■東芝の巨額損失が為替にも波及
先週(2月13日~)、大きな話題となったのが東芝。
発端はアメリカでの原発事業による巨額損失ですが、LNG事業でも最大1兆円規模の損失が発生する可能性が報じられています。
「まだ何か隠しているんじゃないか」と疑念を持たれるようなやり方は外国人投資家が嫌いますし、「損失隠し」といったことになれば東証2部への指定替えどころか、上場廃止の懸念だってありますよね。
(出所:株マップ.com)
米国株は変わらず好調なのに、東芝が足を引っ張って日経平均は重い展開。
それが為替市場にも波及して円高に、というところですね。かといって、このまま落ちるかといえば、日米首脳会談があれだけ成功に終わったのなら円高は限定的。
少なくとも米ドル/円の100円割れはないのでしょうし、110円すら割らないのかもしれない。トランプ米大統領いわく「アメイジング」な税制改革の発表を控えていますから、上に吹き飛ぶリスクもある。
【参考記事】
●カギはNYタイムズと朝日新聞にあり!? トランプ大統領と安倍首相の共通点とは?(2月13日、西原宏一&大橋ひろこ)
(出所:Bloomberg)
(出所:Bloomberg)
■米国にとって「ゴルディロックス」な為替水準
でも、先週(2月13日~)、麻生財務相が「まだ120円にいっていない。円安といわれる覚えはない」と発言したことからすると、米ドル/円が120円を大きく越えていくこともなさそう。
(出所:Bloomberg)
米利上げの織り込みも進まないですね。FRB(米連邦準備制度理事会)のイエレン議長は先週、タカ派的な発言を繰り返しましたが、3月利上げの織り込み度は20%もない程度です。
昨夏(2016年夏)、フィッシャーFRB副議長が利上げ期待を高めておきながらブレイナードFRB理事が否定し、結局利上げが見送られるひと幕がありました。
【参考記事】
●FRB副議長の発言により米金利急騰でドル上昇! 9月利上げは経済指標次第!(2016年8月29日、西原宏一&大橋ひろこ)
イエレン議長のスタンスも基本的には「データ・ディペンデント」。つまり、経済指標次第ということです。
昨夏の記憶があり、経済指標次第ということであれば、マーケットとしても積極的に利上げを織り込みにはいけないですよね。
市場はまだまだ利上げに対して懐疑的、と。米国経済にとっても、このくらいの為替水準がゴルディロックス(居心地がいい状態)のようですし、そう考えると、米ドル/円はしばらくレンジが続くのかもしれませんね。
■2014年前半の相場が再現されるか
日米首脳会談が大成功に終わり、直後に発表された小売売上高などの米経済指標が良好で利上げへの環境も整ったのに、米ドル/円が115円を越えられなかったのが先週(2月13日~)の動きです。
【参考記事】
●日米首脳会談成功で円高リスクが後退。「暗黙のドイツマルク」のような存在とは?(2月16日、西原宏一)
115円には60億ドル規模のオプションが設定されていた影響もありますが、これだけ好材料が揃っても上がれないのなら、112円から115円をコアとしたレンジになるのかもしれません。
110円は割れない、かといって麻生発言もあり、大きく上にも行かないというもどかしい展開ですね。
2014年も黒田バズーカ2が発射されるまで半年以上、100円から105円のレンジが続きましたよね。
【参考記事】
●ザイFX!で2014年を振り返ろう!(2)【相場:後編】黒田バズーカで円安進む!
今年(2017年)前半もあんな感じでグダグダしたレンジなのでしょうかね。
アベノミクス高値となったのは2015年6月の125.85円でしたが、あのとき125円に60億ドル規模のオプションがあったため、上値が抑えられました。
今回も同じようにオプションがたまっている115円付近が当面の高値となるのかもしれないですね。
(出所:Bloomberg)
■底堅い鉄鉱石を背景に豪ドル/円の買い
しばらくレンジが続くとすると、西原さんの戦略は?
米ドル/円がレンジを抜けるとしたら上でしょう。
しかし、昨年(2016年)6月のBrexit(英国のEU離脱)で英ポンドの大相場があり、トランプ当選で米ドルの大相場がきて、米ドル/円はもう一弾の上昇を期待していましたが、さすがにしばらくレンジ抜けは難しいかもしれません。
【参考記事】
●ザイFX!で2016年を振り返ろう!(1) 英国がEU離脱! 英ポンドは二度死ぬ!?
●ザイFX!で2016年を振り返ろう!(2) トランプ氏当選でまさかのリスクオン到来!
そうなるとクロス円(米ドル以外の通貨と円との通貨ペア)のロングがおもしろいかもしれないですね。
注目は鉄鉱石。メルマガ「FXトレード戦略指令!」で解説したとおり、底堅くなっています。
【参考記事】
●日米首脳会談成功で円高リスクが後退。「暗黙のドイツマルク」のような存在とは?(2月16日、西原宏一)
中国が鉄鉱石や銅を爆買いしているようですね。株式市場では戦争関連銘柄が上がっているとの話が出ていて、金正男暗殺事件もありました。
(出所:BloomBerg)
金も上がっています。中国は何らかの有事、紛争リスクに備えて資源をストックしようとしているのかもしれません。
(出所:Bloomberg)
背景は何であれ、鉄鉱石の需要が続くなら、豪ドル/円の上昇に期待してみたいですね。
(構成/ミドルマン・高城泰)
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