2025年度上半期は欧州通貨のクロス円の急伸が顕著
みなさん、こんにちは。
はやいもので、今年も残り3カ月となりました。9月末で日本の2025年度上半期が終わり、10月から新しい相場が始まります。
まずは過去6カ月の相場を確認してみましょう。

2025年度上半期の主要通貨の対米ドル騰落率を見ると、米ドルは主要通貨に対して全面安。上昇率がもっとも高いのが当コラム注目のスイスフラン、次がユーロです。
つまり2025年度上半期、欧州通貨は対米ドルで急伸しています。特にスイスフランは11.04%も上昇。これにFXのようにレバレッジをかければ、相応のリターンを狙えます。
一方、米ドル/円の上昇率はわずか1.39%。欧州通貨を中心に米ドルは大崩れしている一方、対円ではほとんど下落していません。
結果として、欧州通貨のクロス円(米ドル以外の通貨と円との通貨ペア)は大幅上昇となりました。スイスフラン/円は安値から約21円も上昇しています。

(出所:TradingView)
米ドルが弱い背景としては、FRB(米連邦準備制度理事会)の利下げ観測や、4月2日(水)の「解放の日(※)」以に発表された相互関税の影響、加えてトランプ政権によるFRBの独立性を脅かしかねないコメントなどが挙げられます。
(※編集部注:「解放の日」とは、トランプ大統領が各国・地域に課す相互関税を公表した4月2日(水)のこと。トランプ大統領はこの日を「解放の日」と表現した)
円については、日米金利差縮小期待の円高という思惑は実現せず、今年も円は軟調に推移しています。
それでは、残り3カ月の為替マーケットの主役も欧州通貨のクロス円になるのか、検証していきましょう。
注目はGold(ゴールド、金)にあると考えています。
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Goldは年初来で43%急伸。2022年に米欧がロシアの海外資産を凍結すると米国債からGoldへのシフトが進み、トランプ関税で加速
年末までの相場を占う上で、必ずチェックすべき重要なプロダクトがあります。それはGoldです。
作戦会議コラムでも触れましたが、今年のGoldはまだ3カ月を残す時点で年初来+43%と暴騰しています。
【※関連記事はこちら!】
⇒スイスフラン/円と米ドル/円を押し目買い! Goldが年初来で43%急騰し、代替通貨のスイスフランが堅調。米ドル安調整トレンドが変わるか雇用統計や自民党総裁選に注目(9月29日、西原宏一&叶内文子)

(出所:TradingView)
米ドルとGoldは逆相関の関係にあるため、Goldが43%急騰していれば、米ドルは総じて軟化しやすいです。
それでは、なぜGoldは強いのでしょうか。その背景として以下の5つが挙げられます。
(1)法定通貨(円や米ドル)は発行量が増えると価値が目減りする
Goldは発行主体のいない「無国籍の安全資産」。インフレや通貨不安に強いというのが基本スタンス
(2)2022年に米欧がロシアの海外資産を凍結
この出来事で、「米国と対立すると米ドル資産を動かせなくなるかもしれない」という懸念が各国に拡大
(3)新興国のスタンス変化
中国などの中央銀行が米国債の比率を引き下げ、Goldをコツコツ買い増し。結果として、世界的に中央銀行の金購入が高水準で継続
(4)相場への波及
Goldが法定通貨の価値の物差しとしての存在感を強化。同時に「安全通貨の代替」という視点で、スイスフランも堅調になりやすい
(5)2025年4月2日の「解放の日」
トランプ政権の相互関税を受けてマーケットは不安定化し、Goldの購入が加速。結果として今年+43%もの急騰を誘発
振り返ると、欧米によるロシアの外貨準備凍結は「対立すれば米ドル資産が凍結され得る」というリスク認識を広げ、中国や中東、他の新興国の米国債需要を減退させました。その代替としてGoldへのシフトが進みました。
現在、米国債を粛々と買い続けているのは日本が中心。一方で中国、インド、ロシアなどは米国債の代わりにGoldを積み増しています。
これが2022年以降の大きな構造変化であり、今年の「解放の日」以降に加速しています。
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ユーロ/円、スイスフラン/円は押し目買いチャンスを模索する局面。Goldの調整リスクの高まりで
Goldが急騰する中で、スイスフラン/円も連動して上昇しています。
筆者は銀行員時代、米ドル/円トレーダーとしてのキャリアがもっとも長いのですが、スイスフラントレーダーとして勤務した経験もあるため、もともとスイスフランに注目してきました。そして、2022年以降はスイスフランの取引を再び増やしています。
数年前まで「中国に投資する代替通貨」として豪ドル/円が選好されましたが、現在は「Goldの代替通貨」としてスイスフラン/円が選好される流れになっていると考えています。
基本的に、年末までこの流れが継続する可能性が高いと想定しています。
ただし、警戒しているのはGoldの調整です。
もう一度確認すると、Goldは年初来で約+43%と急騰。ボラティリティの高いコモディティであるとはいえ、43%の急騰はさすがに過熱感があります。
今週に入って、地上波でも「なぜGoldが連日上昇しているのか」といった番組が増えており、10月はGoldの上昇一服や調整に注意しています。
Goldが調整する局面では、欧州通貨に対する米ドルの買い戻しが入りやすいでしょう。
もっとも、仮に欧州通貨に対して米ドルが反発しても、それはあくまで「調整」であり「トレンド転換」ではないと見ています。Bloombergのエコノミストも「Dollar Bear Pause, Not Reversal(ドル安トレンドは一時休止であって反転ではない)」とコメントしています。
当面はGoldの値動きを注視しつつ、スイスフラン/円の調整による反落に警戒。
米ドル/円については、144〜145円にはTARF(Term Auction Facility、ターフ)を利用した本邦事業法人の米ドル買い需要が目立つ一方、150円近辺では大手輸出企業の米ドル売り需要が厚いことを今週も市場が確認しました。
米ドル/円は引き続き145〜150円(±1円)のレンジを想定しています。

(出所:TradingView)
Goldの調整リスクが高まっているため、ユーロ/円、スイスフラン/円は押し目買いのチャンスを模索する局面と考えます。

(出所:TradingView)
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