米ドル/円は懸念したとおり日米金利差縮小で下がらず、145~150円±1円でのレンジ継続
みなさん、こんにちは。
先週、9月16日(火)~17日(水)に開催されたFOMC(米連邦公開市場委員会)では、コンセンサスどおり6会合ぶりの利下げを決定。
金利先物市場でも、年末までに約1.7回の利下げを織り込み始めたこともあり、米ドル/円は一時145.49円まで急落しました。
一方、9月18日(木)~19日(金)に開催された日銀会合(日銀金融政策決定会合)では、コンセンサスどおり政策金利を現状維持。
ただし、全会一致でETF(上場投資信託)売却を決定したとの報道で、米ドル/円は一時147.20円まで急落。
もっとも、日銀の基本方針に照らすと、現在の日銀保有ETFの簿価(約37兆円)を前提とすれば、売却完了までおよそ100年以上を要し、マーケットへの影響は限定的との見方が優勢となり、のちに買い戻しが入りました。
日銀については全体としてタカ派色が濃く、10月の利上げ観測が高まっています。つまり、市場の期待どおり、日米金利差は徐々に縮小するシナリオになっています。
それでも、本稿執筆時点の米ドル/円は148.65円で推移しており、円高には振れていません。

(出所:TradingView)
これは本コラムで繰り返し述べているように、「日米金利差縮小」という要因だけでは米ドル/円が下がらないことを示しています。
もっとも、金利差縮小は上値を抑える方向には作用しているため、想定どおり米ドル/円は145~150円±1円程度のレンジで神経質な展開が続いています。
【※関連記事はこちら!】
⇒米ドル/円は当面145~150円±1円程度でレンジか。米利下げ織り込みでも、本邦勢の米ドル買い需要あり。39%関税でもマイナス金利否定のスイスフラン/円を押し目買い(9月11日、西原宏一)
「日米金利差縮小=円高」を前提に、押し目を待ち続けている本邦事業法人は、十分に米ドルを手当できていません。
先週のFOMC後に一時145.49円まで急落した局面では、一部の米ドル買い注文が約定したものの、144.00~145.50円に並べていた買い注文は不成立。
彼らはTARF(Term Auction Facility、ターフ)を利用する事業法人ですが、引き続き米ドルの買い場を探しています(TARFについては過去のコラムをご参照ください)。
時間切れが近づくなか、147~148円でドルを手当すればよいのではと考えますが、「日米金利差縮小=円高」という前提に立つと、どうしても円高局面を待つスタンスになりがちです。
一方、シカゴIMM(国際通貨先物市場)では海外投機筋の円ロングが残っており、彼らも円売りのチャンスをうかがう状況です。

(詳しくはこちら → 経済指標/金利:シカゴIMM通貨先物ポジションの推移)
こうした環境下、当面は145~150円±1円程度のレンジが想定されます。
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米ドル/円は152.00円の神田シーリング上抜けによる急騰に警戒
いま直ちに影響は大きくないものの、警戒しておきたいのが「152.00円」というレート。数年前まで「神田シーリング」として意識されてきた重要なレジスタンスです。
【※関連記事はこちら!】
⇒米ドル/円は、1米ドル=152円台が介入実施のレベルに!市場の警戒感は「期待感」へ変化。神田シーリングの152円が決壊すれば、一気にボラティリティが高まる!(2024年4月4日、西原宏一)
多くのトレーダーは、この「152.00円(神田シーリング)」を超えない前提でトレードを組み立てています。
すなわち、超えないのであれば「152.00円のコールオプションを売ればよい」という発想です。
裏を返せば、そこを明確に上抜けると米ドル円が急騰する可能性があるということでもあり、要注意です。

(出所:TradingView)
これは、日経平均が4万円を上抜けた局面で、マーケットに残っていた巨額のコールオプションの売りが踏まれて急騰した構図と同様です。
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スイスフラン/円は相関が高いGoldとともに史上最高値更新。上昇トレンドは不変と判断
他の通貨ペアに目を向けると、ユーロ/円は年初来高値を更新。スイスフラン/円は本稿執筆時点で187.33円に到達し、史上最高値を更新しています。
【※関連記事はこちら!】
⇒スイスフラン/円の200円到達に現実味! Gold史上最高値、米ドル続落の環境でも、本邦勢の米ドル買いで米ドル/円は崩れず。SNBは静かなスイスフラン高黙認スタンス(9月18日、西原宏一)

(出所:TradingView)
その背景には、Gold(ゴールド、金)の続伸があります。
Goldの日足を見ると、先週3707ドルという高値が話題になりましたが、今週はあっさりその高値を上抜け、一時3791ドルと3800ドルに迫る水準まで急騰しました。

(出所:TradingView)
そして、Goldとの相関が高いスイスフラン/円も史上最高値を更新しているというわけです。
今週はGoldの上昇がオーバーシュート気味になってきたため、短期的な調整には警戒しつつも、上昇トレンド自体は不変と見ます。
懸念したとおり、日米金利差縮小だけでは米ドル/円は下がらず、145~150円±1円のレンジ継続を想定しつつ、思わぬ急騰には注意が必要。警戒水準は152.00円の神田シーリングです。
今週はGoldの上昇に短期調整リスクがあるものの、Goldおよびスイスフラン/円の上昇トレンドも不変と判断します。
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