前提条件として「商品相場の暴落」と「中国のハードランディング」などを挙げていたが、長期スパンならともかく、短中期ではこれらのことが起こるのは難しいのではないかと思う。
それどころか、前提条件自体も注意深く検証しないと過ちを犯しやすい上に、こういったリスク要素にマーケットがおびえ、ずいぶん、豪ドルのロングポジション(買いポジション)が削られてきたことも見逃せない。
言い換えれば、市場センチメントに翻弄され、短中期では豪ドルは買われすぎではなく、売られすぎとさえ言える状態だったから、前述の「ダマシ」の発生もある意味では当然の結果と言える。
この話はまた来週も続く。
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