■米ドル/円は125円にあっさり到達
みなさん、こんにちは。
このコラムで何回かに渡ってご紹介してきた米ドル/円は、先週(5月25日~)から上昇に弾みがつき、6月2日(火)には125円台にあっさり到達。高値は125.05円。
【参考記事】
●「子くじら」の出現で、米ドル/円は122.50円への上昇濃厚! 上抜ければ125円も視野に(5月21日、西原宏一)
●125円に急接近のドル/円は128円も視野に! なぜ、ドル高・円安は突然加速したのか?(5月28日、西原宏一)

(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドル/円 4時間足)
その後、米ドル/円はもみ合いに入っていますが、中期の流れは変わらず、「米ドル高・円安」。
ただ、その調整が少し長引きそうな要因が出てきています。その要因のひとつが、オプション。
米ドル/円の125.00円は、オプションデスクからガンマ(※)の影響で、大量の米ドル売りが供給されるということがあります。
(※編集部注:「ガンマ」とはオプションの指標の1つ)

(出所:米国FXCM)
そして、もうひとつがユーロ/米ドルの反発です。

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■ドイツ国債利回りが再び上昇
2015年4月の英ポンド/円に続き、5月14日(木)のコラムでご紹介したユーロ/円は、上げ幅を拡大してきており、6月3日(水)にあっさりと140円台を回復。
【参考記事】
●ドイツ国債利回り再上昇でユーロ高継続。反発中のユーロ/円に注目する理由とは?(5月14日、西原宏一)
その要因は、以前のコラムでもご紹介したドイツ10年物国債利回りが急騰したこと。
【参考記事】
●人生最大の売りチャンスで独国債急落! 独国債利回り急騰でユーロは上値追いか(5月7日、西原宏一)
ドイツ10年物国債利回りは、前回、2015年5月に上昇した際は、0.80%近くまで急騰して、いったん沈静化しました。
そして、今週(6月1日~)になって上昇を再開。6月3日(水)には0.88%まで急騰し、1.00%を回復しそうな勢いとなっています。

(出所:CQG)
ECB(欧州中央銀行)のQE(量的緩和策)にも関わらず、ドイツ国債の利回りが急騰している背景は、以前のコラムでご紹介しているので、そちらを参照してください。
【参考記事】
●ドイツ国債利回り再上昇でユーロ高継続。反発中のユーロ/円に注目する理由とは?(5月14日、西原宏一)
■ユーロ/米ドルのポジション調整は1~2カ月かかる
このコラムでもご紹介しましたが、日銀の異次元緩和の局面同様、ECBのQEの影響で大幅に下落した利回りが、突然調整で急騰すると、その沈静化には1~2カ月のもみ合いが必要と想定されます。
【参考記事】
●人生最大の売りチャンスで独国債急落! 独国債利回り急騰でユーロは上値追いか(5月7日、西原宏一)
言い換えれば、マーケットに大量に残存している、ユーロ/米ドルのショートポジションが調整されるのに1~2カ月を要するということになります。

(出所:米国FXCM)
ユーロを取り巻く環境を再確認すると、ECBトレードによって構築されたポジションは、欧州国債のロング、独DAXのロング、ユーロ/米ドルのショート。
この調整が続くのであれば、ドイツ国債の下落(利回りは上昇)、独DAXの下落、ユーロ/米ドルの反発という形となります。
実際、ユーロ/米ドルも、再び1.12ドルを上抜け、6月3日(水)には、1.1285ドルまで急騰しています。

(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:ユーロ/米ドル 4時間足)
ドイツ国債の利回り急騰によって、ユーロ/米ドルは反発。
ドイツ国債の利回り急騰の影響を受けて、米10年債利回りも上昇し、米ドル/円は底堅く推移。
結果として、ユーロ/円(ユーロ/円=「米ドル/円」×「ユーロ/米ドル」)があっさり140円まで踏み上げるという展開になっています。

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■ビル・グロス氏の中国深セン指数コメントで株が神経質に
さて、今週(6月1日~)のマーケットでは、以前のコラムでも紹介した、ドイツ国債の急落を示唆したビル・グロス氏(※)が、中国株に対してネガティブなコメントをしていることが話題に。
(※編集部注:「ビル・グロス氏」は、米国の債券運用会社「パシフィック・インベストメント・マネジメント・ カンパニー(PIMCO)の共同創業者で、「債券王」との異名を持つ世界的に有名なファンドマネージャー。2014年にPIMCO社を退社し、現在は、米国の資産運用会社「ジャナス・キャピタル・グループ」に所属している)
【参考記事】
●人生最大の売りチャンスで独国債急落! 独国債利回り急騰でユーロは上値追いか(5月7日、西原宏一)
グロース氏:次のショートは中国深セン指数だが、時期はまだ
4月にドイツ国債は「空前絶後のショート」の機会と述べたビル・グロース氏がここにきて、次のチャンスは中国株の下落に賭けることにあると指摘した。
グロース氏は3日にツイッターで、独国債のショートが今「起きている」とコメント。「次に来るのは中国の深セン総合指数だが、まだそのときではない」と述べた。
深セン総合指数 は今年、2倍以上に値上がりしており、中国の主要株式市場 は相次ぐ新規株式公開(IPO)や記録的な数の新規投資家の市場参加を背景に世界で最大の上昇を演じている。深セン総合指数の株価収益率(PER)は74.5倍で、上海総合指数は24.6倍。S&P500種株価指数は18.7倍。
グロース氏は電子メールで、「将来の成長では今の水準は正当化されない」と指摘。「中国の小口投資家による新規口座開設は記録的ペースで、大幅な相場上昇に拍車を掛けている。一方で中国の輸出は鈍化しており、人民元はドルと連動しているため他のアジア通貨に対する競争力が一段と低下しつつある」との見方を示した。
出所:Bloomberg
(※編集部注:「セン」は原文では「土へんに川」という漢字が使われているが、文字化けの恐れがあるため、カタカナで表記した)
以前のコラムでご紹介したとおり、ビル・グロス氏は2015年4月にドイツ国債について「空前絶後のショートの機会」とコメントしたことで、一躍脚光を浴びたため、今回の中国深セン総合指数に関するコメントがマーケットを神経質にさせています。
【参考記事】
●人生最大の売りチャンスで独国債急落! 独国債利回り急騰でユーロは上値追いか(5月7日、西原宏一)
■ユーロ/米ドルのもう一段の踏み上げに注意
仮に急騰した中国株が反落すれば、独DAXの反落につながり、ECBトレードのアンワインド(巻き戻し)の展開から、ユーロ/米ドルが再び1.15ドルをうかがう展開につながる可能性があるため、マーケットでは彼のコメントに注目が集まっているというわけです。

(出所:米国FXCM)
ECBトレードの巻き戻しにより、不安定化する独DAX、ドイツ国債、そしてユーロ/米ドル。
ドイツ国債の利回り急騰で、ユーロ/米ドルのもう一段の踏み上げに要注意。1.15~1.16ドル程度の反発は視野に。

(出所:米国FXCM)
一方、ユーロに対しての米ドル安の影響で、米ドル/円が仮に122~123円に下げたところは、米ドル/円でのドルロングを再構築する好機となるのではないでしょうか?

(出所:米国FXCM)
今週(6月1日~)は5日(金)の米雇用統計に加え、ドイツ国債の利回りの推移に注目です。
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