(「【徹底解剖】2014年大注目のNDD(1) NDDでマイナススプレッドが出る原理」からつづく)
■「NDDだから有利」ではないが「NDD向きの人」はいる
透明性が高く、ときにはスプレッドが爆発的に狭くなることもあるNDD口座。ぶっちゃけ、これって今までの原則固定型の口座と比べて、有利なのだろうか?
「NDDだから常に有利というわけではありません。さまざまな方式の口座はそれぞれに一長一短があり、利用者が何を重視するかによって、最適な口座は異なります」(インターネットイニシアティブの尾関高さん)

「トレーダーによって、最適な口座は異なる」と尾関さんは話す。
尾関さんが言うとおり、「NDDだから常に有利」とは限らない。でも「NDDにより大きな恩恵を受けられる投資家」は存在する。
「一般的にスキャルピング(超短期取引)はFX会社に歓迎されませんが、NDD口座ではスキャルピングであっても、排除されることはありません」(尾関さん)
■敬遠されがちなスキャルピングトレーダー
ポジションを持っても数秒から数十秒で決済してしまうスキャルピング取引を「天敵」と考えるFX会社は決して少なくない。
2013年の初夏、非常に狭いスプレッドを提供している主要FX会社の一部がスプレッドを引き上げる動きを見せたことがあったが、その背景にはスキャルパーの影響があった。
【参考記事】
●SBI FXトレードがスプレッドを拡大。ドル/円は1万通貨まで0.29銭原則固定に
●GMOクリック証券[FXネオ]の米ドル/円が0.3銭原則固定から0.4銭原則固定へ拡大
なぜ、スキャルピングは「天敵」なのか。
前回説明したように原則固定型のFX口座では、利用者とカバー先の間にFX会社のディーラーやアルゴリズムが介在して、カバー取引のタイミングをずらしたり、買い注文と売り注文を相殺させたりする。
【参考記事】
●【徹底解剖】2014年大注目のNDD(1) NDDでマイナススプレッドが出る原理

ところが、決済まで数秒単位のスキャルピングが増えると、カバーが間に合わず、FX会社が不利益を被ることがあるのだ。
そのため、スキャルピングの場合には「投資家の利益=FX会社の不利益」と利益相反の構図に特になりがちだった。
でも、NDDではスキャルピングだろうが、すべての注文はそのまま操作することなくカバー先へ流される。FX会社はカバー先とスキャルピングトレーダーを機械的につなぐだけだ。
投資家にはカバー先から提示される為替レートにわずかに上乗せした為替レートが提示されており、その分がFX会社の利益になっている。だから、FX会社と投資家は利益相反の関係にならないどころか、FX会社としては取引してくれればくれるほど、単純に利益が増えていくことになるので、「取引量が増えるスキャルピングは大歓迎」となるわけだ。
■スプレッドがマイナスになるNDD口座も
スキャルパーが排除されないといっても、それはFX会社側の事情。スキャルパーにとってNDD口座を使うメリットはあるのだろうか。
これが大アリなのだ。
前回も見たように、NDD口座の最大のメリットはスプレッドにあるからだ。
【参考記事】
●【徹底解剖】2014年大注目のNDD(1) NDDでマイナススプレッドが出る原理

日本初のFXシステム立ち上げにも携わった尾関さん。すべては記事に盛り込めなかったが、かなりディープな話もいろいろとしてくれた。
スプレッドがマイナスになることもあるのは現在のところ、セントラル短資FXの[ウルトラFX]に限られているようだが、サイバーエージェントFXの[C-NEX]もスプレッドがゼロになる可能性はあるようだ。
現在、「原則固定型」のスプレッドは米ドル/円で0.27~0.3銭といったところが最狭水準だが、NDDではそれより狭いスプレッドが提示されることもあるというわけだ。
【参考コンテンツ】
●FX会社徹底比較!:取引コストで比べる:米ドル/円スプレッドの狭い順
ただし、「いつでも狭い」わけでないのもNDD口座のスプレッドの特徴。そのブレは大きい。
詳細なデータを公表しているセントラル短資FX[ウルトラFX]の実績値を見ると、米ドル/円の平均提示スプレッドは0.40銭、平均約定スプレッドは0.44銭となっている(2014年1月の実績)。これは「原則固定型」の最狭水準である0.27銭と比べるとやや広い。
ちなみに、以下の表のようにセントラル短資FX[ウルトラFX]の米ドル/円では、現在のFX業界の最狭水準と言えるスプレッド0.3銭以下で全体の約50%が約定してはいる。

※セントラル短資FXが公表している「ウルトラFXの約定率とスプレッド提示率」(2014年1月1日~2014年1月31日)より
■ユーロ/円の平均約定スプレッドは驚異の0.27銭!
一方、ユーロ/円に目を移すと、実に興味深い状況が浮かび上がる。ユーロ/円ではセントラル短資FX[ウルトラFX]の平均提示スプレッドは0.68銭。「原則固定型」の最狭水準は0.6銭なので、これでもかなりそれに近い数字となっているが、平均約定スプレッドはなんと0.27銭!(2014年1月の実績)
【参考コンテンツ】
●FX会社徹底比較!:取引コストで比べる:ユーロ/円スプレッドの狭い順
ユーロ/円では平均提示スプレッドより、平均約定スプレッドの方がかなり狭いのだ。ここから、投資家はスプレッドが狭くなった瞬間を狙ってたくさん取引していることがうかがわれる。
【参考記事】
●全約定の50%がマイナススプレッド時!? 目ざといトレーダーが使ってるFX口座とは?
そもそもセントラル短資FX[ウルトラFX]のユーロ/円の平均約定スプレッド0.27銭というのは、「原則固定型」の米ドル/円スプレッドの最狭水準と同じだ。これは驚異的に狭い。
ちなみにセントラル短資FX[ウルトラFX]のユーロ/円の約定状況は以下のとおりだが、完全に業界最狭水準と言える0.5銭以下で全約定の60%以上が約定している。

※セントラル短資FXが公表している「ウルトラFXの約定率とスプレッド提示率」(2014年1月1日~2014年1月31日)より
NDD口座の利用者はその特徴をよく知っている。スプレッドを注視しながら、原則固定型よりもスプレッドが狭くなったときに、より一層、NDD口座を利用しているようなのだ。
スキャルパーにとって、わずか0.1銭のスプレッドの違いも収益を大きく左右する。NDD口座なら、収益を向上させられる可能性が高いだろう。
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