■ユーロ/米ドルの保ち合いは米ドルロング派にとって不気味
欧州政局など混乱要素もあるものの、2月以来のユーロ安は、一服感が目立ってきた。2月安値が1.05ドルの節目前後にとどまり、先週末(3月3日)の大幅切り返しもあって、目先、この節目を試す勢いは感じない。
(出所:Bloomberg)
仮に米利上げが想定どおり実施されても、本格的な1.05ドルの節目割れがない限り、むしろ、一段とユーロの反騰を覚悟しなければならないかと思われる。
くどいようだが、米利上げが規定路線とされる中、ユーロ/米ドルの保ち合いは米ドルのロング派にとって、やや不気味なサインとさえ受け取められているのではないだろうか。
というのは、1.05ドルの節目を早く割り込めない限り、ユーロ/米ドルの日足がいわゆる「逆三尊型(※)」というフォーメーションを形成していく可能性があるからだ。となると、米利上げが米ドル全面高どころか、米ドルの反落をもたらす、といったリスクさえ警戒される。
(※編集部注:「逆三尊型」とはチャートのパターンの1つで、大底を示す典型的な形とされている。「ヘッド&ショルダーズ・ボトム」とも呼ばれる。また、「逆三尊型」の逆で、天井を示す典型的な形が「三尊型」(ヘッド&ショルダーズ))
(出所:Bloomberg)
■今晩の米雇用統計後、相場の反応はどうなる?
この意味では、今晩(3月10日)の米雇用統計が一層重要になってくるか、それとも実はそれほど重要でないか、判定しにくくなってきた。
なぜなら、米利上げが既定路線なので、米雇用統計がよほど悪くならない限り、見通しは変わらないから、米ドル堅調のはずと思われるからだ。
一方、米利上げ予想が圧倒的に多いだけに、今晩(3月10日)の米雇用統計が市場の見通しに届かない場合、かえって失望感が大きく、米ドル急落のリスクが大きいという考え方もある。
どちらも可能性があるが、ユーロ/米ドルの値動きから考えると、今晩(3月10日)の米雇用統計がよほどよい数字でない限り、米ドル全体が急伸する余地はそう大きくないのではないだろうか。
■米10年国債の売られすぎが米ドル買いを阻んでいる?
根拠として、以下の2点がまず挙げられる。
まず、相場のことは相場に聞くしかない。「ユーロの保ち合いが続いているから、もろもろの思惑をすべて織り込んでいるはずだ。だから、今さら米利上げがあるからと言って積極的にユーロ売りは仕掛けしにくい」…そういったロジックが市場を支配しているのでは…と推測される。
米雇用統計の数字が、すでにかなり楽観的な想定数字よりもよくなる場合でも、規定路線の利上げを証左しているだけであり、反面、市場コンセンサスに届かない場合、むしろ米ドルが売られやすいと思われるからだ。
次に、トランプ氏が当選して以来、米ドル全体の上昇は、米長期金利(10年物国債の利回り)の上昇と高い関連性を示してきたから、同利回りの再上昇、または加速があれば、米ドル高に弾みがつくのは間違いないとみるが、CFTC(米商品先物取引委員会)の集計した米10年国債のショートポジションが過去最高を更新(40万枚超、2月28日までの統計)している以上、同国債が売られすぎ(利回りが上昇しすぎ)であるという懸念は払拭されない。
後者の方が、マーケットが米ドルロングに躊躇するもっとも大きな背景になっているのではないかとみる。
言ってみれば、猫も杓子もみんな米金利上昇に賭けている現在、いったん整理局面があってもおかしくないと思う。だから、米利上げは規定路線であろうが、それがたちまち米ドル全面高につながるとは限らない。
この意味では、今晩(3月10日)の米雇用統計でいくら良い数字が出ても、米ドル全面高に寄与する余地は限られるのではないだろうか。
■米ドル全体の足踏みは、クロス円にとってはプラス要因
米ドル全体の足踏み状態は、ユーロ/円をはじめ、実はクロス円(米ドル以外の通貨と円との通貨ペア)にはプラスである。
足元、ユーロ/円の大幅上昇でみられるように、ユーロ/米ドルの切り返しがユーロ/円の上昇につながり、また、米ドル/円の115円節目ブレイクと相まってユーロ/円が122円を打診するといった「好循環」が見られる。
(出所:Bloomberg)
この意味では、米国株が崩れない限り、円全体がしばらく売られやすく、また、米ドル/円のパフォーマンスがドルインデックスをリードする傾向になるだろう。このあたりの話、また次回。市況はいかに。
(13:00執筆)
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