米ドル/円は155円、日経平均は5万円という見方が増えてきた! その大きな要因である「サナエノミクス」とはなにか
みなさん、こんにちは。
2025年10月4日(土)、自民党総裁選で高市早苗氏が「ガラスの天井(※)」を打ち破り勝利し、新たな経済政策「サナエノミクス」への期待から、日経平均は4万8000円台、米ドル円相場は一時153.00円まで急騰する展開となりました。
(※「ガラスの天井(Glass Ceiling)」とは、女性や少数派が組織や社会で上昇する際に直面する、目に見えない障壁を表す比喩表現のこと)
【※関連記事はこちら!】
⇒米ドル/円は高市トレードで152円超えへロング回転! 小泉勝利がコンセンサスも「ガラスの天井」打ち破り高市新総裁誕生。4万8000円台に急騰した日経平均もロング回転(10月6日、西原宏一&叶内文子)
この上昇トレンドはさらに続く可能性が高く、市場関係者の間では「日経平均5万円」「米ドル/円155円」という見方も増えてきました。

(出所:TradingView)

(出所:TradingView)
そもそも、市場の期待を集めるサナエノミクスとは何なのでしょうか?
サナエノミクスは高市早苗氏が推進する経済政策パッケージで、10月4日(土)に自民党総裁に就任した際に注目を集めています。
この政策は日本経済の再活性化を目指しており、日経平均と米ドル/円に大きな影響を与えると言われています。
ここでは専門用語をできるだけ使わず、サナエノミクスの5つの柱と3つの特徴、期待される効果を解説します。
●サナエノミクスの5つの柱
(1)金融政策:「お金の流れを良くする」
~アベノミクスと同様の大胆な金融緩和を継続
~市場にお金を十分に供給して、企業の投資や個人の消費を促進
(2)財政政策:「必要な時に必要なだけ使う」
~災害、感染症などの緊急時には積極的に財政出動
~ただし無制限ではなく、緊急事態に限定して機動的に対応
(3)投資戦略:「未来のために今投資する」
~危機管理投資と成長産業への積極的な資金投入
~インフラ、経済安全保障、技術・研究開発分野を特に重視
(4)財政健全化への姿勢:「成長軌道に乗せてから考える」
~プライマリーバランス(基礎的財政収支)の黒字化目標を一時凍結
~国債発行を「リスク」ではなく「必要な財源」として位置づけ
(5)経済安全保障:「国家の安全と経済を一体で考える」
~サプライチェーンの強化と国内回帰の促進
~ハイテク・防衛・インフラなど重要分野での国家的視点からの投資
●サナエノミクスの特徴
(1)緩やかなインフレ目標
~賃金上昇を伴う健全なインフレを目指し、デフレからの脱却を図る
(2)分配政策の重視
~物価高対策や社会保障分野への支援など、家計を支える政策を含む
(3)「投資」を重視した表現
~単なる「成長戦略」ではなく、将来のリターンを見据えた「投資」という言葉を多用
●サナエノミクスで期待される効果
(1)日経平均:上昇期待
(2)為替相場:米ドル円、クロス円(米ドル以外の通貨と円との通貨ペア)は上昇見通し
(3)経済安全保障の強化と国内産業の活性化
このようにサナエノミクスは、日経平均と米ドル/円を押し上げる大きな要因となります。
高市総裁はまだ総理になったわけでもなく、アベノミクスの時のように黒田バズーカが炸裂したわけでもありません。
しかし、すでに米ドル/円は先週末から5円も上がっています。その要因は、高市総裁の誕生がマーケットのコンセンサスを大きく覆す結果だったことです。
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高市総裁の誕生は今年2番目のゲームチェンジ!
マーケットではトレンドを変えるような「ゲームチェンジ」が起こることがあります。
今年1番目のゲームチェンジはユーロでした。
【※関連記事はこちら!】
⇒ユーロは「ゲームチェンジ」! ドイツの劇的な財政改革案を受け、ドイツ債が過去35年で最大の下落幅となり、ユーロ買いで反応。米ドル/円はトランプの円安政策批判で続落(3月6日、西原宏一)
3月初旬にユーロ/米ドルは「ドイツの劇的な財政改革案」を受け、ドイツ債が過去35年で最大の下落幅となったことで反発に転じました。
年初は「ユーロ/米ドルはパリティ(1.00ドル)を割り込む」というのがコンセンサスでしたが、一気に1.19ドルまで暴騰する大相場となり、「ドイツの劇的な財政改革案」はユーロ/米ドルの劇的なゲームチェンジとなったわけです。

(出所:TradingView)
このように、マーケットのコンセンサスと大きく相違する要因が出ると、ゲームチェンジとなります。
今回の自民党総裁選では、直前に小泉氏勝利の確率が9割前後という報道も目立ち、小泉新総裁誕生は既定路線のような雰囲気でした。
その雰囲気の中で高市総裁が誕生したことがゲームチェンジとなり、米ドル/円が153.00円、日経平均が4万8000円台への暴騰となったわけです。
それでは、米ドル/円はどこまで上昇するのか検証してみましょう。
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米ドル/円はIMMの円ロングが円ショートにひっくり返れば、155円を超える可能性も。本邦勢の米ドル買い需要で下値は限定的
東京勢は週明け月曜日(10月6日)から「高市トレード」をやる気満々でスタート。シドニー市場でギャップアップして149円台から始まった米ドル/円を、短期勢はドルを買いまくるという展開で始まっています。
今週の作戦会議でもご紹介しましたが、ヘッジファンドが大注目していたのが米ドル/円の152.00円。この152.00円には、米ドルコールオプションのショート(売り)がかなり積み上がっていました。
そこにサプライズの高市総裁誕生というゲームチェンジが投下されたため、「152.00円のコール・ショートはノックアウトされる」と想定して、月曜早朝から米ドル/円をロングにして待っているという展開。
そして我々の想定以上のスピードで、あっという間に米ドル/円は152.00円をブレイクし、一気に153.00円まで急騰する相場を演じています。
それでは、マーケット参加者のポジションはどうなっているでしょうか。
自民党総裁選の前に、大手輸出企業は149円台で大きく米ドルを売り込んでいるため、動きはありませんが、困っているのは米ドル買い需要が旺盛な事業法人です。
コンセンサスが「小泉勝利」だったため、彼らは当然米ドル買いを遅らせています。総裁選後に円高になった局面で、米ドル買いすれば良いという考えからです。
ところが、サプライズの「高市勝利」で、月曜早朝の米ドル円は149円台からスタート。
我々やヘッジファンドは月曜の朝、機動的に素早く米ドル円やクロス円のロング(買い)ポジションを積み上げることができますが、彼らは一度ミーティングを行うなど方針を固める必要があります。
しかし、米ドル円はあっという間に152.00円を超えてきているので、彼らは手が出せなくなっています。150円を割れる場面があれば、米ドル買いに出るかどうかといったところでしょう。
もう1つの注目点は海外勢です。ゴールドマン・サックスもモルガン・スタンレーもシティバンクも、いずれも米ドル/円に対して弱気スタンスでした。
それが一気に円が売られる展開になったため、彼らの顧客もまずポジションのカバーに追われている状況です。
一方、シカゴIMM(国際通貨先物市場)の円ロングポジションもかなり残っていたので、ポジションをスクエアにするのが大変ですが、問題は彼らがポジションをひっくり返してくるかどうかです。
彼らがポジションを反転させてくるようだと、米ドル/円は155円も超えると見ています。

(詳しくはこちら → 経済指標/金利:シカゴIMM通貨先物ポジションの推移)
(※2025年10月1日(水)からの米政府機関閉鎖に伴い、9月30日(火)分の「IMM通貨先物ポジション」のデータは公表されていない)
今年2番目のゲームチェンジとなった高市総裁の誕生で、米ドル/円は147円から一気に153.00円まで急騰。
マーケットに残ったのは、小泉勝利を信じ円高を待っていた日本の事業法人。
彼らの米ドル買い需要で米ドル/円の下値は限定的となり、IMMの短期筋が円ロングをカバーし、逆に円ショートにひっくり返してくるようであれば、米ドル円は155円を超えてくるのではないかと想定しています。

(出所:TradingView)
155円を目指し続伸する米ドル/円に注目です。
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