■米ドルもユーロも方向感のない状態
6月14日(水)にFOMC(米連邦公開市場委員会)があり、今後の利上げ予想を示すドットチャートからは、年内、あと1回の利上げが示唆されました。さらに、バランスシート縮小の内容も公表されました。
【参考記事】
●タカ派FOMCと円安でドル/円に上昇余地! ユーロ/ドルは下抜け見据えて売りで回転(6月20日、バカラ村)
●米ドル/円は半年サイクルでトレンド転換! FOMCきっかけの米ドル高は継続か?(6月22日、西原宏一)
1.11ドル~1.13ドルのレンジだったユーロ/米ドルは、FOMCの内容を受けて下方向にブレイクするのではないかと考えていました。しかし、いまだにもみ合いが続いています。
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:ユーロ/米ドル 日足)
先週(6月19日~)の半ばに、1.11ドル台ミドルで推移していたこともあり、レンジ下限の推移となれば、下方向をトライする可能性が高まるのでブレイクに期待していましたが、結局、もみ合いのままで終わりました。
米ドル/円に関しても、111円台で推移しており、方向感のない状態が続いています。
(※編集部注:本記事の寄稿後、編集作業中に米ドル/円は一時、112.08円付近まで上昇した)
【参考記事】
●わずか28銭! ドル/円が本年最小値幅に。動かない相場で注目したい通貨ペアは?(6月26日、西原宏一&大橋ひろこ)
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドル/円 日足)
ドルインディックスも、97.60~97.70付近のレジスタンスを越えていかなければ、方向感のない状態が続きそうです。
(出所:Bloomberg)
■FRB要人発言とインフレ指標に注目
米長期金利に関しては、バランスシートの縮小となれば上昇するべきですが、市場参加者は、米国のインフレが鈍化しており、経済指標にも悪いものが出てきていることから、FOMCの決定には懐疑的で、長期金利はゆっくりと低下しています。
(出所:Bloomberg)
FRB(米連邦準備制度理事会)メンバーと市場参加者との間に、ギャップができたままの状態です。
【参考記事】
●ドル高にならないのは長期金利が原因! 利上げでも米国債が買われる理由は?(6月22日、今井雅人)
イエレンFRB議長の講演が、日本時間6月28日(水)の2時からあります。FRBと市場参加者の間にあるギャップを埋め、FRBの見解を織り込ませるため、イエレン議長からは金融政策の正常化に向けて、タカ派な発言が出るのではないかと思います。
また、今後は、FRBメンバーの発言にも注目ですが、物価の動向を示すインフレ指標も重要となります。
直近で発表されるインフレ指標には、6月30日(金)の米5月PCEコアデフレーター、7月7日(金)の米雇用統計で発表される平均時給、同14日(金)の消費者物価指数があります。
これらの結果が強ければ米ドル高に、弱ければ米ドル安になりそうです。
■景気が良くないときの利上げは中長期の売り材料
6月15日(木)の英MPC(金融政策委員会)で、8名のメンバーのうち3名が利上げを支持したことから、英国の利上げ観測が高まってきていました。
【参考記事】
●タカ派FOMCと円安でドル/円に上昇余地! ユーロ/ドルは下抜け見据えて売りで回転(6月20日、バカラ村)
しかし、6月20日(火)に、カーニーBOE(イングランド銀行)総裁がそれを打ち消すように「利上げは時期尚早」と発言し、英ポンドは下落しました。
英国では、6月9日(木)の下院総選挙で保守党が過半数を獲れず、政局が不安定な状態です。また、EU(欧州連合)離脱交渉が始まっていることなどもあり、今の段階での利上げはタイミングが悪く、それを見越して、カーニー総裁は利上げを否定したのだと思います。
ただ、6月21日(水)にホールデンMPC委員が、「年後半に複数の刺激策を解除することを支持」と発言したことで、一転して英ポンドは上昇しました。
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:英ポンド/米ドル 4時間足)
英国の消費者物価指数が前年比で+2.9%まで上昇していることや、MPCで据え置き票を投じたホールデン委員が利上げの可能性を示唆したこともあって、その後、英ポンドは上昇しています。
英国の利上げは、短期的には英ポンドの買い材料になります。ただ、経済が良くないときの利上げとなるため、中期的に英ポンドは売られるのではないかと考えています。
EU離脱交渉も、これから厳しい条件が出てくることが予想されます。英国に投資する向きも少ないのではないかと思い、英ポンドは売られるのではないかと考えます。
【参考記事】
●2017年内は英利上げなしと思った方がよい。英国発のブラックスワンを再度警戒!(6月23日、陳満咲杜)
本日、6月27日(火)の日本時間19時に、カーニーBOE総裁の会見があります。先日の発言を引き継いで、本日も、ハト派な内容になるのではないかと思います。
ハト派な発言をしても、市場もすでに予想している内容になるので、大きな動きにはならないと思いますが、英ポンドの上値は重くなるのではないかと考えています。
■英ポンドは半値押しブレイクなら61.8%トライも
以下は英ポンド/米ドルのチャートです。
まず、週足を見ると、下方向は1.2630~40ドル付近に21週移動平均線があります。この位置は先々週(6月12日~)の安値水準でもあります。
(出所:Bloomberg)
次に日足を見てみると、先週(6月19日~)の安値水準には、3月からの上昇幅の半値押しもあるので、これがサポートとして意識されるレベルとなります。
(出所:サクソバンク証券)
上方向に関しては、5月高値からの38.2%戻しが1.2763ドルとなり、6月26日(月)の高値が1.2758ドルになるので、この位置で上値を抑えられています。
また、1.2815ドルにもレジスタンスがあり、その上にはギャップ(窓)があるので、1.2900ドルもレジスタンスとして機能しそうです。
短期的に利上げ観測が高まれば英ポンド/米ドルは上昇しますが、中期的には下がるのではないかと考えており、3月からの上昇幅の半値押し1.2578ドルの水準を下回れば、61.8%押しの1.2467ドルをトライする動きも期待できそうです。
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