■米ドル/円は、まだ下落する可能性が高いと考える理由
先週(3月27日~)のIMM(国際通貨先物市場)の通貨先物ポジション状況を見て、やや驚かされました。
米ドル/円が、110円台にまで米ドル安・円高が進んでいるにもかかわらず、投機筋の米ドル/円のポジションは、まだ、かなりのドルロングだということであります。

(詳しくはこちら → 経済指標/金利:シカゴIMM通貨先物ポジションの推移)
その前の週(3月20日~)に比べれば、たしかにその金額は減少しています。しかし、同じ110円台で推移していた2016年の4月、5月は、逆にかなりのドルショートになっていたことと比べると、非常に対照的です。
【参考記事】
●原油価格反転による安定感は一時的。米ドル/円は戻りのメドを慎重に見極めたい(2016年4月21日、今井雅人)
このポジションを見る限り、米ドル/円は、まだ下落の可能性が高いと考えておいた方が良いのではないかと、思ってしまいます。

(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドル/円 日足)
■ADP雇用統計の好結果に反応するも、勢い続かず
ちょうど、このことを示唆するような動きが4月5日(水)にありました。
毎月、米雇用統計の前に発表される、民間会社が調査しているADP雇用統計の結果が発表されました。
3月分に関して、予想では前月比18.5万人の増加であったところが、26.3万人の増加という結果となり、米ドル/円も、一時111.50円近辺にまで急騰。しかし、その勢いはまったく長続きせずに反落しています。
■FOMC議事録公表後も、米ドルの上値は重たかった
そして、その後、日本時間の未明、0.25%の利上げを実施した時のFOMC(米連邦公開市場委員会)議事録(3月14日-15日分)が発表されました。
そこでは、「大部分の参加者は、FF金利(※)の漸進的な上昇が継続すると予想し、FOMCの再投資政策の変更が年内に適切になる可能性が高いと判断した」と記されています。
(※編集部注:「FF金利」とは、フェデラルファンド金利のことで、FFレートとも呼ばれる。米国の政策金利)
つまりこれから、徐々にではありますが、政策金利が上昇していき、それと同時に、現在、約4兆5000億ドルあるFRB(米連邦準備制度理事会)のバランスシートの縮小開始につながるような政策変更が、年内に行われる可能性が高いと言っているのです。
英語で「テーパリング」と呼ばれているものです。これも金融引き締めですので、普通に考えれば米ドル高に反応するはずです。
事実、瞬間的には米ドル高となりましたが、それも続かず、結局、110円台前半にまで反落する展開となっています。非常に米ドルの上値が重い、という印象だけが残った相場展開でした。

(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドル/円 1時間足)
■米ドルの上値が重たい背景には、トランプ政権への不安感
こうした動きになっている一番の背景は、以前から申し上げている通り、トランプ政権への不安感です。
簡単に言えば、何も決まっていかない。さらに言えば、トランプ米大統領のイライラ感が、外に向かうリスクです。
【参考記事】
●利上げでも米ドル安の衝撃。自慢はするがトランプ政権は結局、何も前に進んでいない(3月30日、今井雅人)
●トランプ政権への不安がドル/円の重し!?たとえ戻りがあっても、頭は重くなりそう(3月23日、今井雅人)
●米利上げ実施。なのにドルは全面安に!神経質な動きの原因は、トランプ大統領?(3月16日、今井雅人)

新政権発足以降、いろんな大統領令にサインしてきたトランプ氏。でも、結局、今のところは何にも決まってない感じ? マーケットはそんなトランプ政権に不安をつのらせているのかも…(C)Pool/Getty Images
■米中首脳会談に注目! ドル/円は110円を割り込む展開に?
先週(3月27日~)、トランプ米大統領は、貿易不均衡を是正するための大統領令に署名しました。これから90日間かけて、米国と貿易不均衡にある主要国を調査することになっています。
現在、米国の貿易赤字の約半分が対中国であるため、一番のターゲットになるのが中国であることは、間違いありません。しかし、日本も中国に次いで第2位で全体の9.4%を占めています。したがって、日本も標的にされるリスクは十分にあります。ちなみに、第3位はドイツです。
まずは、関税などの貿易障壁がテーマとなりますが、通貨の問題にも波及しかねません。そうなれば、1990年代の時のような円高圧力が、かかってくる可能性も否定できません。

(出所:Bloomberg)
折しも、トンランプ米大統領就任後、初の米中首脳会談が本日4月6日(木)から7日(金)まで開催されます。その動向にも、注目しておきたいです。
相場の方は、現状、米ドル/円の110円近辺に、日本の年金などの米ドル買い注文がまとまってあるので、さらなる下落を免れていますが、110円を割り込む展開が近いうちに見られるかしれない、と考えています。
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